アイゼン(シュタイクアイゼン・クラムポン)


筆者愛用のsimondマカルーラピ−ド

正しくはシュタイクアイゼンという。英語ではクラムポンといふらしいが、かぷかぷと笑いそうな気がして自分は決してクラムポンなどと呼ぶ気はない。
夏の雪渓程度であれば4〜6本爪の軽アイゼンで十分だが積雪期には全く用をなさない。積雪期に使用するならば10本爪以上のものが必要である。
12本爪だと前爪がひっかかって危険だから初心者には向かないといわれていたが(さすがに最近はそんなことをいう者もいなくなってきたが)、引っかかるときには踵の下向きの爪でもう片一方の足を引っかけることが多いので、正しい使用法を覚えて10ないし12本爪の物を使うこと。

12本爪のアイゼンにはフロントポイントの次の爪が、氷主体で前に長く突き出ているものと、縦走・岩主体の短くて下をむいているものが存在する。できれば2種類を使い分けるとよい、自分の山行形態にあったものを選ぶこと。氷用の物では岩場などが非常に歩きにくいし、またもったいないのでアイスクライミング以外では岩むきのアイゼンのほうが使い易いと思う
買うときには必ず自分の靴を持っていって合わせてから買うこと。靴とアイゼンには相性があって、どうつけても具合がよろしくない場合があるのでできる限りアイゼンは靴とセットで選ぶこと。
靴につける方式によって、ワンタッチ(ビンディング)式と昔ながらのバンド式があるが、靴のほうで対応しているようでしたらワンタッチ式を選んだ方が山行の際の負担が大幅に減る。ただ、一応つくからといって、旧タイプの登山靴にそのままワンタッチアイゼンをつけることは避ける。力がかかっていくうちに靴が変形していきなり外れることがあり、Nさんの知り合いなどはそれで一命を落としたそうである。選ぶ時には先輩や山道具屋のお姉ちゃんやお兄ちゃんによく聞いて見ないといけない。

買ったら実際に靴を履き、スパッツ等をつけた状態で調整して靴に合わせ、つける練習をして実際にそこいらを歩いてみること。アイゼンのツァッケ(爪)はアスファルトや石ころ程度には負けないのが普通であるので惜しがらずにそこらへんをガシガシと歩いて見るのがよい。爪が負けたらさう云ふ奴は使わないほうが身のためである。
できれば冬山装備一式(下着からズボン、靴下、スパッツ)を身につけ、できるだけ山で歩くときに近い状態で歩いてみると感覚がつかめるし、装着の状態がわかって良い。ただ顔面が爆発しそうになるほど恥ずかしい人も居ると思う。
また、左右があるので装着時に気を付ける(たとえ左右同形でもアイゼンバンド、流れ止めの方向があるので注意)。あまりやっている人はいないかも知れないけれど左右の色を変えておくと一目でわかって非常に便利である。自分は靴紐やスパッツまで左右色違いにしてある。
アイゼンバンド(流れ止めを含む)は金具やバックルが外側になるように着けるのが正解。バックルが内側にきていると反対側の足で引っかけやすくなり、ゆるんだり、転倒するおそれがあるので間違えないように。余ってべろべろしている部分はバンドに結んでおくこと。あまり長すぎる場合は事前に切っておく(ぎりぎりの長さにしておくと実際に使うときに短くて使えなくなることが往々にしてあるので注意が必要。)
バンド式アイゼンには固定バンドを付けておくとよい。なお、固定バンドを付けた場合でも一本締めのバンドを予備に持っていると非常時に心強い(当然一本締めの使いかたも知っておくこと)。
アイゼンを着けるときには通常、氷雪が存在可能なくらい寒いことが多く、(当然!)また忙しいときや悪条件の時に装着することが多いので事前に充分に練習して実際に着けるときに手間取らないくらいまで熟達しなければならない。出来ることならかじかんだ手で冬用の手袋を付けたまま暗いところでも着脱できるようになっていることが望ましい。
外したアイゼンは落とさないようにすること。外してザック等につけておく事は避ける。特に藪漕ぎなどがある場合は藪に持っていかれることがあるのでケースにいれるなどしてザックの中にしまわなければならない。
また、人の多いところでは非常に危険なため、むき出しにしての持ち運びは絶対に避けること。電車の中などでピッケルとアイゼンを裸のままザックの外側につけて歩いている大馬鹿者を時々見掛けるが、アイゼンをつけた今は亡き馬場さん(絶対国民栄誉賞をあげていただきたかった)に32文ロケット砲をお見舞いしていただきたい位腹が立つ。
テントの設営の時などは必ず外さないとテントを破ったり、つまづいたりするので危険。外したアイゼンは危険なのでテント内には持ちこまず、全員の分を一ヶ所にまとめてピッケルなどを立てて結んでおき、積雪などで埋まってもすぐに見つけられるようにしておくこと。
気温が上がったりするとアイゼンに雪が団子状につくことがあるが億劫がらずにこまめにピッケルのシャフト(ウッドシャフトの場合はシャフトを痛めるのでシュピッツェを使う)や岩角などでたたき落とすこと。雪をつけたまま歩いているとどんどん団子は大きくなりスリップして転んで足をくじいたり滑落の原因となる。
団子防止用のアイゼンにつけるプレートもある。使ったことがないのでよくわからないけれどある程度の効果があり、団子になっても落としやすいそうである。自分はあまり必要と感じない。
皮靴の場合、アイゼンバンドの締めすぎに気を付ける。締めすぎると血行が阻害され、足先がいつまでたっても暖まらず、凍傷の原因となる。多少ゆるめでも靴にきちんと合わせてあればまあ大丈夫。締め具合については経験からつかむこと。


(H12.1 岡田)