★初めての人も安心!−『 春山のお約束』の巻

中村(た)

 数年前の新人が多かった年にこの『お約束シリーズ』で掲載しましたが、今年も新しい人が多いので内容を若干変更してここに再掲載いたします。何分限られた紙面ですので全てを尽くすことは不可能です。理解不能及びご不明な点は集会などで言って下さい。また、各自が雑誌や本を読んで研究することも大切です。そう言えば「大魔王シャザーン」さんが「冬山JOY」という立派な冊子を冬につくってくれました。要熟読吟味。
 
1.春山とは?
 ここで『春山』と言うときは5月GW前後の北アルプス周辺の山域を指しています。奥多摩や丹沢、奥秩父のように雪の無い山でなくアイゼン、ピッケル必携の山域です。(八ヶ岳は行ったことないのでよく分かりません。雪のない八ヶ岳に興味ありませんから。)
 
明神岳(バックは前穂高)
 天候に恵まれさえすれば日中は半袖で行動出来るほど暖かですし、雪も締まっているので距離も稼げます。おまけに陽も長くなっているので18時くらいまでは十分に行動可能です。内緒ですが後立のように積雪量が半端じゃない山域では運がいい人は労無なくして先縦者の雪洞に潜り込むこともできます。夜も冬のように冷え込むことはないので私の最高級オイルトリートメント処理ポーランドグースダック使用ヒマルチュリ・シングル羽毛「向こうが透けて見える」ペラペラシュラフ17年物でも寒さをあまり感じません。当然、冬のような下着も着用しません。(まあ、パンツとTシャツはポリプロで固めますが…。)
 
 しかし、よく言われることですが1度荒れたら冬山と変わらない、という言葉には同感です。上記の如く私は下着もパンツ+Tシャツ、おまけにヤッケは雨具ですから、そのように感じるのかも知れませんが…。吹雪かれたときは、「やっぱ目出帽持ってくれば良かったな〜。」とか「やっぱ、普通の手袋持ってくれば良かったよな〜…、あとゴーグルの方が良かったな〜…。」なんて後悔しながら渋々行動している私です。考えようによってはこんな愚痴をこぼしながらも立派?に行動しているのですからやはり春山は暖かいのでしょう。
 
2.装備はどうしよう?
 ズバリ!持ち過ぎないことです。とにかく軽量化を図りましょう。いくらお気に入りでもガリヘルなんて登攀じゃなければ不要です。「『雪の上を滑り落ちる石は音を立てること無く貴方を襲う。』って書いてあるじゃあないか!」と言うのですか?そんなもんが落っこちてきたらガリヘル装着の有無に関わらず結果は同じですよ。そういう場所では常に『上を向いて歩こう』です。
 
 ハーネス、登攀じゃなければシュリンゲでスワミベルトを作ればOKでしょう。(ちょいと長目のシュリンゲね。)
 
 8環?ちょっとした懸垂ならばカラビナ2枚掛けでラッペルすればいいじゃないですか!(練習しといてね。)
奥明神谷を詰める

 
 防寒着、冬用シュラフを持っていくなら不要です。
 
 冬用のヤッケ、春は雨が降るので雨具の方がベターですね、何ってたって軽いし…。
 
 あと、お金で解決できることはお金で解決しておきましょう
 
 ということで(自分の技量と相談して)不要なもんはどんどん省きましょう。特に重いガチャ類はパーティーで良く確認して余分な物は持っていかないようにしましょう。
 
3.私でも行けるのだろうか?
 その前に「そもそも私が山岳会なんていうおぞましい世界に足を踏み入れたのは、1人では踏み出せない山に行きたかったからなんだ…。だから、絶対に行く!このチャンスは逃せない!」とモチベーションを高めましょう。
 
 20kg程度の荷物を背負って歩けて滑落停止が出来てアイゼンで下ることに慣れていれば横尾から槍ヶ岳、岳沢から前穂高、涸沢から北穂高+奥穂高くらいはOKです。この程度ならば4月にもう1度か2度、雪訓でしっかりトレーニングをすればいいと思います。ホントは懸垂下降、ビレイくらいは出来て欲しいが。
 
剱岳・早月尾根上部
 とにかくアイゼンで何処でも歩けるように訓練しましょう!春の穂高周辺では雪→岩稜→またまた雪→再び雪→…なんてことが続きますからいちいちアイゼンを取って…などと悠長になことはできません、と言うより面倒です。したがって、岩稜帯をアイゼン装着のままギシギシ、ガリガリ言わせながら歩くことが出来なければなりません。これは本を読んでも駄目で、トレーニング有るのみ!です。