中村JRの九州の山旅 「第2回 宮之浦岳」   
 文 中村 優 

期  日 1997年10月27日()29() 
メンバー 中村優だけ
1027() 天候 晴れ 淀川登山道入口(15:05) -- 淀川小屋(16:00)

 本日も晴天なり、本日も晴天なりであるが鹿児島湾(8:45発)を出るなり6〜7mの大波に船は揺れる。気分転換に外へ出るが波しぶきで顔や腕はベトベト状態。船員さんが船内に入ってくれと言う。こんなに気持ち悪いのは台風と共にした時のサンフラワー、東京湾での釣り船、高松からの瀬戸内海のフェリー等…、と言うことはもともと船酔いするタイプなのであるのか分からないが、山に行くとあまり酒が飲めない私なので二日酔いもしないので、ここで酔っておくのも割安でまぁいいか…?

 岡山から来たと言うおじちゃん、おばちゃん達としばしの会話。同じ淀川入口から登ると言う。話をすることにより多少気持ち悪さを忘れられる。

 宮之浦湾に到着(12:30)。下界は晴れているけれど山は曇っている。バスは安房(あんぼう)行き。そこから入口までは歩くと4〜5時間かかる。どうしようか迷っていると視界には4人組がタクシーにのるところ。すかさず歩み寄り相乗りとなりラッキー、とこの時は思った。
昼はタクシーの運ちゃんのおすすめの食事処にて名物「トビ魚定食」を食べる。運ちゃんのガイドつきで紀元杉を見、屋久ざる君と会いながら淀川入口まで入る。

 根っこが剥き出しの登山道にはいたるところに巨木がある。さっすがー世界遺産指定地。普通は小屋まで30分くらいなのだがおじちゃんの木の話にて1時間の歩きになる。しかも、明晩まで話に付合わされることになるのです。登山口入口からすぐ登りになるがすぐ下りが続く。1ヶ月に35日雨が降るという所なのに1ヶ月以上も雨がないということで土が乾いている。話しつづけていたおじちゃんが話を止めたとき平地が表れた。そこが本日の宿、淀川小屋である。

 テントを張らなくてよい、ただである、そしてきれいである。とてもよいのぉ〜。夜は満天の星空だ。輝き、大きさ何をとっても今までで一番だが、星のことはまったく分からない。

 これから2晩4人組、自転車で気ままな旅をしている福岡の兄ちゃん、25歳で大学2年だという北海道からのお兄ちゃん、ナンパして3ヶ月一緒にバイクで日本1周のカップル等と過ごすことになる。

 だけど、今まで書いてきて要は早い話1日中移動していて歩いたのは1時間ということです。終わりです失礼。


10月28日() 天候 晴れ 淀川小屋(6:20) -- 花之江河(7:15) -- 黒味岳(8:00) -- 宮之浦岳(10:20〜11:00) -- 永田岳(11:55〜12:10) -- 焼野三叉路(12:50) -- 第2展 望台(14:00) -- 新高塚小屋(14:50) -- 高塚小屋(16:10)

 5時に置き6時過ぎまで夜明けを待つ。2〜3組出発した後に淀川の川面に映る紅葉を右手に見ながら急登していく。しばらくすると「こんなに紅葉が!」と見間違える程の真っ赤な朝日が顔をのぞかせる。今日1日の天気は約束されたも同然である。

 雨の所為か人の所為か知らないが足許がだいぶえぐれている。体調が良い時こそゆっくりと歩くことを心がけていく。しばらくすると非常に整備された木段が表れる。ピークを越えると湿原である花之江河(はなのえごう)に着く。

 水不足のため景色は今一つであった。花之江河を過ぎるとすぐに黒味分かれに着く。荷物を置きロープの張ってある坂を登り大きな岩がゴロゴロしている所を通りヤクシマシャクナゲの枝が足に刺さり痛いのをガマンするとなーんにもないツルツルの岩に着く。そこが黒味岳でここが一番島内を見渡すことが出来る所だ。

 頂上は多少雲があるが待ってみる。永田岳、投石岳、宮之浦岳等が見え空の青と海の青の境界線が分からないほど青い。ただ白い波だけが一際目立つ。

 黒味岳を下り投石、安房、翁岳を越えていくと宮之浦岳が正面に見える。急坂を越え、ヤブ漕ぎを息も絶え絶えになりながら到着。バンザイにてパチリ。疲れたので長い休憩に入る。

 息を整え頂上を後にする。少々下ると焼野三叉路に着く。ここでも荷を置いて心ウキウキ、身体軽く浮かれている私であります。夏は天気が全然良くなかったので平坦な道に限っては顔は緩みっぱなしで、ニコニコ顔です。しかし登りは前述にあらず。いくつかのアップダウンを繰り返し大きな1枚岩を登るがホールドがないため(私には思えた)足を滑らしヒヤッとする。

 頂上からはローソク岩の頭しか見えず彼方に開聞とおぼしきものも見える。大半の人は永田岳には来ず人気はほとんどない。来た道をもどり高塚尾根を下る。足場が悪く倒木なども多い。何度か屈み、つまずきながら進んでいく。展望台の前で昨日のお兄ちゃん達と出会い、一緒に高塚小屋までお供する。

 先ほどまでは顔に笑みがあったが今は足が笑っている。私としては本意ではないが4人組をも交え、夜まで宴のお供をする羽目になってしまった。

10月29日() 天候 晴れ 高塚小屋(6:00) -- ウィルソン株(7:00) -- 軌道出合(7:25) -- 辻峠分岐 (8:10) -- 白谷山荘(9:00) -- 楠川歩道入口(10:00) -- 楠川(10:50)

 淀川小屋からの妙な人たちとも握手して別れ、多少急ぎ気味にて行動を開始、なぜなら昼頃ぐらいまでに下山しないと船に乗れないからである。ばかでかい縄文杉を見、オコジョとおはようのアイコンタクトをし緩やかに下っていく。今朝も飲んだくれの北稜の方々の顔のようなすがすがしい朝日に見とれながら、手を握っているみたいな夫婦杉を右手に見、今いちパットしない1本だけ大きい大王杉を越え急な木段を下ることひとしきりで大きな切り株のウィルソン株に出くわす。中は空洞で清水が流れている。1口飲み、しばしの休憩。このあたりは薄暗くひんやりとする。しかし何故か心和み落ち着く場所である。

 ホッとしているとお腹が痛い。お腹が痛いからといって下痢ではなく腹筋痛だ。ずっーと下りばかりだからだろう。いや、それだけだとは思わないが。
ひとしきり歩くと軌道に着き当たる。軌道は平らな道が続き、屋久鹿君がちらほら顔を覗かせ、こんにちは!

 三代杉を過ぎるあたりから多くの登山者とすれ違う。左に折れ辻峠白谷小屋へと向かう。今まで下りっぱなしなので登りは辛く感じられ何度か足を止めるようになる。前のめりのおばあちゃんスタイルにて少しずつ足を運んでいく。白谷山荘じて休憩。思ったより出発が遅れたが取り戻してひとまず安心。

 三本杉を越して台風の影響で斜面が崩れている単調なS字の坂を下り車道に着く。目の前に海が飛び込んで山には雲がかかり今にも降りそうである。ここからバス停の楠川まではすぐである。

 思いのほか早く下山できたので楠川温泉にて汗を流す。時間がなくゆっくり出来ずちと悲しい。受付のおばちゃんの心づかいにより荷物の置いてある楠川のバス停まで送ってもらいバスに間に合うことが出来て良かった良かった。

 帰りは地酒の焼酎とカッコいいとび魚くんを見てカンパイ。これにて島流しはおしまい。