剱岳合宿

あつこ

期日:2008年8月15〜18日
参加者:(CL)笹田、藍沢、(SL)深沢、ニシノ、ラン、カト、あつこ


8月15日
室堂ターミナル8:00〜雷鳥沢キャンプ場8:50〜別山乗越10:50〜剣山荘11:40〜真砂沢キャンプ場13:50
8月16日
真砂沢キャンプ場6:10〜熊の岩10:45〜六峰取り付き11:30〜六峰Dフェース登頂15:30〜熊の岩17:15
8月17日
熊の岩9:10〜本峰山頂12:00〜カニの横ばい13:00〜剣山荘16:00〜剣沢キャンプ場17:00
8月18日
剣沢キャンプ場6:30〜剣御前小屋7:30〜雷鳥沢キャンプ場8:35〜室堂ターミナル9:50

8月15日 霧
 前日の22:30に竹橋からバスで出発する。乗車人数が少なく、1人で2席以上使ってゆったり座ることができた。
 翌7:10に室堂ターミナルに到着。一帯に霧が立ちこめ、景色はほとんど見えない。この日は私が先頭を歩かせていただくことになり、8時頃出発した。途中で雨が降り始め、雨具を着用する。舗装された道をしばらく歩いた後、雷鳥坂の本格的な上りが始まった。浮き石に足をとられながら急登を上る。昼過ぎに剣沢雪渓に入り、笹田さん、藍沢さんから歩き方のご指導を受けた。この日は雪上歩行訓練を兼ねてアイゼンなしで雪渓を下り、13:50に真砂沢キャンプに到着した。
 テント設営を始めた頃、深沢さんと合流し、乾杯する。雪渓からの風に凍えるうちに雨が降り出し、雷雨となった。夕方一時止むが、夜中に再び降り出し、朝方まで激しい雷雨が続いた。
歩き始めから雨 長く急な雷鳥沢の登り
剣沢雪渓の下り 真砂沢キャンプ場で宴会

8月16日 晴れ後豪雨
 前夜からの雷雨が明け方まで続いたため、外の様子を伺いながら遅めに起床する。支度をするうちに雨は弱まり、出発する頃には晴れ間が見えてきた。長次郎谷の出会いでアイゼンを装着する。この頃には快晴となり、雪渓と青空の美しいコントラストを見ることができた。急登に喘ぎながら10:45に熊の岩に到着。テントは3張り張られていた。
 テントを設営し、登攀の準備をして六峰の取り付きに向かう。雪渓のトラバースや急勾配のガレ場の登り、シュルンドへの下降など、取り付くまでに大変神経を使った。Cフェースは藍沢さん・ニシノさん・カトさんチーム、Dフェースは深沢さん・ランさんチーム、笹田さん・あつこチームで登る。Dフェースは深沢さんチームが先行することになった。不意に緊張する。正直私はこの時まで、今回の登攀に対する不安や緊張は全くなかった。岩登り経験が2回というど素人のため、登攀写真や記録、解説などを見ても今ひとつピンとこなかったからだ。しかし、深沢さんチームが先行し、笹田さんがトップで登った後、取り付きに一人残ることになり、急激に緊張し始めた。慌ててかけ声やビレーの方法などを確認する。3人が行ってしまうと、いよいよ自分の番となった。
 下から見ていると簡単そうに見えるのだが、当然ながら実際は難しい。1P目で一番手こずり、一度は不本意ながらヌンチャクを掴んでしまった。2P目は順調に登れたが、登った先のビレー点の狭さに驚いた。笹田さんの誘導で何とか移動し自己ビレーをとるが、2人がかろうじて立てる程度のスペースしかない。その地点で足をつりそうになりながらビレーをするうち、じわじわと本格的な岩登りをしている実感が湧いてきた。3P目も手こずり、1箇所で釘付けになる。あれこれ試すが行き詰まり、どうしたものかと一息ついた頃、ニシノさんの応援が聞こえた。するとリラックスできたのか、直後に不思議とクリアすることができた。4P目は難所もなく順調にクリアする。登りきると「ケッチボー」の声が聞こえ、ビレー点からCフェースのニシノさんが見えた。切り立ったリッジ上に立つ姿に、改めて高度感を実感する。その後、カトさんも現れた。この頃、取り付きの時点で曇っていた空から雨粒が落ち始める。5P目も難所はなかったが、徐々に強くなる雨に焦り急ぐうち、浮石を掴んでひやりとする場面があった。しかしそれ以外は順調で、ついにはピークに立つことができた。天気も視界も悪いが、達成感はすばらしい。先行の深沢さんチームは30分程前に登頂していたそうだ。強まる雨風に雨具を着用し、ツェルトを被ってCフェースチームを待つ。やがて、ガタガタ震えながらCフェースチームが順に現れた。
 登頂を祝い合った後、感動もそこそこに下降を急ぐ。土砂降りの雨とクラックを勢いよく流れる雨水に、雨具の中までずぶ濡れになった。あまりの寒さに歯の根が合わず、震えが止まらない。懸垂下降を何度か行い、雪渓をトラバースして熊の岩に辿り着いた時、大げさながら「生還」という言葉が浮かんだ。急いで避難したテントの中で飲んだ甘酒は格別だった。
熊の岩への登り。雪渓を詰めていきます この日登った六峰
Cフェース・剣稜会ルートを登るニシノ Dフェース・都立大ルートでビレイ中の笹田さん

8月17日 雨のち晴れ
 前夜からの雨が続いたため、様子を伺いながら5時半過ぎに起床。9時過ぎに出発し、長次郎谷左俣から本峰を目指した。急勾配と前日の疲れから何度か足を滑らせ、その都度後続の方に支えていただいた。ところどころにシュルンドができており、藍沢さんの先導で安全な箇所を選んで進む。11時頃雪渓の上部に到達し、アイゼン・ピッケル・ヘルメットの装備を解いた。そこから先は、浮石の多いガレた急登となる。ここで私は不注意から落石事故を起こしてしまう。足元から崩れ落ちたこぶし大の石が、ヘルメットをかぶっていないニシノさんの後頭部を直撃したのだ。幸い最悪の事態には至らなかったが、一歩間違えれば命にかかわる大事故になるところであった。緊迫した空気が流れ、そこからはヘルメットを再着用し、前後の間隔を詰めて歩いた。正午に登頂。視界は皆無だが、感無量だった。
 記念撮影をしつつ、晴れ間を期待して20分ほど休憩するが、相変わらずの曇天。諦めて剣沢への下降を開始した。カニの横ばいは想像していたほど難しくはなかったが、1箇所で足を滑らせひやりとする場面があった。その後いくつか鎖場を越え、前剣・一服剣へと進むうち、ようやく日が射し始めた。17時頃に剣沢小屋へ到着したが、この頃には完全に晴れており、濡れた装備を干して宴会に突入した。
長次郎雪渓を登っていきます 劔岳山頂到着
カニのヨコバイ 剣沢キャンプ場に到着

8月18日 晴れ
 朝から快晴。前日に干しておいた装備はほぼ乾いている。剣岳をバックに記念撮影し、好天の下出発した。この日は行程が短く下るだけなので、ザイルを1本担ぐ。初日には霧で見えなかった景色を堪能でき、荷物は重いが足どりは軽い。剣御前小屋からは槍ヶ岳が見えた。苦労して登った道を軽快に下り、室堂への最後の上りをどうにか登りきって、9:50に室堂ターミナルに到着した。
 室堂ターミナルからはトロリーバス・ロープウェイを使って扇沢へ下った。黒部ダムでは観光放水をしており、最後の最後まで楽しむことができた。
朝焼けに染まる劔岳 別山乗越への登り

 今回の山行では、様々な経験をさせていただいた。短時間ではあるが雨の中の登攀、土砂降りの中での下降、急傾斜の雪渓歩き、雨で濡れた鎖場などなど。ツェルトを被ったのも、夏場に冬季並の大荷物で歩くのも初めてだった。幸いメンバーの皆さんのお陰で無事下山できたが、今後は登山とは単なる娯楽ではなく、自分と他人の命が懸かった危険な行為であることを自覚し、より真剣に安全に歩くことを心掛けたいと思う。
 今回お世話になった皆様、本当にありがとうございました。