赤沢山(ラッセル山行)

ミナト

期日:2012年1月14日〜15日
参加者:ハギ(CL)、あつこ(SL)、サブ、アトム(食担朝)、エビ、ホッシー(食担夜)、ミナト(記録)


1月14日
9:40土合バス停〜15:30テン場(1200m付近)
1月15日
8:10テン場発〜9:30赤沢山山頂〜11:00テン場発〜12:17バス乗車


 ラッセルといえば「シンドイ」「疲れる」「汗だく」「絶対イヤ!」等の言葉が必ず聞かれる。北陵では、そんな忌み嫌われるラッセルをわざわざ目的とする山行が年初に計画される。今年は大源太山の予定であったが、孝先生が仕事の都合で行けなくなり、急遽行先が赤沢山に変更された。この山が何処にあるのか即座に答えられる人は稀ではないだろうか。それほどマイナーな存在なのであるが、冬になり雪をかぶるとその積雪量の多さと静けさで、ラッセル愛好者にとっては俄然魅力的な雪山になる。そんな素敵な舞台を、あつこさんは自身の持つ秘密の情報網を駆使して導き出し、そして今回の山行計画に提案してくれたのである。

1月14日(土曜日)
 土合駅バス停で降りた北陵のツワモノ達は7人。体力には自信を持つ面々だ。天気は雪模様であるがラッセルには問題ない。皆は「もっと降れ!もっと積もれ!」と思っているに違いない。赤沢山への取付き地点である土合山の家へ着くと、其処にはあきらかに同じ目的を持つと思われる若者達が、ワカンを装着し準備を整えている姿があった。今回、ジャンケンでリーダーとなったハギ隊長が恐る恐る聞きに行くと、やはり我々と同じルートを行くことが判明した。早速協議が始まる。「他者の築いたトレースを辿るなど言語道断!」「俺は(私は)ラッセルドロボウなんて言われたくねーぜ(ないわ)!」等の意見が続出し、ルートの変更は即決された。それではどうするべぇと地形図を広げ検討した結果、此処から第2案であるBルートへ合流する尾根を詰めることに決定した。ただし、尾根への取付きがちょっと厳しそうだが。

 取付きまでは若者達のトレースを使わせて頂く。当初の予定であったAルートに取付く彼らを尻目に、我々は独自のルートを切り開くべく変更したルートに取付いた。先ずラッセル馬鹿のミナトが先頭となり、いよいよ楽しいラッセルの始まりだ。積雪は腰くらいまでだが、急な雪壁状の所では頭上付近の雪を掻き込むようなラッセルになる。「キビシイのは望むところだ!」と気合で進むが、雪が凍っていてワカンで乗り越せない壁が行く手を塞ぐ。「ちくしょう、そっちがそうなら、こっちはこうだ!」とピッケルのブレードで足場を削り、何が何でも突破する。その後、ヘロヘロになりながらなんとか尾根に乗り、汗と鼻水とヨダレと出せる液体をすべて垂れ流しながら放心状態となったミナトに代わり、アトムさんが先頭となる。皆さんからはありがたい労いのお言葉を頂戴したが、エビちゃんからは、「ご苦労」とひと言だけ、それもまるで上司が部下に言うように上から目線で言われてしまった。くっそー!

7人の奇人達 どれだけ嬉しいんでしょうか

 尾根上も膝上から腰ぐらいの積雪で、立木の回りの落とし穴にはまったりして、なかなか難儀なラッセルが続く。しかし、先頭交代後は皆さん満足げな表情をして、「楽しかったー」と言われる。特にハギ隊長は「どこまでもフカフカなの〜♪」と本当に楽しくてしょうがないみたい。良かったですね。すぐ近くで列車の音が聞こえ、労力に比較して全然進んでないことを知る。でも「これがラッセルなんですよねぇ」と一同うなずく。皆さん先頭になると頑張りすぎてしまい、後続が寒くてしょうがなくなってしまう。そこでハギ隊長の指示により3分ピッチで先頭交代をすることに。すると、体も冷え過ぎず集団が活性化し、スピードもアップ。これはいい!その後は、この3分ピッチ交代戦法で順調に前進する。

 Bルートと合流すると雪庇が現れ始め慎重にルートを選択。1150m付近よりテン場を探しながら進み、1200m付近のなだらかな尾根上をテン場に決定。スコップで雪を均し、防風壁を作り、約1時間でテントを張り終えた。テントを張り終えれば後は乾杯を行うのみ。サブさんが担ぎ上げたホットワインで1次会の幕が切って落とされた。宴会は恒例のサブさんVSエビちゃんの毒舌対決になる。今日のエビちゃんは絶好調で、珍しくサブさんが劣勢にまわるが、運良くホッシー君特製の激ウマビーフばっかりシチューの夕食が出来上がり第1ラウンドは終了。夕食後にハギ隊長の「まだ呑み足りない」宣言があり、第2ラウンドが開始される。今度はあつこ副隊長がサブさんに加勢し、エビちゃんはタジタジに。見かねたアトムさんがエビちゃんをフォローするがぜんぜん助けにならず、とうとうエビちゃんノックアウト。その後は、巷で噂の「つりしさんTBKセ○ハラ事件」の真相等の話題で宴会は頂点に達するも、ハギ隊長のムニャムニャお寝むの時間となりお開きとなった。

がんばれサブちゃん! 我々の後に道ができるのです

1月15日(日曜日)
 6時半起床。天気は薄曇りで、昨夜は20cmほどの積雪があったようだ。本日の行動は、テン場からサブザックで赤沢山頂上をピストンし、テントを撤収後下山する予定。朝食はアトムさん担当のサンドイッチとスープを頂く。シャキシャキレタスがおいしかったが、一同からもっと手早く出来るメニューの検討の宿題をもらう。分担装備を各々のザックに振分け、赤沢山頂上に向けて行動開始。早速、腰から腹ぐらいのラッセルになるが、フカフカの軽い雪のラッセルは本当に楽しく、時おり朝日も顔を出し最高の気分。昨日と同様の3分ピッチ交代戦法でグイグイと進むと、頂上直下の向こうの尾根に昨日の若者集団がいることを確認した。

 なぜか彼らの人数が昨日より増えていて総勢15人位だろうか。向こうもこっちを意識しているようだ。両者から頂上までの距離は同じ位なので、自然と頂上までの競争となる。ここで「奴らに絶対に負けるな!!」とハギ隊長より激が飛ぶ。このタイミングでなんと先頭は北陵一の武闘派娘であるサブさんとなり、これはもう我々の勝利は決まったようなものだ。戦闘態勢に入ったサブさんの気迫は凄まじく、もう誰にも止められない。急雪壁などものともせずスゴい勢いで頂上へ突き進む。劣勢を悟った若者集団は隊列を崩し、なりふりかまわず元気のある者が頂上を目指す作戦に打って出たが、時すでに遅し。サブさんは若者達に大差をつけて勝利した。サブさんありがとう!あなたのおかげで北陵のメンツは保たれました。本当に良かった。嬉しいです。

 彼らが頂上を占拠する前に素早く写真を撮り、必死で登ってきた彼らに余裕で頂上をあけわたす。我々は大人ですからね。聞くところによると、彼らは慶応高校・中学の生徒さんらしい。騒々しいのですぐに頂上を後にするが、あっという間にテン場に到着してしまう。さっと撤収して下山を開始。昨日、ハギ隊長が小枝に結んだ何ともかわいらしい赤いリボンの目印のおかげで迷わず進むことが出来た。途中から昨日のトレースがばっちり残っており、ワカンをはずし、尻セードを交えながら楽しく下降する。昨日あんなに苦労して登った尾根をたった1時間で下降してしまい、なんだかもったいない感じ。そんな楽しい下降の最後の急斜面でプチアクシデントが発生した。なんとエビちゃんがシリセード中にコースアウトして小沢に突っ込み、頭まで雪に埋まってしまったのだ。アハハハハッと皆で大笑い。あつこ副隊長は、「このまま埋まって春まで発見されなければいいのに」と冗談を言うが、半分は本心であったのではないだろうか…。

 バス停まで歩く林道の途中で我々が登った尾根が見える。何の変哲もない尾根だが、そこには我々が切り開いたトレースが存在する。そしてそのトレースは、赤沢山の頂上まで一本のラインとなって続いている。我々7人が力を合わせて築いた一本のライン。苦しいラッセルで汗を流した者だけが得ることができる感動がそこにはある。この感動を知ってしまったものは言うだろう「だからラッセルはやめられない!」と。

中高生を制した大人(げない人)達 春まで埋まっていてください