石尊稜、雪崩遭遇顛末記

カト

期日:2012年1月28日〜29日
参加者:sa山(L)、カト


1月21日
起床4:00-赤岳鉱泉5:40-石尊稜末端下部9:30(雪崩遭遇)赤岳鉱泉11:30

(カト記)
 1月21日、石尊稜は大変な山行になった。新雪で橋の分岐からずっとラッセルだった。 石尊稜末端まで4時間かかる。始めはsa山さんが順調にラッセルする。一度交代し斜面が 少し急になったところでまたsa山さんにやってもらう。しかし、いよいよ斜面がきつくな ったところでsa山さんがやってくれと言う。顔がくっつくほどの急斜面の柔らかい雪をか いては膝で固めるが固まらない。何度も斜面の雪を集めて足が乗れるようにする。1時間 ほどそんなラッセルでやっと石尊稜末端の最後の斜面に出る。
 真っすぐ中山尾根末端を目指して沢筋に行こうとしたが雪がふかふかでラッセルがきつ かったので、左を探ると雪の下はハイ松帯と岩稜なのでここを進む。岩に乗ると岩稜帯に でる。真っすぐ行くと三叉峰ルンゼの石尊稜左斜面になる。右斜面がラッセルが少ないと 聞いていたので、そちらに回り込もうと斜面をトラバース始めた。sa山さんが下から「雪 崩だ」と叫び上を見ると表面が波打つのが見えた瞬間足をすくわれる。極力下に巻き込ま れないように雪に乗り2m程流されると木が見えたので必死につかむ。細い木だったがし っかりしていて雪がかぶさっても止まることができた。その間片手で口をふさぎ呼吸を確 保する体制をとる。雪崩はすぐに治まる。上体は自由だが足が雪に埋まり力づくで抜く。
 sa山さんを探すが姿が見えない。慌ててsa山さんを連呼しながら下に駆け降りる。5mほ ど下の斜面に赤のジャケットが少し見えた。駆け付けると斜面を横切るように横になって 埋まっている。頭は完全に雪の中だ。左手が出ている。その手で顔の雪を取ろうとしてい るのだろうかしきりに動かしているが腕が雪で固まり空を切るばかり。胸が見えていたの で手袋をはずして素手で雪を取り除く。口が見えた時はほっとした。顔は紫色に変色して いる。数分でも雪に埋没していたので冷え、緊張、恐怖のためだろう。頭の雪を取り除き 私の膝に乗せ呼吸を整えてもらう。鼻血を少し出し唇が多少晴れている。痛いところはな いと言う。腰から下が雪で固まり動かない。足の雪を除き足を雪から引きずり出す。しっ かり立てる。二次の雪崩が怖いのでsa山さんは尻滑りで、私は転がって、斜面を急いで下 る。安定した場所まで移動し休憩をとる。改めてお互いの無事を確認し温かいお茶を飲む。 下山する。橋まで2時間弱黙々と下る。
 赤岳鉱泉小屋に入り、ラーメンを食べ濡れたものをストーブで乾かす。15:00頃まで小 屋で暖まる。テントに戻り酒を飲みながら反省会をする。
 明日は赤岳主稜をやろうと言うことになった。就寝は何時か分からない。多分20:00頃 だろう。

(sa山記)
 中山尾根めざし、尾根急登に差掛かる手前赤い橋が目印の沢に入る。 踏み跡は消されているが、それらしき跡をたどる。そのうち、踏跡を少し外れると、股下 まではまるようになる。小同心ルンゼに差掛かる、この辺から傾斜が少しずつ増してくる、 カトさんとトップ交代し進んでもらう。
 下部岸壁が左上に見えるところまで沢を詰め、下部岸壁から左に派生している、尾根沿 いの右の斜面に進路を変え、尾根に突き上げようとしたが、すっきりとした、小枝の混ざ った尾根に沿った雪面を登り、そこから少し右の岩下に進んでいたとき、進行方向の上に、 真横に亀裂が走ったのが見えた、と同時にカトさんの上が崩れ落ち、迫ってきたので、少 し下がり、ピッケルストップするも効かず、後ろ向きになり尻セードで流れに任せた、流 されながら、ザック、頭が重いため、体重い方向に傾き、下のほうに持って行かれる、ス ピードが落ち左に流され、止まる。
 顔が谷向きに止まったので、顔の周りには空間ができていた、20〜30cm程度の雪で、 大したことは無いと軽く見ていたが、抜け出そうとしても、体がまったく動かせない、金 縛り状態。
 右手首が顔の下に在り動かせたので、顔の周りのスペースを広げ、左ひじから先が、埋ま っていないので動かせた、その手で顔までほじり返そうとしたが、しっかり締まっていて、 はかどらない。
 カトさんの声が聞こえなかったので、カトさんも埋まったなと思い、早く行かなければと 雪をほじくり返していたとき、声が聞こえたので、ほっとしました。 時間的には2分ほどでしたが、酸素が薄くなるに連れ、その分呼吸が速くなってきます。 その後掘り出してもらい、カトさんの報告通りです。
 反省点として、前日、当日雪です、2〜30cmの積雪です、沢筋を進んでいるとき、大き く亀裂が走りました、足の周り、50cm、とか体の回り1mほどの亀裂は良く見られる事 ですが、4、5m先に亀裂が入ることは、今まで経験しませんでした、クラストの硬さを 感じました、そんな亀裂が5、6回ありました。
 新雪といえども流され、止まるときは圧縮され、硬く締まります、ダンプカーが荷台を 上げ、スロープ状に砂を下ろしているとき、流れている砂は、水のようにさらさら流れ柔 らかそうですが、下に落ち止まったときは硬く締まって、スコップでないと刺さりません。 流されると、雪より重いものは、雪の底に落ちて行きます、雪の上に出ようと、雪を下 に押し付けながら、今回の場合、尻セードしながら腕を、背泳ぎみたいに動かし、しりの 下に雪を入れ、雪の上に上がろうとすべきでした、効果のほどは、あるかと思います。  雪崩に遭わないよう、後の祭りにならないよう、勉強します。
 大変ご心配掛けました、この前例を踏まえ、慎重に行きましょう。
 カトさん、ありがとうございました、また、行きましょう。
概念図