剱岳(夏合宿) 後発隊

期日:2012年8月13日〜17日

ミドリCL、アトム、エビ(記)


行程:
○8月13日
11:30立山→(ケーブルカー)→美女平→(高原バス)→12:50室堂→14:00雷鳥沢[幕営](21:00就寝)
○8月14日
(6:00起床)→8:30雷鳥沢→10:20一ノ越→雄山→大汝山→富士ノ折立→真砂岳→別山→15:30剱沢BC[幕営](20:00就寝)
○8月15日[本隊合流10名]
(2:00起床)→3:40剱沢BC→8:00剱岳→12:10剱沢BC→15:40真砂沢BC[幕営](19:00就寝)
○8月16日[本隊合流10名]
(3:00起床)→4:45真砂沢BC→仙人峠→雲切新道→18:00阿曽原温泉[小屋泊](21:30就寝)
○8月17日[本隊合流10名]
(4:00起床)→5:30阿曽原温泉→12:40欅平→(トロッコ電車)→14:30宇奈月(入浴)→魚津(解散)





 

エビ




「夏休みはダラダラ過ごす」という鉄の掟を破り合宿に参加することにした。行き先は憧れの剱岳を含む4泊5日。
8月13日(月)朝、メダカにエサをあげて、タッチの再放送を見て、ゴーヤの観察日記をつける、そんな生活を諦めて家を出た。
東京駅から新幹線に乗り、まもなく大宮駅にてメンバーのミドリさん、アトムさんが乗り込む。コッソリと隣の指定席を買っておいたので無事合流。
本日からの行動予定、持ち物を雑談交じりで確認する。二人はいつも表情が明るい。越後湯沢で乗り換えて、富山まで。
富山から富山地方電鉄にて立山へ、ケーブルカー、高原バスを乗り継いで12時50分室堂に到着。
ここまでなかなかの道のりだ、ケーブルカーと高原バスで3500円程した。室堂に到着すると生憎の小雨が霧状に降っている。
室堂の建物内は、登山者よりも観光客で賑わっている。端の方で雨具を着て、ザックにレインカバーをつけて準備をする。
何故か二人はペアルック…。そんなことに戸惑いつつも13時15分出発。初日の予定はCT1時間10分、道も綺麗に舗装されているのでわりと気楽だ。
ラフな格好で歩いている観光客も多く、完全武装して歩いているのが少し恥ずかしいくらいだ。1時間もかからず14時に本日幕営地の雷鳥沢に到着。
受付を済ませていると幸いに雨が止んだのですばやく設営。硫黄の臭いがする。広い幕営地に初めての前室付きテントで3人興奮する。
まだ時間も早く折角なのでと、二人は近くのヒュッテにある温泉に入りに行くと言う。自分は少し体調が優れない気がしたのと面倒だったので留守番をしていた。
水汲みをして、外で周りの様子を見ながらパンを食べていると徐々に身体が冷えてきたのでテントに入る。
テントの中でごろごろしているとまた段々と寒くなってきて、やむを得ずシュラフを広げて潜り込むと眠ってしまった。
16時頃二人が戻ってきたので、早速温泉の様子を詳しく聞いて入浴した気になる。内風呂・外風呂あり、外風呂の湯船は小さいもののなかなかよい湯だったようだ。
そろそろと夕食の準備を始める。本日の夕食担当は、ミドリさんで、スーパーで発見したというサラダパエリアを作ってくれる。
ベーコンや野菜を生米と一緒に炒めたものでとても美味しかった。降ったり止んだりだった雨が夜になると激しさを増し、前室内は川のようになっていた。
翌日からの計画について、状況次第でコース変更、停滞、撤退を検討、話し合い、4時に起床、その時点で再び様子を見ることにする。
一瞬雨が止んだので、テントの外にでると他のテントからも皆いっせいに出てきてトイレへ向かった。
翌日4時に目を覚ますと引き続きの大雨で2時間遅らせることにして2度寝。6時に再び目を覚ますと雨脚はだいぶ弱まっている。
来た道をやや戻って浄土山に登ることを省いて、一ノ越から立山をまわる計画に変更して、8時半に出発。雨は弱く降り続いたがずいぶんましだ。
雨のためにCTよりやや遅い時間で雄山、大汝山、富士ノ折立、真砂岳と別山まで巡った。天候がわるくても危ないところはなく歩きやすかったが、
やはり展望は望めなかった。この時点で時刻は14時15分。朝の出発を2時間遅らせたので本隊との合流が遅くなることを気にして、
剱御前小舎のほうにはまわらず時間の短縮を図る。しばらく下り始めるとすぐに剱沢BCが見え、まだかなり遠いが「ケッチボー」と叫んでみる…
特に返答なし、やはりまだまだ遠いようだ。BCを見続けながら、下っていくと今度は、下から「ケッチボー」の声が聞こえる。
嬉しさに心を震わせながら、3人で「ケッチボー」と返す。何度も「ケッチボー」の声が返ってくる。上から見るとテントの数が多くてなかなか特定できなかったが、 近づくにつれてあれかなと思う複数のテントがある。そこを目指して歩いていくとやはり先発隊・本隊の仲間たち。再会を喜び合う。
用意しておいてくれた飲み物をありがたく頂きながら、これで全員集合かと思うと何人か不在だ。訪ねると我々を迎えに剱御前小舎まで行ってくれているそうだ。
ありがたい気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。我々が本日の計画をどうするか話し合っていたのと同様にこちらでも我々の行動を何パターンか予測していた
ようだ。携帯や無線で連絡を取り合えばなんてく、普段の生活であれば間違いなくそうしているが、この不便さもまた受け入れるべく山の面白みかもしれない。
追いかけたい気持ちをぐっと抑えて、まずはテントの設営をする。きちんと場所が用意されていて、皆が手伝ってくれたので設営はすぐに終わった。
すると戻ってくるミナトさんとキコリさんが見える、近づいて他の人はどうしたか訪ねるとさぶさんとカトさんは、もう30分待ってから下りてくるとのこと…
申し訳ない。再び駆けつけたい気持ちをぐぐっと抑えて、幕営地内にある大きな岩で笹田さんとたかちゃんがセッティングしたボルダリング課題を楽しむ。
悔しいが完全に敗退だった。そうこうしているとカトさんとさぶさんの姿が見えた。ミドリさん、アトムさんが駆け寄る。やられた!
二人はまだ雨具を着たままで「今、到着しました」という顔をしてる。一方、自分はもうビーチサンダルでリラックスモード、雨具なんてとっくに脱いでいる…。
でも気にせずに駆け寄り再会を喜び、お詫びを言う。これでようやく全員集合、記念撮影して、夕食に宴会で楽しい楽しい夜だった。
日が傾いたこと頃にようやく剱岳山頂の雲が晴れて、日が沈むまで皆で眺める。夜になると星を眺める。かけがえのない時間。
しかし次の日はいよいよ剱岳山頂を目指す。下山をする人もいるのでテントの調整と明日の予定の確認をして、20時に就寝。
イマイチのお天気の立山。でもよく歩きました!! 剱BCで全員集合!!山で仲間に会うのはうれしいものですね。
朝食は下山隊のテントで作って各テントに配ってくれるそうだ。
起床時間の少し前に目覚めると他のテントから既に朝食を作り始めている音が聞こえる。
そして2時に起床するとすぐに朝食が運ばれてくる、ありがたい、美味しく頂く。激しくはないが小雨が降っている。
写真で見たあの険しいところを雨の中歩くことを考えて緊張した。雨具を着て必要なもののみを持ち、不要なものはテントに置いて出発準備。
まだ暗いためヘッドランプを装着して、3時40分に出発。途中ガスっている中で日が昇り始めると、あたり一帯がオレンジ色に染まり幻想的な雰囲気に魅せられる。
事前に写真で見たとおりの険しい鎖場、ハシゴ、カニのたてばいなどを越えて、8時剱岳頂上に到着した。
下りも同じようにカニのよこばい等を越えて下山した。道中、笹田さんが花の名前を教えていただいたりなどしたのだが、とにかく無我夢中だった。
岩稜、鎖場はわりと好きなのだが、あの高度感で雨に濡れているととても怖くて移動することだけに集中していた。
足元がとても滑り、3点支持でも1点滑ると他の2点も滑ってしまい耐えられないなと思いながら、頼りの鎖に手を伸ばすと鎖は岩以上に滑った。
岩稜を抜けると雨も止み、ほっとすると剱岳登頂の満足感とその前後の充実感に満たされた。
燃えるような源次郎尾根。幻想的な朝日です。 緊張する岩場の連続。慎重に確実に行きます。
幕営地手前の雪渓で笹田師匠指導のもと皆で、雪渓を歩く、走る、滑り降りるなどの訓練をした。
初めは、転ぶことが怖くて腰が引けてなかなか思うように歩けなかったが、慣れると走ることもできるようになったのだが、少しはしゃぎ過ぎてバテバテになった。
12時10分BCに戻ると「あー、疲れた」と思いながらも撤収して、BCを移す準備をする。長次郎谷などを見ながら日本三大雪渓である剱沢雪渓を越えて、
15時40分真砂沢に到着。ここまで12時間行動であった。翌日からの予定は、相変わらずの雨予報のため、一般・後発隊の計画に本隊も合流することとなる。
本隊は、2日早い下山となるため、余る食材を今晩から消費していくことにする。「やった、今日はご馳走だ」と浮かれていると、
笹田さんから「明日は大変だからよく食べておくように」と言われて内心驚く。(えっ、今日よりも??そんなバカな、ヤバイ、調査不足だった…)と思いながら、
雪渓渡渉訓練。数名、おもいっきりはしゃいでいる方が・・・
訪ねると明日の雲切新道は、とてもとてもしんどくて今日よりも大変な日になると言われ、翌日を心配して不安になる夜が続くことになった。19時に就寝。
3時に起床すると天気はまずまずである。朝食に大量のにゅーめんを食す、野菜が色々入っていて美味かった、
本日は大変な日になるようなので量が多いのもありがたい…が自分のはかなり多かった。まだ薄暗い4時45分に出発。川沿いを歩く。
歩き始めてまもなくナッツが大量に入ったボトルを拾うとそれがその夜の肴になった…まったく山とは恐ろしい。しばらく行くと雪渓を越えることになる。
アイゼンを出さずに歩くのだが朝のため雪が固くよく滑る。注意して皆なんとか越える。状態はかなり違ったが、
前日の訓練が無かったら怖くてとても越えられなかったであろう。また、この後も何ヶ所か雪渓が出てきた。そのたびにアイゼンを装着していたらかなり
時間のロスになり、本日の長い行程を考えるとその選択はなかった。ふたたび川沿いを進む、途中吊り橋や『近藤岩』の近くを通る。
道は特に大したことないのだが顔を上げると360度深い緑に囲われていて、三ノ窓など端の見えない雪渓やところどころむき出しになっている岩肌、八ツ峰が見えて、
山の奥深いところにいることを全身で感じる。そのままひたすら進み、木道に出てしばらくすると仙人池ヒュッテに着く、そこで炭酸ジュース200円を買って飲んだ。
仙人池では雲が多くて池に映る剱岳を綺麗に撮影することはできなかった。いよいよ雲切新道が始まる。リーダーが小屋の人に確認すると1ヶ所雪渓を越えるのが少し
危ないようだ。気を引き締めて進む。まもなくその雪渓は現れる。どこからどう越えていけばよいのか判断が難しい。
このような局面でやはり最も頼りになるのは笹田師匠だ。位置を見極めバイルで雪を削り、乗り越して、他の人たちを誘導する。
それをミナトさんも見事にサポートしていた。この日に限らず前日、そして翌日もになるのだが、全員の動きに気を使いながら
全体をリードする先頭を見事に務めたさぶさん、局面を見極めての注意や時には前に出て切り開く笹田さん、ミナトさんの連携には目を見張るものがあった。
登山道脇になる野苺など数種類の実を食べたりしながら、長い長い雲切新道を越えて最後に関西電力の施設内を通るともうすぐ本日目的地の阿曽原温泉だ。
関西電力の施設内は涼しかったり、トロッコ電車の線路があったり、突然硫黄臭がして蒸し風呂状態だったりとソワソワした。
それにしても他の登山者にほとんど会わない日だった。最後の下りに差し掛かると雨が降り出した。あと10分程なのに雨具を着ないといけないくらいだ。
18時に阿曽原温泉小屋に到着すると雨は本降りでびしょ濡れになった。実に13時間行動。
なんとか頑張ってテントを設営しなくては、少しでも小降りになってくれないものだうかと思っていると、リーダー会議で本日はそのまま小屋に泊まることとなった。
他の利用客は1人、素泊まりで6000円。我々は10人だったが、空いているので12人泊まれる部屋を2部屋与えられた。
乾燥室に服や荷物を放り投げて、片方の部屋に集まりビールで乾杯。しばらくして外を見ると雨脚がだいぶ弱まっている。
折角なので温泉に入りに行こうとなるが、紳士な我々はもちろんレディーファーストで女性陣に先を譲る。しばらくゆっくりしていると誰からともなく
「そろそろ準備をするか、濡れるからパンツのみで行こう」と言い出す。本気か??と思っていると女性陣が戻るのを待たずして見切り発車で出発、
出遅れてしまった。急いで服とズボンを乾燥室に放り投げ、パンツとヘッドランプだけの格好で、
小屋の受付に温泉への行き方を尋ねると女将さんが10〜15分歩くから転ばないように気をつけてねと少し呆れた感じで答えてくれた。
外に出ると下の方にヘッドランプの明かりがあり、「こっちだよ、早く」との声、下りていくとパンツ一丁の男が5人、二日前の感動的なのとは違うケッチボー。
昔『葉っぱ隊』というのがあったなと思いながら、10分程歩いてもうすぐ温泉というところで女性陣に対してもう大丈夫か紳士的に声をかけると、
風呂上りの女性陣が上がってくる。ちょうどよいタイミングだったが、すれ違うときの態度はなかなか冷ややかだった。何はともあれ久しぶりの入浴、
雨もすっかりあがり星空が見えた。本日の13時間行動はこの温泉へのアプローチという冗談が少し本気に思える本当によい温泉だった。
小屋に戻って残っている食材での豪華なディナー、21時30分広い部屋に布団で深い眠りについた。
真砂沢から長い道のり・・・阿曽原温泉へ向かってGO! 途中で不安定な雪渓が。。。笹田師匠の指示で安定した場所を渡ります。
4時に起床、小屋の主人に世話になった礼を言って、5時半に出発。本日の行程はアップダウンはそんなにないものの高度感があり、
切り立っている水平歩道を通るので気が抜けないという。5日目、本日が最終日だと思うと少し淋しい気持ちになる。もうすっかり定着したさぶさんが先頭で進む。
綺麗で大きな滝の下ではさんしょううおが見られた。トンネルを何ヶ所かヘッドランプをつけて通るが、
近年改善されたらしくトンネル内に足首より深く水が溜まっていることはなかった。水平歩道は、ひたすらトラバースルートで
よく整備されていて道幅もそれほど細いところはなく安心して歩けるが、立地は切り立っており少し離れて見ると恐ろしい。開拓者にただただ敬意を表する。
気の抜けない水平歩道。最後まで集中!!
この何日間かで危ない場面は幾度かあったが、12時40分なんとか全員無事に欅平到着。
いきなりの観光地でギャップに戸惑う。切符を買ってトロッコ電車に乗り込む。我々が乗る電車もすれ違う何台もの電車もなかなか盛況だった。
疲れとすばらしい景色は既に堪能したことから皆ウトウトしているとすれ違う向かいの電車から、
「寝ている人がいるよ。あっ、本当の(?)山登りの人達だ、疲れているんだな。」との声が聞こえて恥ずかしい。
そして人の多さに少しうんざりする。宇奈月まではわりと遠く1時間以上トロッコ電車に乗っていた。ザックを持っての座席は広くはなく窮屈だった。
宇奈月の公衆浴場で汗を流し、魚津まで移動したところで解散。
私は、剱岳も夏合宿参加も始めてであった。4泊5日という今までに経験のない連泊、雨の中の鎖場、雪渓歩き、13時間の長い行動時間、
切り立ったトラバースルート、とにかく感じる山深さと時々漂う硫黄の臭い、そして最高に気持ちよかった温泉、
次々刻々と変化を遂げる状況にとても得るものが多く、とても楽しい夏休みを過ごすことができた。
いつか自分にも後輩ができたなら、連れて再び訪れたい。そんな風に思う山行でした。