錫杖岳登攀記

錫杖岳登攀記

2014年10月11日~12日

メンバー  角田 稔、阿部 功(記)

錫杖岳(2168m)は百名山の一つに数えられる笠ヶ岳(2898m)の南側に位置するが、なだらかな山容の笠ヶ岳には似つかわしくない急峻な岩稜である。

遥か前になるが、笠ヶ岳から剣岳に縦走した時初めて錫杖岳を目にした。その時異様に映ったことを覚えている。

今回は角田さんのお誘いに乗って、その錫杖岳へ行くことにした。

深沢さん曰く、アラカン(アラウンド還暦)ペアだそうだ。

錫杖岳の岩に関して言うと、現在休会中の湊さんと一緒に「注文の多い料理店」のルートを登ろうという予定だったのだが、思わぬ形で一つの夢が叶う事になった。

1錫杖岳全景
1錫杖岳全景

 

 

 

 

 

 

 

11日 ルート「注文の多い料理店」

大型の台風19号が接近しているので、週末はどうなるだろうと心配していたが、進みが遅く晴れの予想になったので、予定通り21時に隣町の角田邸を出発。

東松山ICから入って、上信越道経由し松本ICで降り158号線から新穂高温泉に到着。

AM2:00前にゴール出来た。

付近をウロウロして、ヘリポート横に駐車場を見つけてテント設営に取り掛かったのだが、テント用ポールを忘れるという大失態を演じてしまった。

これが原因で寝床は我が愛車が仮の宿となり、角田さんには申し訳ないが錫杖岳への出勤は駐車場からという羽目になってしまった。

駐車場の周りが騒がしくなり目を覚ます。軽い朝食を済ませAM6:30駐車場を出発。

対岸に渡るとすぐに登山道入り口があり、ポストに登山計画書を投函。

パートナーの角田さんはフルマラソンを3時間台で走る男、どんどん離されてしまう。またクライミングの知識も経験も彼の足元にも及ばない。

紅葉はしているものの10月とは思えない暑さである。山を一つ越えると錫杖岳の末端が見え始める。1時間30分ほどで錫杖岳の分岐に出る。さらに明瞭な踏み跡を辿って行くと30分ほどで基部に到着する。

 

既に大勢のクライマーが取り付いている。聞けば関西の労山主催の「登山学校の卒業山行」ということで、バスをチャーターして来ていると言う。川沿いにあったテント群は彼らが寝泊りしている物のようだ。ルートを確認しながら、今日は「注文の多い料理店」を登ることに決定。先行する3人パーティも登山学校の受講生で、リードしているのはガイドのようだ。

3P目が核心部のようなので、奇数ピッチを担当させて頂いた。

ビレィポイントにはピンが打ってあるが、ルート上は全てナチュラルプロテクションになる。そのためクライミングギアがずっしり重い。

長い待ち時間中、男女の外人が登ってきて迷っている様子だったので、トポを片手に下手くそな英語で説明してあげた。結局登るのを諦めて帰ったのだが「親切にしてくれて、ありがとう。」と言われ1Pのテラスで手を振って別れた。

待ち時間が長く、ポカポカしているので眠くなった。

2P目は角田さんがリード。出だしが以外に悪い。思い切って外に出ないとホールドがないのだが、高度感があるのでフンギリが必要だ。

2P目終了点間近のところで右へのトラバースになるが、しっかりしたホールドがなく振られる恐怖感が加わってメチャクチャ緊張する。

3P目はクラックを3mほど直上し、フレアした庇を越えるのだが、見ていると皆ここで手こずっている。やはりここでも相当待たされる。

庇の先端に#4キャメロットと#4フレンズを噛ませ、レイバックの体勢で思い切って外に出るが次のホールドがあまり良くない。側壁にスタンスがあるのでそこに立ちこんで、フレアしたクラックに左足を突っ込み、外れないでくれと祈る気持ちで乗り越す。

高度感が凄いが下を見ている余裕などない。何とか乗り越すと緩傾斜になるので、そこでカムを決めレスティングする。息が上がって左腕がよれて来ているので次のテラスまでがやたら遠く感じる。また大きなサイズのカムを使い切っているので、プロテクションポイントを探すのに苦労する。リッジにホールドを求め、最後はカブリ気味の岩を抱え乗り越すとようやくビレィポイントに到着する。

4P目角田さんリード。ここもクラック沿いにルートを取るのだが、ビレィ点間近のトラバースは浮石だらけで体重を掛けるのが怖い。

2注文の多い料理店4P目
2注文の多い料理店4P目

 

 

 

 

 

 

 

 

5P目クラックを直上して行くとブッシュ帯になり終了間近であることを感じさせる。6P目僅かに上がった所で混雑もしているので、ここで終了とする。同ルートを下降するのだが、ロープが何処まで届いているのか解らない。角田さんが先に下降してくれて有難かった。

 

50mロープ2回の懸垂下降で取り付き点に降りられる。エイト環が触れないくらい熱くなる。14:00道具を片付け駐車場まで戻る。岩場の基部から東側に西穂高岳、ジャンダルム、滝谷の景色が眺められ、白銀に変わる前の美しい景色に見入る。

3北アルプスの景色
3北アルプスの景色

 

 

 

 

 

 

 

 

約1時間30分で駐車場に着く。三つ峠並みの行程であるが、見えるのは富士山ではなくオレンジ色に染まりつつある槍ヶ岳の穂先が素晴らしい。

12日 ルート「左方カンテ」

AM5:00起床。昨夜食べきれなかった、野菜たっぷり(角田さん自家製)マーボー豆腐味ベースの煮込みうどんが朝食。まずくはないのだが微妙な味。

荷物を整理し、AM6:15出発。昨日と同じコースを辿る。途中渡渉した所に地蔵菩薩が祀られている。笠ヶ岳の麓にあるお地蔵さんなので。これが本当の「笠地蔵」かな、などと思いながら手を合わせる。

今日は無風快晴。昨日より暑く感じる。

「左方カンテ」取り付きで、昨日懸垂下降中に合流した2人組の男性ペアと出会う。

角田さんはすぐに仲良しになる。誰とでも仲良くなれる角田さんが羨ましい。

彼らは神奈川県の山岳会「カモの会」に所属しているとのこと。そのうちの一人は2回目の登攀だそうだ。

1P目角田さんリード途中、例の「登山学校の卒業山行」の一人が怪我をしたようで、県警ヘリが救助にやってきた。目の下で繰り広げられる救助活動を眺める。

その後参加者全員が下山したようで、山全体が静かになる。多分これが通常の状態なのだろう。

このルートも3P目が核心部で、傾斜はないがプロテクションが取りづらく、オポジションの体勢になるので初見では相当な勇気が必要だろう。

4P目凹角のルートを2P登ると「注文の多い料理店」のルートと合流し、そこで終了となる。若干の待ち時間はあって、予定より若干時間をオーバーしたものの、昨日と同じルートで懸垂下降をして終了となった。

4左方カンテ5P目をリードする角田さん
4左方カンテ5P目をリードする角田さん

 

 

 

 

 

 

 

 

私も下りの歩きは早いと思っていたが、角田さんには敵わない。それでも駐車場までは約1時間で降りた。一足早く降りた角田さんは橋の下の露天風呂に浸かってくつろいでいる。

女性らしき人も見えたので写真は控えた。

正直言ってこの山行は相当疲れた。腰は痛いし脛には新たな傷を沢山創った。

5.9のルート位楽しく登れるようになれたら、と思う。何処に行っても何をやっても宿題は減らない。

【ルート図 注文の多い料理店】

ルート図 注文の多い料理店


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ルート図 左方カンテ】

 

ルート図 左方カンテ