中津川水系 魚野川本流完全遡行

長野・新潟・群馬の3県が隣接する秘境中の秘境を流れる大渓流の遡行記録

■日  付:2018年7月14日(土)~7月16日(月)2泊3日
■天  候:各日快晴
■メンバー:こば(L)、うえ、ささじ(記)
■装  備:標準沢装備、8×30mロープ、タープほか沢泊グッズ
■行  程:
・7月13日(金)20:45東京を出発、切明温泉駐車場にて前夜泊
・7月14日(土)5:15出発→8:15渋沢ダム→8:40入渓→12:45黒沢出合幕営(泊)
・7月15日(日)6:15黒沢出合出発→カギトリゼン→イワスゴゼン→スリバチゼン
→ヘリトリゼン→燕ゼン→庄九郎大滝→14:30南ノ沢出合幕営(泊)
・7月16日(月)7:00南ノ沢出合出発→北ノ沢経由→藪漕ぎ→12:30稜線→寺小屋峰→13:40寺小屋スキー場→14:10東館山山頂駅→(ゴンドラ)→14:30発哺温泉→タクシーにて切明温泉戻り15:45→秘境の宿<雪あかり>にて入浴→帰京

■記  録:
7月14日(土)4時に起床し前夜泊地の切明温泉雄川閣駐車場から車でゲートに向かう。車だとすぐだが、歩くと15分~20分程度林道を登ることになる。また車でゲートまで行く場合、駐車スペースには5,6台ほどしか駐車出来ないので釣り人が多い時期には注意が必要だ。環境の面でも車上荒らし等のリスクがあることも念頭に置く必要がある。

ゲート

魚野川の完全遡行に向けてのアプローチが始まる。林道を2km程歩くと右手下方に中津川に架かる吊り橋が見えてくる。これを渡るとすぐに高低差200mの急登が待っている。これがなかなか堪えるが登り切ってしまえば渋沢ダムまでほぼ水平な登山道になる。途中何カ所かトンネルをくぐるが、最後のトンネルは暗く長く天井も低いので心配ならヘッドライトをしたほうが良い。そしてここを抜ければ渋沢ダムである。

中津川に架かる吊り橋
綺麗な水平登山道

渋沢ダムに到着後右岸に渡り渋沢沿いへ進むと吊り橋が出てくる。吊り橋を渡り少し進むと左手に朽ちた小屋が出てくる。そこで沢装備を整え魚野川右岸より10~15mの懸垂下降の後入渓となる。古いロープもあるようだが経年劣化が心配なので持参のロープで懸垂下降したほうがいいだろう。いよいよ魚野川の遡行がはじまる。しばらく右岸へ左岸へと進むが、この辺りは川幅もあり場所によっては深く流れも強いので足を取られないように注意が必要だ。我々も時折3人互いのザックをしっかり掴み合いながら確実に一歩一歩渡る。進むと桂カマチというゴルジュ帯が現れる。透き通った水にゴルジュ、木々の緑に青空、絶景である。

桂カマチのゴルジュ帯
先の状況を確かめるリーダー

そんな絶景のゴルジュ帯だが、遡行中は日が当たらない時間が長くなり、魚野川の冷たさに体温が奪われていくので冷えに弱い人は注意が必要である。高沢の出合まで行く途中に大ゼンが出てくるが難しい滝ではないのでサクサク進みこの先にある今日の幕営地である黒沢の出合を目指す。12:45幕営予定地到着。早く幕営を済まして今日のメインイベントであるイワナ釣りをと心弾ませていたが既に先客が…狭い幕営地で隣に行くのも申し訳ないので我々は少し上流の河原に幕営することに。そして人気である故の問題で焚き木があまりない。釣りもしたいのであまり上流側で焚き木探しでガサガサ出来なく苦労した。そして1日目の釣りの成果だが、既に人が入っていることと私まったくの釣り素人ということもあり、こばさん3匹、うえさん1匹、私…0匹との結果に涙です。ですが何とか1人1匹分は確保してくれたので私も夕食のイワナにありつけることが出来た。感謝!

イワナを片手にポーズ

7月15日(日)4時に起床し6時出発。次の幕営予定地の南ノ沢出合を目指す。まず最初に出てくる滝が「カギトリゼン」だ。今回私が一番苦労した滝であり、一番寒かった場所なので特筆したく思う。2年前につりしさん、ハギさん、つかみさんの先輩方がカギトリゼンを超えたのは左のスラブ側のルートだった。自分の目で確かめてみても滑りそうで怖い。右側のルートは滝つぼから這い上がらなくてはいけなさそうなので私にはまず無理。やはり左側か直登か…ルートは登攀する人によって変わってくると思うが今回は直登ルートとなった。最初にこばさんがフリーで登り、あとの2人はトップロープで登攀した。

カギトリゼン
カギトリゼン登攀ルート

岩は大変もろくボロボロと崩れる。足をかける場所、手をかける場所を慎重に選ばなくてはならない。そして途中で悩めば悩むほど冷水が叩きつけてくる。私はやっとの思いで登ったが、後に続いたうえさんはサクサク登ってきた。2人ともさすがだ。私は日頃の訓練不足を実感した。これぐらいの滝はサクサク進めるようでなければ沢屋には程遠い。頑張らなくてはと誓う。次の幕営地まで更に「スゴイワゼン」「スリバチゼン」「ヘリトリゼン」「燕ゼン」「庄九郎大滝」と続く。それ以外にも小滝がたくさんあるので現在地の把握には気を付けたい。そして南ノ沢の出合に14:30ごろ到着した。2日目の行程もなかなかの長丁場だったので思いのほか疲れた。やはり1日目が高沢の出合泊まりだとかなりきつい行程になりそうだ。そのあたりの見極めや計画力もつけなくてはいけないと感じた。今日の幕営地には私達しかいなかったので沢から一段上がった快適な場所に幕営することが出来た。タープの設置、焚き木集めを早々に済まし釣りの準備に取り掛かる。昨日の汚名を挽回しなくてはならない。しかし先日より釣りに費やす時間が短い。時間はない気は焦る…そして結果は、こばさん5匹、うえさん1匹、私1匹!汚名挽回とはいかなかったが何とか自分の分は釣ることが出来た。そして自分で釣った魚を食べることも初めてである。これでも私にとっては目標達成であり嬉しさがこみ上げる。生涯忘れることはない思い出になったが写真は撮り忘れた…

南ノ沢出合で幕営

7月16日(月)5時に起床し7時に出発。本日は北ノ沢経由で緩やかな等高線に沿って寺小屋峰と赤石山間の稜線を目指す。北ノ沢は源流とは思えないほどの水量があり、ナメ床あり、いくつもの小滝ありでいつまでも綺麗な沢登りを楽しめる。

北ノ沢源流を遡行1
北ノ沢源流を遡行2

稜線にでる為に最後は藪漕ぎが待っている。地形図でみても緩やかな等高線だしたいした藪漕ぎにはならないだろうと考えていた。しかし状況は想像を遥かに超えるササヤブだった。魚野川を完全遡行する人もそれほど多くないのか踏み跡がほぼない。というより最後の詰めは踏み跡があってもわからないほど太く密集し背の高いササヤブである。こばさん、うえさん、私という隊列での藪漕ぎだったが一番後ろの私でも先に進めず遅れるという始末。2~3mも離れると前の人を見失う。一旦遅れると声を掛けてどの方向にいるのか確認して待ってもらわなくてはならないほど前方が見えない。足は挟まるしギヤ類は引っかかる。全身に太くの強い笹が突き刺さる…もう目指している稜線の位置がわからない。大苦戦であった。毎回こんな藪漕ぎだったら沢登りなんて出来ないと心が折れる。迷いに迷った藪漕ぎに費やした時間は2時間にも及んでいた。最後まで先頭で藪漕ぎをしてくれたこばさんに脱帽である。満身創痍で詰め上げた稜線は炎天下。寺小屋峰を目指す1時間弱の道のりは所々短いながらも急登である。藪漕ぎで疲労困憊の一行は何とか寺小屋峰に辿り着き一息入れる。気温天候にもよるが南ノ沢の出合から水は500mlあれば十分と思っていたがこれでは足りなかった。1リットルは担いで登ったほうが安心できる。あとは少し下り、登り返せば寺小屋スキー場にある岩菅山登山口まで下るだけである。下った先にあったのは一気に開ける寺小屋スキー場。7月中旬のこの時期はニッコウキスゲが見頃であった。景色も心も晴れた瞬間だった。

一気に開ける岩菅山登山口
見頃のニッコウキスゲ

ここから少し遠方に東館山のゴンドラが見える。炎天下ではあったが、ニッコウキスゲや景色を見ながらゴンドラ駅までハイキング。14:10東館山頂駅に着きまずは3人とも水分を補給した。ギリギリの状態だったことは反省しなくてはならない。あとは発哺温泉までゴンドラで下る。下る前に山頂からタクシーを呼んでおこう。発哺温泉まで約1時間かかるらしい。

今回お世話になった長電タクシー 0269-33-3161※変更になる可能性があるので注意

発哺温泉から切明温泉までタクシーで1時間弱。料金は1万1千円ぐらいであった。切明温泉にある雪あかりさんで日帰り入浴をすまし3日間の汗と藪漕ぎでドロドロになった汚れを流す。快晴の3連休最終日の関越自動車道は混雑が予想されたが、食事を済ませてから東京に向かったこともあり時間的に渋滞もなく東京に帰ってくることが出来た。

今の私の実力では自分がリーダーで魚野川を完全遡行することは不可能だと感じた。いつの日か自分がリーダーで再度魚野川完全遡行出来るように腕と感覚を磨いていきたいと思う。今回私を引っ張ってくれたこばリーダーとうえさんに感謝。私がリーダーを出来るようになることで恩返ししたい。

2018年7月 記録 ささじ