金木戸沢 双六谷 遡行

日程
2022年8月11日〜14日

メンバー
こば(L)、うえ、きよ(記録)

工程
【1日目】5:40双六ダム手前の駐車場より出発→9:12取水堰堤→13:00打込谷出会手前より入渓→15:30幕営
【2日目】6:30出発→8:10センズ谷出会→11:17キンチヂミ→12:30蓮華谷出会→14:41六千尺の滝→15:24幕営
【3日目】7:30出発→8:02双六谷→13:07双六小屋泊
【4日目】4:00出発→5:00双六岳→6:30双六小屋→9:02鏡平小屋→11:15ワサビ平小屋→12:28新穂高温泉下山

1日目

前日は道の駅奥飛騨温泉郷上宝で車中泊をし、双六ダム手前の駐車場へ移動した。

5:40

駐車場より出発し、ひたすら林道を歩く。

道中、アブの大群がコバさんを襲っていた。

うえさんはこの日のために秘密兵器のオニヤンマ君を持ってきていて頭につけていた。

効果はあったようでうえさんの周りにはアブは寄ってこなかったが、後に沢に流されていた。

林道を進む。

9:12

取水堰堤へ到着。

泳ぎに自信のあるPTはここから入渓するようだが、私たちはここは巻くことに。

取水堰堤

取水堰堤を過ぎ、沢沿いに進むルートを行くが、踏み跡が非常に不明瞭であった。

途中から道を見失い、1時間ほど藪漕ぎとなりようやく石積みの道を発見し、ルートに復帰することができた。

どいうやらルートよりかなり下部を歩いていたようだ。

沢から50mほど上部に廃道があるようだ。

13:00

打込谷出会の少し手前から沢へ降りると、壊れた吊り橋が見えた。

入渓準備をして入渓する。

写真は曇っているが、壊れた橋が奥に見える。

アルプスらしいエメラルドグリーンの沢に白い巨石が映える。

アルプスの沢のスケールに圧倒される。

所々急流を渡渉したり、滝を高巻いたりしながら進む。

私はこのような大きな沢の遡行は初めてだったので大きな渡渉や泳ぎを非常に楽しめた。

青空もちらほら。

15:30

打込谷出会とセンズ谷出会の中間のぐらいの位置に良さそうな幕営適地を発見し、ここで1泊する。

夕飯はこばさんが美味しい肉団子スープを作ってくれた。

生姜やスパイス入りの肉団子だったのでとても温まった。

幕営地

2日目 6:30

朝から天気は曇天であったが出発する。

この日は台風が近づいていたこともあり、小雨と曇天を繰り返していた。

8:10

センズ谷出会

小雨の降るセンズ谷出会

11:17

多分この場所が核心部と言われるキンチヂミ。

荷物を担いだまま滝の壺へ向かうも水量が多く上手く取り付けない。

最初は滝壺の方から近づくも取り付けない。

うえさんは写真より右側のチムニーに取り付いていたが苦戦していたようだ。

私は荷物をデポし、更に右側の洞窟のような場所から突破を試みる。

私にとってはかなり窮屈であったがなんとか這い出る。

その後全員分の荷物を引き上げ、コバさんはチムニー部から、うえさんは洞窟から突破した。

12:30

蓮華谷出会

ここを越えるころには水量もかなり減り、渡渉や水線突破も容易になってくる。

蓮華谷出会

14:41

六千尺の滝は右岸に倒れかかっている大木を上手く利用し突破する。

右岸の木を使って登る。

15:24

六千尺の滝から40分ほど歩いたところに巨大なスペースの幕営適地を発見し、1泊した。

この日はうえさんが美味しい麩チャンプルーを作ってくれた。

明日には沢を突破できそうということで、私の担当分の食糧もここで解放する。

焼き鳥缶親子丼と豚なし豚汁を作成した。

夜は雨が降ったり止んだりで天気は安定しなかった。

3日目 7:30

幕営地を出発

この日は晴れ間が覗くことも。

8:02

双六谷に入り、ここから一気に水量が減り岩のぬめりが酷くなる。

ラバーソールだとツルツルとって大変だった。

フェルトサンダルがあれば活躍したかもしれない。

青空に飛行機雲が映える。
たまに曇る。
蝶と双六岳(手前)

しばらく進むと(2400m地点ぐらい?)沢も枯れ、多少の藪漕ぎをしながら進む。

木をかき分ける程度の藪漕ぎ

2470mぐらいになると草原が広がりだし、次第に双六小屋が見えてくる。

背の高い植物は次第になくなる。

綺麗なお花畑を土足で踏み荒らすことに心を痛めながらも双六小屋に詰める。

お花畑の先の双六小屋

13:07

双六小屋に到着。

予約はしていなかったが空き状況を聞くと、個室に宿泊することができた。

4日目 4:00

日の出時間が5時ごろとのことなので4時に双六小屋を出て双六岳へ登った。

全体的に曇ってはいたが、太陽が出てくる部分のみ雲がなく、無事ご来光を拝むことができた。

槍ヶ岳とご来光

ご来光を拝んだ後は一度小屋へ戻り、朝食をいただき、そのまま新穂高温泉へ下山した。

ウメコバ沢

写真(18)_CSの2段滝(F6)

(S)銅親水公園駐車場~松木川~ウメコバ沢(泊)~中倉尾根~中倉山登山口~(G)銅親水公園駐車場

■日  付:2022年7月2日(土)~7月3日(日)1泊2日
■天  候:7月2日(土)快晴→小雨  7月3日(日)快晴→雷雨
■メンバー:こば(L)、うえ、ささじ(記)
■装  備:標準沢装備、8×30mロープ、タープほか沢泊グッズ
■活動概略:
合計行動時間:約12時間/行動距離:16.2km/上り/下り:1240m/1248m(累計)
<1日目>銅親水公園~ウメコバ沢F4(泊)
行動時間:4時間50分(内休憩1時間30分)
距離:7.1km  上り/下り555m/126m

<2日目>ウメコバ沢F4~中倉尾根~中倉山登山口~銅親水公園駐車場
行動時間:7時間(内休憩1時間50分)
距離:9.1km  上り/下り 685m/1122m

■記  録:
7月2日(土)※1日目<5:00>
東京を出発、首都高、東北道を経て7:30に銅親水公園(あかがねしんすいこうえん)駐車場に到着した。
幸い車1台が駐車出来るスペースはあったが、この時期早い時間から駐車場は満車になるようなのでご注意願いたい。ちなみに乗用車約30台、バス4台分程度駐車出来る広さである。

1日目<8:30~11:00>林道歩き
沢靴を履いて銅親水公園駐車場を出発。ゲートをくぐり松木川沿いの林道を歩く。
今年は異例の速さで梅雨明けし、すでに40℃を超える気温を記録した地域もある。
この松木川沿いの林道も例外ではなく、しばらく日陰の無い林道が続き小休憩しながら進む。初日の核心はこの猛暑のなかの林道歩きであったと遡行を終えた今でも感じている。

写真(1)_ゲート

写真(2)_林道
写真(2)_林道

しばらく歩くと第2堰堤が現れる。我々は左側から堰堤を越えた(右側からも越えられるかも。未確認)。堰堤左側はロープも張っており難なく超えることが出来た。

写真(3)_第2堰堤
写真(3)_第2堰堤

写真(4)_堰堤を左から超える
写真(4)_堰堤を左から超える

堰堤を越えた後、対岸に戻り廃林道をしばらく歩く。

写真(5)_対岸へ戻り林道へ
写真(5)_対岸へ戻り林道へ

この辺りからは樹林帯を歩くことが出来る。
ウメコバ沢出合いに到着するまでしっかりした踏み後があるが、所々に崩落した場所があるので注意が必要である。

写真(6)_しっかりした踏み後がある
写真(6)_しっかりした踏み後がある

1日目<11:00>ウメコバ沢出合いに到着
出合いがいきなり10m程度の「F1」である。ここで本格的な沢支度をする。
岩登り要素が多いとの情報だったので、今回は3人ともラバーソール。
結果正解だったと感じている。

写真(7)_ウメコバ沢出合いF1
写真(7)_ウメコバ沢出合いF1

右側にロープが張ってあるラインを各々フリーで登っていく。ホールドはしっかりしている。しかしそれなりに高度があり出だしということもあり緊張しながらの登攀だった。

写真(8)_F1
写真(8)_F1

F1を登るとすぐさまF2?が現れる。直登はせず右側の草付きを高巻く。

写真(9)_F2
写真(9)_F2

この後も小滝が続くが登れる小滝なのであえて濡れながら超えていくスタイルでクールダウン。
しばらく進むと前方遠くにF3の大滝が見えてくる。

写真(10)_F2を越えるとF3が見えてくる
写真(10)_F2を越えるとF3が見えてくる

1日目<12:20>F3に到着

写真(11)_F3
写真(11)_F3

写真(12)_F3水花火
写真(12)_F3水花火

F3は30m程度の滝で水量もそこそこの大滝だが、水が滝つぼに轟音とともに落ちる瀑布ではなく、流水がほどよく岩にあたり日が当たれば綺麗な水花火が拝める静かに落ちる美しい滝である。滝に打たれてクールダウンもできる。ここでしばらく撮影タイムを兼ね大休憩をとった。

やはりF3も直登はできない。右側に沢筋がありそこを少し登り、途中からF3右の岩壁を巻く感じで藪に入り高巻き崖上に出る(黄色のライン)。藪中はよく見ると薄いながら踏み後があるが経験とルーファイ力、そしてやはり感が必要。F3を高巻くとすぐそこにはF4が現れる。

1日目<13:20>F4に到着

写真(13)_F4ルート
写真(13)_F4ルート

F4は50mほどの大滝である。
この滝もF3同様に落差がありどっしりとした大きな滝だが、そこはかとなく優しい感じのする滝であった。これまた美しい。また振り返ると今まで登ってきた壮大な景色が楽しめる。

今回はこの辺りを幕営予定地として考えていた。しかし開けた平の地面は少なく各々が分かれて平の場所で寝ることとなる。まぁいつものことのような気がしたが…
薪は太いものは少ないが、乾燥した薪は不足しない程度に集まった。枝沢はないので本流の水を飲料水として使用することとなる。お腹の弱い方はご注意を。

本日は夕方から雲が出始め小雨が降った。雨宿りするほどの雨ではなかったが雨具の上だけ着ておいしい食事と焚火を楽しんだ。焚火を前にしていると些細なことは気にしなくなる。焚火の魔力か。結局雨はひどくなることはなく、夜には満天の星空を楽しめた。

7月3日(日)※2日目<6:30>F4を出発

他の記録ではF4右側のルンゼ(黄色ライン)から高巻いている。しかし今回我々はテンバ(画像左下)から岩壁を巻くような(赤色ライン)ルートで高巻きを試みた。途中からはルンゼルートと合流することとなる。
赤ラインルートは壮大な景色を眺めながら登ることの出来る解放感のあるルートだ。若干岩登り的な要素が含まれるが技術的に難しいことはなく普通に歩ける場所が多くあるが高度感がある。ルート中には植生もあり高度感はあるものの安心して登ることが出来るルートだったが油断は禁物である。

写真(14)_F4高巻きルート
写真(14)_F4高巻きルート

赤ルートを高巻き中、左側の岩壁に「M字」形の門のような岩が見える。このM字門の先はルンゼルートに合流することが出来るがかなりリスクのあるルートであった(自分のみ確認)。無理して行くルートではないのでM字の門が見えても高巻くルートはまだ先であるので注意すること。

写真(15)_M字門はくぐるな
写真(15)_M字門はくぐるな

高巻きは黄色ラインにしても赤ラインにしてもF4より高い高度を高巻くことになる。F4直上あたりは高度感のあるトラバースであるが足場はしっかりしている。

写真(16)_F4直上トラバース
写真(16)_F4直上トラバース

このトラバースを進むと途中でF4の落ち口に降りることが出来るがF4のすぐ上に滑りそうな滝(F5?)がある。このままトラバースを続けると一緒にF4上のF5?も巻くことが出来る。

写真(17)_F4、F5直上トラバース
写真(17)_F4、F5直上トラバース

2日目<7:10>F4、F5を高巻き完了

F4、F5は40分で高巻くことが出来た。予定していたより早く、また危険なところもなくF4の高巻きも大成功だったと思う。リーダーのルーファイに感謝。

F5を巻いたところで沢に降りることが出来る。
降りた先にCSがあるF6が見える。遠目ではわかりにくいが2段の滝である。F4の高巻きが少し早かったこともあり、ここで20分ほど写真撮影タイムを取ることにした。

写真(18)_CSの2段滝(F6)
写真(18)_CSの2段滝(F6)

写真(19)_F6手前で休憩するリーダー
写真(19)_F6手前で休憩するリーダー

2日目<7:30>F6登り始め

休憩も終わりF6を登り始める。1段目は右側を登る。

写真(20)_CSの2段滝(F6)
写真(20)_CSの2段滝(F6)

2段目のCSはくぐれるかなと期待していたが、登ってみるとくぐれないことが分かった。CS横を登ろうにも岩が立っていることとヌメリが強そうで少し厳しそうだ。そこで右側を見るとルンゼがあるのでそこを登ることとする。一応ホールドもしっかりしているので問題はないかと思うが、念のためリーダーが登ったのちロープを出してもらった。
今回の遡行中、最初で最後のロープの使用であった。

写真(21)_CSの滝2段目
写真(21)_CSの滝2段目

写真(22)_CSの滝落ち口
写真(22)_CSの滝落ち口

このF6をもってウメコバ沢の主要な滝は終了する。
これからはしっかり地図読みしながら1615mあたりのコルを目指して詰め上げる。この山域の特徴は基本的に岩稜帯である。よってひたすら斜面を詰め上げるというよりは、一つ一つは高くないが岩壁を4足歩行でグイグイ登って高度を上げるといった岩登り的な感じで詰め上げることとなる。浮石も多くガレ場もあるので注意すること。

写真(23)_詰めのガレ場
写真(23)_詰めのガレ場

グイグイ詰め上げるとコル直下付近からは植生が増えてくる。時間的に気温も上がり、日差しも強くなってきた。歩きやすい場所を求め植生の中を積極的に進むこととなる。シカの糞が増えてきたら詰め上げ終盤で目標のコルは近い。

2日目<9:30>1615m付近のコルに詰め上げ

写真(24)_1615m付近
写真(24)_1615m付近

疲労と暑さでヒイヒイ言いながらやっと予定していた1615m付近のコルに詰め上げることが出来た。そしてそこには今までのモノクロで岩々した景色が一変し、緑美しいカラーの稜線が待っていた。日光付近の山々は割と近場で、尚且つ低山でありながら美しい景色を見せてくれるので自分的には大好きなエリアである。

写真(25)_1615m付近のコルにて
写真(25)_1615m付近のコルにて

写真(26)_コルから出合いがみえる
写真(26)_コルから出合いがみえる

しかし先程から気になっていたのだが、雨は降っていないがゴロゴロと雷鳴が聞こえる。嫌な予感。そんな中、とにかく休憩は後回しにして近くの樹林帯の下まで移動し沢装備を解除する。

写真(27)_稜線風景
写真(27)_稜線風景

沢装備を解除し少し休憩の後中倉山方面へ下山をはじめるがやはり来た。「ゴロゴロ」ではなく「ガラガラガラ!!」と近くで落ちている音が聞こえる。この中倉尾根は樹林帯がない見通しの良い稜線であるため、雷が落ちるとすれば高確率で我々に。いったん沢入山ピーク下の樹林帯に入って様子を見ることに。若干雷が落ち着いてきた頃合いを見て下山を再開したが、標高もだいぶ下がったところで雨も強くなりまた雷も近くでなり始めた。結局その日はずっと雷雨。なんだか沢中より濡れた2日目であった。

写真(28)_おまけ 孤高のブナ
写真(28)_おまけ 孤高のブナ

<13:15>下山、銅親水公園駐車場着

■感想

今年2回目の沢登り。今回は沢登り要素よりクライミング要素が強い沢だったと感じている。何といっても初日の暑さには参った。雨が降らなくても林道歩きには日よけのための傘が必要だと思った。これまた勉強が出来た。ウメコバ沢は決して大きな沢ではない。しかしそれ故に予習と現地での地図読みをしっかりしないと全く違った沢に入り込み、手詰みになってしまう可能性も感じた。何年何回と沢登りを続けてきたが基本の重要性を再確認できた沢だった。

こばリーダー、うえさん今回も大変お世話になりました。

奥穂南稜

日程

2022年5月3日~5月5日

メンバー

コバ(L)、ウエ

1日目

上高地〜岳沢
東京を5:00に出たものの、小仏トンネルからの渋滞が既に調布辺りまで伸びていて上高地に入れたのは12時過ぎ。
岳沢には15時ごろ着。
テントを張り早速取り付きの偵察に向かう。
記録でよく見るルンゼの入り口は数日前の雨で雪が剥がれ落ち、ルンゼの奥にチムニー状の壁が剥き出しになっている。ルンゼに上がるアプローチとしてはここを直登するか、左の斜面にあるバンド状をジグザクにたどるか。
足元がスノーブリッジになっていて、今はそれ以上近づけないため、本番判断とした。
南稜登攀後岳沢に戻るルートとして考えていた前穂高沢も上部まで見えるわけではないので、明日の判断。

奥穂南稜全景:上高地から奥穂南稜全景(赤線は今回のルート)

取付き偵察:南稜取付きルンゼ(実線が実際に登ったルート)

この時間で足元の雪はかなり腐っていて、今日よりも気温が上がる明日にどうなっているか若干心配になりながらテントに戻った。

この計画、計画書では荷物を担いで登り涸沢に抜けることとしていた。しかし岳沢まで登ってきて思ったのは、テン泊の荷物でやろうとするならもっと徹底して減量しなければ我々の体力では無理だと気付き、2つのオプションを持つことにした。
①吊り尾根から前穂高沢下降で岳沢に戻る
雪が安定していて、さらに吊り尾根を通過する時間が必要。
②涸沢に降りて小屋泊にする。
安全なのは②だが、テント回収に岳沢をもう一度登らなければならない。
さあどうなることか。

2日目

4時発。取り付きには4:30ごろ。
先行パーティーがすでに前を歩いている。どうやらルンゼの右(滝沢側)の尾根から取り付くようだ。
スノーブリッジを避けてチムニーに近づいてみるとチムニーの右側の壁が比較的簡単に登れそう。コバがまずはノーロープで登ってみる。ホールドもしっかりあり難なく登れたが、残置ピトンもありロープを出すのが正解か。上は傾斜が緩いがところどころベルグラが張っていていやらしい。落口から少し上がったところにあるピトンを使ってフォローにロープを出して登ってもらう。先に小滝状の岩場が見える。

チムニーの右壁を越える

小滝を越えるところまでウエのリード。右岸側のブッシュ沿いを巻き上がり、小滝上に出る。ここで一旦ロープを仕舞う。
ブッシュを使いながらルンゼを進むと途中から雪壁となる。朝早いので雪は締まりアイゼンがよく効く。快調に登るとルンゼは二手に分かれ、我々は右のルンゼにルートをとる。先行パーティーはそのまま直上するルートを登っていくが、その後いわゆる下の岩壁で合流することになる。
右のルンゼは途中雪渓が切れている。ハイマツやブッシュを使いながらルンゼ状を抜けると再び雪壁登りで岩壁の基部へ。下の岩壁の右に続くハイマツ帯をトラバースしていくと、再び雪稜。右手は滝沢に向かって切れ落ちている。左の大岩に沿うようにして登ると、上部の雪渓が雪庇の壁状に前方を塞いでいる。すでに先行パーティーの影はなく、雪庇を切り欠いたトレースを残してくれていたのでありがたく使わせてもらうこととして、ここでロープを出す。雪庇状の高さは3mほど。まだ雪が締まっていてピッケルもアイゼンもよく効くので難なく乗り越せる。乗り越したところでスタンディングアックスでビレイしウエに登ってもらう。

大岩に沿って雪壁を登る1

大岩に沿って雪壁を登る2

先にトリコニーI峰の取り付きと思われる岩場が見えるので、ロープは仕舞わずスタカットで進む。岩場に入って1ピッチ、記録でよく目にする螺旋状のチムニーに到着。入って右回りに登るとチムニーの上に出るので、さらにチムニーを跨いで先に進むと、トリコニーI峰手前の小岩峰の基部になる。チムニーを跨ぐところで勇気がいる。
小岩峰に登る岩は記録によってはトリコニーの核心とされていて、凹角状4mほどの岩に残置ピトンが1本、なんとカラビナ付きのスリングがぶら下がっている。また、この岩の左奥を覗くとI峰のピナクル手前のコルに簡単に行けそうにも見える。どちらにしようか悩んだ末、リードするウエの判断は核心アタック。1段上がった後がホールド・スタンス共に細かくなり、アイゼンでの登攀では少々厳しく感じた。ここは左に巻くのが正解か。雪が多い年であればもっと手前から左に巻いて雪壁登りでコルに出るのが一般的なようだ。

トリコニーⅠ峰へ続く岩場の取付き。奥にモノリス岩が見えている。

らせん状チムニー。中に入ると右に折れ、右壁を登ってこの上に出る。

小岩峰へのルート。ピトンが一本

ちょっとだけ懸垂してⅠ峰のコルへ(手前のピナクルがⅠ峰、奥はⅡ峰)

登ってしまった岩峰からちょっとだけ懸垂してコルへ。I峰とII峰の間のナイフリッジを期待していたが、雪が少なくハイマツの稜線が剥き出しになっていた。II峰から先はほぼ雪稜で、Ⅲ峰を左に見るあたりでロープを仕舞う。Ⅲ峰は通過しない。

Ⅰ峰からⅡ峰へ。雪のナイフリッジはなかった。

上部からトリコニーを見下ろす(左からⅠⅡⅢ峰)

この先は雪稜と易しい岩場が交互に現れ、特に難しいところはないが、長くて疲れる。
途中一箇所今朝あったような簡単な雪庇状の乗り越しがあったが、今回はノーロープで通過できた。
南稜の頭についた時には11時半になっていた。

雪庇状の雪壁を越える。

雪と岩のミックスを丁寧に通過する

南稜の頭

南稜の頭から奥穂を見上げる

出発前のオプションの①は、想定より時間がかかり気温が上がったため雪が腐ってきていること、トリコニーのあたりの滝沢支流で小さな雪崩れがあったこと、2日前に雪が降ったことなどを考慮して危険と判断し、涸沢に降りることにする。これで岳沢をもう一度登ることが確定してしまった。
南稜の頭で岳沢小屋に戻らない旨電話し、併せて涸沢ヒュッテの予約をとった。便利になったものだ。
南稜の頭から奥穂は15分ほど。
穂高岳山荘経由で涸沢着が15時ごろであった。

3日目

岳沢に寄って下山。

タイムレコード

4:00 岳沢テンバ発
4:30 南稜ルンゼ取り付き
5:50 下の岩壁
8:00 螺旋状チムニー
10:00 トリコニー通過
11:30 南稜の頭