登ってやったぜ 常念岳(常念岳・蝶ケ岳)
人 見 邦 明
期 日 1997年10月18日(土)〜19日(日)
メンバー 人見邦明
タ イ ム 18日(土) 三股(9:30) − 前常念岳 − 常念岳山頂(14:15) − 常念小屋
19日(日) 常念岳(7:00)− 常念岳 − 蝶槍(9:30) − 蝶ケ岳ヒュッテ − 三股(13:30)
今年もあと少しとなりました。この一年を私なりに反省してみると、失うこともあったが収穫多い年だったと思います。まず、この東京北稜山岳会に参加できて、かなり意欲的に参加したことで生活が変わったことがあげられます。雪の春山登り、面白い沢登り、そしてロッククライミングも少しばかり経験し、新しい楽しみも増えました。そうすることで、この会に自分が居る小さな場所も確保できたようにも思えて嬉しくなります。自分の世界が広がり、48才になる私がかなり若返りできた年となったように思います。実をいうと、自分が楽しめる環境を求めて入会したわけで、その意味では満足のいく一年となりました。皆さんありがとうございます。
残念なこともありました。夏合宿ではCLが犬に噛まれて上の廊下が会津中門沢に変更となり、秋合宿のつもりでトレーニングを積んだ前穂北尾根が台風で中止となり、さらには勤務校の登山部の槍ケ岳合宿も台風で流されて八ケ岳に変更となりました。そして私が計画した秋の五竜〜鹿島槍縦走までも吹雪で途中下山を余儀なくされるなど、今年のビックプロジェクトはほとんどがつぶれてしまいました。自分が参加したからと出しゃばるつもりはありませんが、悪天候を呼び寄せてしまう疫病神なのではと申し訳なく思ったりもしています。
今シーズンは不作だわいと内心少々クサッておりました。そこで、ベストシーズンの鹿島槍を逸した無念さを挽回しようとその翌週、同じ北ア山域の蝶・常念に起死回生のリターンマッチをしかけたのです。自分に課したテーマは「テメエのプラン通りの山行をしたい」。同行する予定だった坂井さんは、惜しくも多忙のため参加できませんでした。
久しぶりの単独行。はたしてそれは素晴しすぎる天候に恵まれ、素晴しすぎる展望に恵まれ、それはそれは素晴らしい山行となりました。幸せ薄い私の今年ベストワンの山行となったのでございます。一週間前に吹雪撤退した五竜岳の無念も、果たせなかった秋の前穂合宿も、あるいは叶えられなかったあの方とのデートも、恨みつらみもみーんなおしなべて晴らすことが出来たように思えます。自分の思う通りに登ってやったぜ、常念岳。
コースタイムを余裕をもって登れる嬉しさ、屹立して連なる北アルプス名峰の山並み、常念小屋から見る満天の星空、太陽が昇るための壮大な儀式..さらには冠雪した槍穂の手にとれるような大パノラマ。あまりの嬉しさに報告することさえ憚られるほどですがマイプランの素晴らしさをあえて報告します。@車使用のルートとして黄金の三角形をなして理想的。A余裕ある初日に主目標の常念岳を攻め、計画を変更したソツのなさ。Bコースタイムをかなり短縮でき、まだ衰えない脚力と気力。C食料計画の入念さ、特に持参した酒量の絶妙さ。D無口な私が蝶槍で写真を撮ってもらったこと。さあ、どうだ。
だが、私だけがこんなに楽しんでいいのかしら。皆様に迷惑をかけてばかりいる私が失敗なしに下山したとあっては皆様に申し訳がたちません。完全無欠の私にしてもそこは人の子、些細なミスも正直ありました。他人の不幸は自分の幸福。それを報告して皆様の羨望を少しばかり和らげましょう。
その1、箸を忘れてラーメンをフォークで食べた。
その2、太田胃酸を忘れて胸やけ。もう一つありました。
その3、テントのポールを忘れて小屋泊まり、装備の5分の3を未使用のまま縦走。
ほら、些細なことでしょ。