年末年始の山遊び

人見 邦明

@ 12月25・26日 雲取から鷹の巣へ尾根歩き。職場の仲間6名と小屋泊まりの忘年山行。
A 12月31日 摩耶山(1017) 日本国(555) 帰省先の山形県鶴岡市から車で単独日帰り。
B 1月1日 金峯山(456) 同じく鶴岡市内の里山へ初詣。


新年あけましておめでとうございます。昨年は色々な山行に参加させて頂きありがとうございました。今年も楽しく遊びましょう。宜しくお願いします。

  さて、皆さんが冬合宿に頑張っておられる頃私がぬくぬくと寝たきりぐい飲みを送っているると想像される方も多いと思います。が、半分は当たっていますが半分は違います。私は飲んだくれセンセーなのではありますが、現役の山岳会員なのでもあります。冬の槍ケ岳とはまいりませんがこれでも山には登っているのです。

 新年のご挨拶として、年末年始の恒例となっている私の山遊びを報告させて頂きます。

@まず、年末の山行について。職場で忘年会山行を企画しました。宴会部長を任じる私は遊びのたくらみとなると仕事そっちのけで頑張ります。山行のお知らせを配ってまわると意外にも多数の人が賛意を示しました。結局6人が参加しました。六十歳近い理事と国数英社理の教員。コースは鴨沢から雲取山、雲取山荘で一泊、石尾根を経て七つ石、鷹の巣から峰定。初心者が多いが、積雪も少なく空いていた山荘ではしたい放題の楽しい忘年会となりました。来年は雲取避難小屋か、真新しい七つ石避練小屋で飲みたいねなどと言いながら下山しました。

  さて、私は車で帰省するときは必ず登山用具一式を持って出掛けます。妻の実家のある山形県鶴岡に帰省して月山や鳥海山にも登りました。私はムコ殿なので年末は何もすることがありません。必然的に飲んだくれ酔いつぶれ、ああこりゃこりゃ..いや、せっかく雪国に来ているのだ、冬山を目指せと山岳人としての矜持が二日酔いの頭にもたげます。かといって、厳冬の月山の力量もなし、冬の鳥海山なんて寒すぎてとんでもありません。そこで「山形百名山」で知っている魔耶山(まやさん)に行くことにしました。朝日連峰が庄内平野に落ちつくその端に位置し、日本海が一望できるブナがきれいな里山です。

 A大晦日。コンビニで握り飯と水を買って、温泉町で知られる温海町から一番楽な尾根沿いのコースを登りました。今年が暖冬とはいえ上部には雪がついています。山道には兎をとる針金の輪が仕掛けてありました。なるほど里山です。こんな日にこんな所を歩く人はだれもいません。コースはしっかりしているので迷うこともなく山頂に着きました。ガスで展望はきかないが、だれもいない山頂でひとり納得。積雪20センチ、まごうことなき雪山なのさと自分にいいきかせ、軽アイゼンをつけて楽しく下山しました。

登ったついでに山のおかわり。前から気になっている山に向かいました。日本海から突き上げる山並み、山形と新潟の県境をなす稜線にその山はあります。その名も日本国。なんとかヤマ、かんとかダケという名を冠せず、ズバリ日本国という珍しい山名なのです。登山道入口にでかい看板で「日本国」と書いてあります。つづれ折れの登山道には「ゴーゴーゴー、なんとかフェスィバル」と派手が看板が残されていました。この山の標高555 メートルにかけて地元青年団が村おこしのイベントをしてのでしょう。40分もすれば頂上。環境庁が作った立派な避難小屋もあります。展望台の櫓が組まれていて国旗掲揚のポールがついていたのには笑いました。まさかあのポールにユニオンジャックを掲げるわけにはいくまい。山名の由来が書いてありますが、ムズカシー。ともあれこの山は日本国なのです。四時過ぎ曇天。夕闇せまる日本海がかすかに見えました。家に帰り風呂ビール。俺は日本国を征服したんだぞと家人に自慢してもとりあってもらえませんでした。

 B山歩き後の酒がきいて年越しそばを食べないまま元旦の朝を迎えました。元旦に私が行くところは市内の金峯山神社に決まっています。中宮神社までは車でいけますが、私は山頂神社まで登ります。雪のついた参道を登るにはそれなりの支度と体力が必要で、登る人は数えるほどしかいません。6年前から私はこの元旦山行を続けているのです。

 何時何処で誰が何を何故如何に。元旦の午後一時頃から先に着いたものが。山頂神社の脇にある破れかけた集会小屋に入り土間に焚き火をして。地元の佐藤さんという畳職人、私と同年齢独身男性と。6年前に出会いその翌年から恒例になり。元旦の山に登り、神社にお参りし、山頂から尾根を15分ほど行った所にある水場で水を汲み。その水を使って小屋でラーメンを作り、祝杯をあげ、焚き火を見つめながらこの一年を思う。

 一年で初めて使う水のことを茶道で「若水」といいます。元旦に私たちがとる水は本当の最初の一滴、正真正銘の若水なのです。山に登り、若水をとり、焚き火を作ってあれこれと話すことが、私の登り初め。いってみればこれが私の初詣でなのです。
 
 より激しくより厳しくより高きを志向するのがアルピニズムだとしたら、私の山歩きはそれとはかけ離れた里山遊びといえます。どこでも山あいをふらついていれば、私はそれでいいのです。今年もよろしくご指導ください。