リハビリ山行の報告 〜 ご同行の皆様に感謝! 〜
中村 孝
その1 西沢渓谷・行者谷
―― 中流部は綺麗だが最後のツメが長すぎる? ――
8月15日(土) 天候 どんよりとした曇り
同行者の皆様 大久保純さま、水野二朗さま、村松伸章さま
7月にバットレスで事故って以来ほぼ3週間にわたって通院をしていた私がお医者様より「もう、来なくていいよ」と言われたのが8月12日。大雨の為当初予定した「双六谷」は諦め再び東沢定着になったのでリハビリを兼ねて合宿に参加することにした。初日の「鶏冠谷左俣」はまだ右腕が思うように動かないのでパス。しかし、次の日はどこか短い沢に行きたくなって西沢渓谷「行者谷」なるところに行くことにした。ものの本によると「訪れる人も稀な、ひっそりとした静寂の谷。人気度☆☆☆」とかあったので大久保隊長、二朗さん、村松さんに同行してもらい少しの不安を胸に出発する。ちなみに坂井社長と人見部長の重役コンビは本日を安息日にあて、西沢渓谷散策後に食料の買い出しに行ってくれるそうだ。(「ステーキが食べたいなあ…」と言っておいた。しかし、三富村のスーパーにはなかったので「カツ丼」を食べさせていただきました。美味しゅうございました。この場を借りてご両人には改めて感謝申し上げます。)
さて、人気度☆☆☆の行者谷だが、コメントは控えさせていただきます。もし、私も行ってみようと思っている等と聞かれたら遡行したみなさんは一様に複雑な顔をすることでしょう。口の悪い誰かさんは以下のような感想を述べていました。
「中流部はエメラルドグリーンの水が美しく随所に見事な釜やトロ・滝を配置し素晴らしい。最後の五段の滝までは、巻き道もしっかりして楽しめる。ただ、五段の滝を越えてからのツメが長くて2時間以上かかってしまうのが難点か…。」
追記 隊長が悪いんじゃないからね!(中村た) これで沢登りに完全に止めを刺された(水野)
その2 丹沢・原小屋沢
―― 沢登りじゃなくて滝を巡る観光旅行 ――
9月3日(日) 天候 どんよりした曇りに雨少々
同行者の皆様 人見邦明さま、加藤まゆみさま
怪我した前腕は筋肉が落ちたもののほぼ完治したが右腕のつけねと肩に痛みが残っている。毎日ストレッチをしているのだが進展があまりないので以前通ったことのある整骨院に行き、グキグキやってもらった。曰く「右肩の関節部分がちょっとズレてる…、それに右肩の筋肉が堅くなっている。」とのことでした。それ以来今日まで学校帰りに週2〜3回通っています。でも、まだ痛い。
それでも少しは良くなってきたので夏合宿に参加できなかった「加藤ねーちゃん」を誘って沢登りに行くことにした。集会で計画を話すと人見部長も参加を表明。しかも車を出してくれるとのこと。車が出るんなら、と言うことで原小屋沢に決まる。思えば私が学生の頃「原小屋沢って綺麗らしいよ…」と何度か聞いたことがある。それに大久保隊長から丹沢観光センターに戻ってくる道もある、と聞いていたのでこの沢に決定した。
で、沢はどうかというと水量が平水時であれば「中流部の岩床が美しく、小滝やナメを踊るように流れる様は東北の奥入瀬渓谷に似ている。」と絶賛されているように美しい沢なんじゃないかと思います。が、今回は何たって水量が多すぎる!。写真で見たのと比べると3倍以上はあるんじゃないんでしょうか…。おまけに8月下旬の大雨で何カ所か崩壊している。3段20mの滝の巻き道も途中で崩壊してて、シュリンゲの掛けてある懸垂点までたどり着くこともできない。ただ、もの凄い水量のためそれぞれの滝はそれはもう見事な眺めでした。だから今回は沢登りでなく滝見物に来たんだと思い直すことにしました。
最後に1:1の二俣があり、沢床の低い左に入ったところ変なところに出て1時間ほど道探しを楽しむことができるというオマケまで付きました。
まあ、沢登りは公園のジャングルジムのような全身運動のため、リハビリの目的も十分に達することができたのでめでたしめでたし…。
その3 越後・平ケ岳
―― 山頂の高層湿原も檜枝岐のそばも素晴らしい! ――
9月12日(土)〜13日(日) 天候 2日とも快晴
同行者の皆様 人見邦明さま、中村優さま、加藤まゆみさま
まだ、右肩辺りが痛むのでクライミング開始はもう少し先に延ばそうと思っている私は冬の剱に向けてしばらくの間は歩きに専念することにした。でも、歩くのでもやはり面白味のある山に行きたい、いつもいつも高尾山じゃあ…、と思っていたところ集会で9月第2週の土日に車で平ケ岳に行くという計画が発表された。数年前の5月に尾瀬・山の鼻から平ケ岳までスキーで行こうとしたがスキー技術の未熟さで(今では少し巧くなった?)大白沢山までで中退している。真っ平らな山頂に湿原を配置している素敵な山なので季節は関係なく是非行きたい!と参加させてもらった。
登山口より頂上まで登り6時間30分、下り4時間30分というのがコースタイム。そのため朝東京を出発して昼過ぎに現地着。3時間ほど登った「台倉山の水場」で1泊し翌日頂上往復後、撤収して下山という計画だそうだ。
12日の究めて朝早い6:45三ノ輪に人見部長が迎えに来てくれる。その後赤羽で中村まー、加藤ねーちゃんを拾い東北道を西那須野まで快調に飛ばす。8月下旬の大雨で塩原辺りも工事中の箇所が幾つかあった。峠を越えて国道352に出てからは1本道だが檜枝岐、伊南の分岐のちょっと手前に「檜枝岐・木賊温泉」の標識があり、左折してしまい10分ほどタイムロス。3年前に大久保隊長と来たときも間違えてしまったのに、またしても間違ってしまい「あの標識は良くない!」と八つ当たりする。
登山口には大きな駐車場があるが駐車スペースはすでに皆無。道の脇にも何台も車が止めてあり、わが人見号は5分ほど戻ったところに駐車する。
出発は13:05。最初の緩やかな道を行くと下台倉沢を横切る地点に出、水の補給ができる。この後は下台倉山まで2時間の登り。途中ヤセ尾根で岩盤が露出した箇所があり、下りは怖いだろうなー、なんて思う。夏を思わせるような太陽に照らされながらの登りに大汗をかかされる。人見部長はなかなかのペースで快調に高度を稼いでくれるので良い運動になる。15時を過ぎた頃ようやく下台倉山に到着。日陰で休んでいると心地よい風が吹いてくる。汗もすぐに乾く。台倉山の水場まであと1時間弱。樹林帯の中、小さな上下を繰り返し薄暗いちょっとした平地に出ると水場の標識があり今宵の泊まり場に到着。部長がどうにか4人用のテントを張れる場所を見つけてくれたが下が湿っているため笹を刈り取ってきて敷きつめ、更にアルミシートを敷いてからテントを張ることにする。(テントを張るスペースはあまりない)
今日の晩餐は焼き肉。アルコール類もワイン、ウイスキー、あんず酒、焼酎にビール少々とバラエティーに富んでいる。満ち足りた気分で夕食を済ませその延長でいつものように飲んでいると加藤ねーちゃんは横になって睡眠モードに入ったようだ。遠慮しないでシュラフに入って寝ていいよ、と告げシュラフに押し込む。1人寝てしまえばアルコールの割り当てが増えるからシュラフに無理やり押し込んだんだろう?と思った稜友の皆様、ご推察の通り、じゃあなく、本人の意志を尊重した結果です、念のため…。明日の朝は3:30起きなので私も9時前には寝ることにする。後の2人はまだ楽しそうに飲んでいた。そのうちの1人はいつものように、いつものようだった…。
翌朝は予定通りの時刻に起床し5:05に出発。ほとんど高度を稼がないところであるが、道がぬかるんでいたり細かな登り降りを繰り返すためあまりピッチが捗らない。45分で次の水場「白沢清水」に着く。ここでビバークしていたパーティーは2つ。でもテントを張るスペースはほとんどない。周囲には少しガスが残っているが上空は明るくなってきているので本日も良い天候に恵まれそうだ。約30分ほど歩くと笹の切り開きになり、徐々にその丈が低くなり展望が開けてくる。恋ノ岐川を挟んだ右手にある幅広い尾根は緩やかなスカイラインを描いている。左手には尾瀬・利根源流の山々が見える。そして登山道を見上げると池ノ岳の小岩峰とその左手に平ケ岳が見える。こんな周囲の展望に助けられ黙々と歩いていくと思ったより短時間で小岩峰に到着することができた。
ここから一投足で姫の池。頂上湿原にたどり着く。道は左に折れ、再び樹林帯の中を潜って行き登り返していくと2等3角点のある平ケ岳に到着。山頂一帯の道はどこも緩やかだ。時刻は7:30頃。まずまずのペースである。3角点の周囲からは何も見えないので木道を南へ行くと素晴らしい展望が得られた。尾瀬・上州武尊・利根川源流・越後三山・会津等の山々が頂上湿原を前景にすべて見渡せる。この展望を十分に堪能してから「奇岩・玉子石」見物に行き、姫の池ほとりの4畳半ほどの木で作ってある眺望台で荷を広げて大休止をとる。お茶を沸かし、余った焼き肉を食べる。寝転がって見上げると雲一つない紺碧の空があった。
9:30下山開始。あまり天気が良かったので2時間も頂上で遊んでいた。じりじりと照りつける太陽に「暑い!」を連発しながら来た道を下る。途中でテントを撤収して車に戻ったのが14:00頃。その後は檜枝岐に戻って「駒の湯」で一風呂浴び、名物「檜枝岐の裁ちそば」を食す。すこぶる美味であった。もちろんビールなんてのもいただきました。
良い天候、良い山、良い風呂そして良いおそばに恵まれた今回は、非常に充実したリハビリ山行になりました。幕岩行ってアジを食べるのもいいですがこんなリッチな山行をたまにはしましょうよ。