冬合宿@北八ヶ岳 〜それぞれの冬山〜 
2001年 1/6〜8

服部 寛庸


期日: 1月6日〜8日
メンバー: 人見・山崎(1/6〜7)・福田(1/7〜8)・力竹(1/6〜7)・貝原・田中・石川(麻)・服部
コース: 1月6日 渋の湯〜黒百合平
1月7日 天狗岳〜白駒池
1月8日 麦草峠〜茶臼岳〜縞枯山〜ピラタスロープウェイ

―合宿の概要―

 1/6 7:00新宿発の特急あずさで茅野まで行き、1時間ほど待った後に奥蓼科(渋の湯)行きのバスに揺られることまた1時間。途中、ほとんど雪が見られず少々心配したものの、山道を少し登った辺りから一気に白い世界へと入ることになる。渋の湯にて身支度、計画書提出を終えた後、すぐに急登を登るところから歩き始める。入山者はかなり多い。今回は冬山初心者を多く含む合宿であったので早めのレストを心がける。その辺のタイミングは人見CLがうまく図ってくれるので助かる。快晴の天気の下、順調に雪の感触を味わいながら進む。黒百合平までは時間の余裕もあることから3ピッチ、2本のレストで到着。水場が無いので融雪しなければならない。ちょうどテントの設営が終わった頃、「ケッチボー」のコールと共に力竹さんの登場。一気に盛り上がる。夕食の豚汁を食べた後は楽しい酒宴が続き、最後は力竹さんの「そろそろ寝ましょうか」の一言で〆。21時ごろ就寝。

 1/7 パンとハムをコーンスープで流しこんで朝食とし、日が昇った頃に天狗岳ピストンに出発する。雪と岩の混じる道を右手に広がる中央アルプス、木曾御岳、北アルプス等の景色を見ながら登っていく。冬山が初めての者にとっては初めて受ける冬の風の冷たさの洗礼。東天狗岳の手前では鎖場の急登に苦労する。しかし、その分、晴れ渡った東天狗岳から北八ヶ岳一と言われる展望を味わい尽くす。下りは尾根通しの道を行く。今度は右手に越後の山々や奥秩父、さらに遠くは日光の山々を見ながらの道となる。中山峠を経て、だいたい予定通りの時間に黒百合平に帰着。程無くして福田さんと合流する。どうやら早めに到着していた模様。本隊はこれから中山を経て、白駒池まで進むが、力竹さんと山崎さんはここで分かれて渋の湯へ下山する。新しいプラブーツで靴擦れを起こした田中さんも下山しようかという話も出たが、「せっかく来たんだから」と先へ進むことにする。そのため中山まではペースを落とし気味に進むが、湿布とテーピングで何とか歩けるようになったので、その後は行程を順調に進める。高見石でこの日最後の展望を楽しんだ後、一息に白駒池へと下る。白駒池は全面氷結していたので池上を歩いて渡ることができた。氷の一部を開き、池を水場としているが、とても飲みたいと思わなかったのでこの日も融雪。青苔荘のテント場にエスパース2張りを張れる場所を見つけ、設営する。時間に余裕があったのでじっくりと夕食のビーフシチューを煮込む。その合間に天気図を取るが、出発前の予想通り、天気は下り坂。案の定、日が暮れた頃に雪が降り出す。夕食時には、手をかけたビーフシチューの味に感動し、下準備をしてもらった古谷さんに感謝する。夜はお疲れの女性陣が早々と退散した後は男3人でだらだら酒宴。それでも21時半には就寝した。

 1/8 目を覚ますと夜のうちに降った雪でテントがやや埋まっている。叩いて落とせるだけ落とし、後は朝食を作るためにたく火で溶かすことにする。朝食のラーメンを取りながら、今回の計画立案者の一人である福田さんを中心に、行動をどうするか話し合う。高見石経由で渋の湯下山という案も出たが、とりあえず行ける所まで行ってみようということで話がまとまった頃に雪が止む。時折、晴れ間も見えた。麦草峠方面に向かう道にはトレースが無かったが、深いところでも膝下ラッセルくらいだったので先へ進むことにする。わかんを持っているということで先頭は貝原さん。麦草峠より先にはトレースが付いていたのでそれに従うが、大石峠で分かれる茶臼岳方面の道にはトレースが無かった。ここでトレースにつられてルートミス。ついでに1本。茶臼岳の登りは樹林の中とはいえ、それなりのラッセルを強いられる箇所もあり、途中でトップを交代する。なんとか到着した茶臼岳の展望台からの展望はすばらしかった。ここからは人見CLや福田さんなどもトップを歩き、ラッセルを体験してもらう。そして、あっという間に縞枯山到着。後は下るだけなのでシリセードしたりしてピッチを上げて下りる。縞枯山荘でアイゼンを外し、ピラタスロープウェイ乗り場まで向かい、そのまま下山。バスの時刻まで至福の一杯を楽しんで、帰路につく。(服部 記)

―参加者の感想―

まずは人見CL。
なんといっても天候に恵まれました。新雪にも祝福されて美しい冬山を歩かせてもらいました。服部君がヘルパーとして参加し、力竹さんの颯爽とした登場もあって、合宿は盛り上がりました。初アイゼンの田中,石川まさんもよく頑張りました。貝原君は無用の長物と思われたわかんでラッセルし男を上げました。山崎、福田さんも素晴らしい展望に大感激、充実した合宿です。急遽CLを頼まれて、合宿自体が危ぶまれましたが、古屋さんに調整していただきました。最初から色々と準備して頂きながら,残念でした。私たちだけが楽しませてもらい、感謝します。服部君を口説いて参加させた部長の功績を自我自賛しています。

そして計画立案者の福田さん。
'はっきりと思い浮かべられるブルーの空と深い針葉樹帯に雪が積もった美しさが印象的でした。'
 黒百合平はテントが幾張もあり、北八ガ岳人気の高さがわかります。安全で冬山入門コースなので他にも女性の姿が多いようです。
2日目に力竹さん、山崎さんは帰り後から合流した私を加え6人パーティーで今日の幕営地、白駒池を目指します。
かわいいナース田中は始めてのプラブーツに足首があたって痛そうです。いつも楽しそうな人見先生、わかんでラッセルの貝原さん、バリバリ元気な石川麻紀ちゃん、頼もしくてとても23歳とは思えないハットリ君です。
中山の展望台では、はるかに見える槍やそれに続くキレットをハットリ君が教えてくれました。
高見石から見える白駒池は白くてそっと小さく見えました。1時間で下り着くとそこは北八ガ岳で一番大きな池でしかも静寂で神秘的でした。全面結氷の上を幕営地へ行くために横断したのです。全員かたらまずに5メートル間隔をもって進みました。誰もいないグレイの世界で大きなハットリ君の後ろに小さなナース田中が付いて歩く姿はおとぎの国のようでした。
その夜のビーフシチュウで酒盛り。体は疲れているのにいつでも酒宴は嬉しく楽しい話がはずみます。
トレースがない白駒池から茶臼山、縞枯山までのところもありましたが晴天で風もなく展望を充分に楽しみながら安全に終えることができました。毎回思いますが参加して良かったなと思いました。

そして冬山初体験その1、田中さん。
冬山なんて怖い。何度も遠慮しようと思ったがその度に励ましてもらい同行させてもらった。案の定荷物は背負えない、アイゼンは引っ掛けて転ぶ、プラブーツは痛いしで、みんなにたくさん迷惑をかけたくさん楽しませてもらった。まるで生クリームの中を歩いているような感覚、ぐんじょう色の空、頂上からみた青い山々に胸がキューっとなった。もっとがんばってまた夢の世界に行きたいと思う。

次に冬山初体験その2、石川(麻)さん。
1、快晴の中、樹林帯の雪景色が感動的でした。まるでおとぎばなしの世界に入り込んだようでした。
2、初めてアイゼンをはいて歩いてみて、思った以上に快適でした。ぜんぜん滑らないから安心。アイゼン歩行を練習しなければと思っています。
3、テント生活は寒かったけどとても面白かった。水作りを始め、いろいろ勉強になりました。食事も最高においしかったです。

―今後に向けて―

  先月の稜友MEMOにおいて、岡田さんが「冬山は10年通ってやっと1人前。山岳部ごときで2〜3年冬山をやっただけではリーダーとしては半人前と思え」と書かれていたので、ここで僕ごときが、しかもCLでもなかったのに意見を述べるなんていうのは生意気至極かと思われますが、この原稿をまとめる都合上ともって流し読みでもしていただければ幸いです。

今回の合宿はコース上にさほど難しい部分も無く、また、天候に恵まれたこともあって冬山初心者ばかりでなく、経験者にとっても非常に楽しめる山行であったと思います。
人見CLは「体力が無い」と言いつつもトップでいいペースを作ってもらいました。福田さんはマイペースでちゃんと疲れない歩き方をしておられました。山崎さんは、さすがに最近走り込みをしているだけあって、パワフル、かつ、安定して歩いていました。貝原さんもずんずん前へ前へと気持ちが向かっているのが見え、本当に楽しそうに歩いてる様子が見てとれました。田中さんは靴擦れを起こし、本当に辛かったと思います。でも、それを見せないがんばりは見習うべきところがありました。田中(麻)さんは冬山が初めてで、雪訓未参加とは思えないほど安定した歩き方でした。

 しかし、個々の反省は各自でしていただきたいと思います。人見CLや貝原さんと飲みながら、「パーティーで総合的に山行を完遂する能力があればいい云々」ということを言っていましたが、気になった点をあえて挙げておきたいと思います。

やはり、地図やコンパスの使い方、地形の見方を身に付けることが大事です。せめて地図で現在地を確認したり、分岐に気をつけたりはしなければ今回のような単純なルートミスをしてしまいます。トップであろうが一番後ろを歩いていようが、全員がちゃんと分かっている必要があります。山行記録をつけるといい練習になります。
天気図に関しても、誰かが書ければ&読めればいいとか、ラジオの天気予報に頼るのではいけないと思います。特に冬山では進退の判断を行う上で重要な要素だと思いますので、複数の隊員で判断する方がより正確、かつ、公平です。
一番基本的な歩き方に関しても、雪訓での練習が本番で生かされていない感があります。つぼ足歩行なら蹴り込みを確実にする、アイゼン歩行なら全てのツメを効かせる、わかん歩行なら滑らないように歩く等、一歩一歩を確実にしなければすぐに疲れてしまいます。一概に体力不足と言えない場合もあるはずです。足を引っ掛けないように歩くことを意識するのは当然です。
テント生活では、テント内の整理はもちろんのこと、雪山特有の融雪作業などに関しても、テントに入る前にまず雪を集めることから作業として動けるようにしなければいけないと思います。まだまだ自分のことで精一杯という感じがしました。複数で山行を行う場合は、「みんなのこと」を優先にするという意識が大切だと思います。テント生活でついでに言うと、冬はガソリンストーブの利用が増えますので、ストーブ本体の扱いと共に燃料であるガソリンの扱いに関しても習熟してください。
よく言われることですが、社会人山岳会である以上、それぞれが先生でも生徒でもあるという相互補完の関係、最終的な判断を自分で行う自己責任の意識を常に持つことが大事だと思います。特に今回のような合宿は、いろんなことを学ぶいい機会だと思います。分からないことはどんどん聞いて、注意されたことについて気をつけ、細かい作業一つ取っても覚えていく姿勢が自己の山に対するスキルを向上させる結果につながるのだと思います。そうすれば、今よりもさらに楽しい山行が送れるようになると思います。

P.S.
山行記録はありません。ごめんなさい<(_)>