期日 | 2月10日〜12日 |
メンバー | 服部寛庸・古屋由紀・道関明子 |
タイム |
大学も後は成績発表を待つだけになった身には、世間様の休みとは全く関係が無いのだけれども、せっかくどこかに行くなら1人では嫌な性格なので3連休は誰かの計画に乗っかろうと考えていた。集会でもいくつかの候補があったものの、北八ヶ岳に行って以来のなまった体にはちとつらい計画ばかりだったので、とりあえずどこかに日帰りハイキングでも行くべ、と特に計画は出さなかった。
そんなわけで奥多摩の浅間尾根に歩きに行くと掲示板に書き込んだら、叶姉から「叶妹とどっか行こうって話してるんだけど、家に来ない?」とのお誘いを受けたので「行きます」と即答した。そしてビールとビーフシチューを挟んでの3者会談が出した結論は1泊で那須岳。どうしてそんな結論を出したかは覚えていないが、かなりテキトーだったような気がする。そしてこのテキトーさが後に叶姉を大いなる後悔させることになる。
前日に叶姉宅を出たのが21時過ぎ。翌朝の8時には赤羽で待ち合わせをしていた。かなりの寝不足で日差しが痛かったのを覚えている。さいたま新都心駅で叶妹と無事合流して3人で一路黒磯へと向かう。黒磯駅には10時半頃到着し、銘銘が食事をとったり水をくんだりする。登山口の大丸温泉までのバスは時間的に無理だったので、タクシーで向かう。スキーで渋滞しているとのことだったので少し遠回りして行く。途中、反対車線の渋滞を横目に見つつ、大丸温泉に無事到着。身支度を整える間に少しずつ山の方へ雲が増えてきたので、あまり遅くならないうちに幕営できるように行動を終えるつもりで出発。スタート地点からすでに車道を雪が埋めていたのでアイゼンをつけていく。トレースもあり歩きやすい。トップを歩く叶妹のペースも少し速いくらいだった。峠の茶屋辺りで1本取る。このまま行くと次の1本で稜線に出ることになると思い、少し油断したのが間違いの元だった。森林限界を超えた尾根上に出ると急に風が強まり、峰の茶屋が見える辺りになると顔にあたる雪の粒が痛くてなかなか前に進めなくなる。特にそんな状況に慣れていない叶姉妹は立ち止まってしまう。「とにかくもう少しだから」となだめすかして峰の茶屋まで向かう。この段階でこの日の内に茶臼岳へ登るのは断念するが、風に立ち向かうチャレンジャーな人もいて変に感心する。少し様子見に小屋の陰を出て行くと、体が飛ばされるほどの風が吹いている。三斗小屋温泉方面に少し下りたところにある避難小屋付近を幕営地に考えていたので、そこへたどり着くにはこの風に逆らって歩かなければならない。先日の日光白根での大滑落がトラウマになってしまっている叶姉をほとんどだますようにして歩かせる。ほんの少し下りてしまえば、風はあるものの歩けないほどではないのでゆっくりと進んでいく。沢沿いを歩くのが正規ルートであると思ったが、雪の付き具合からして雪崩が怖かったので上方をトラバースしていくことにする。程なくして、避難小屋とスキーで歩いている人が見えたのでとりあえず一安心。所々雪に埋まりながらも何とか無事避難小屋到着。以前来た時は便所のようなボロ小屋だったのが立派な小屋に立て替えられていて驚く。中には2人パーティーがいたので半分ずつ使うことにして、暖を取るためにテントも中に張ることにした。夜は食事をとった後には少し酒を飲んだけれども、寝不足がたたって早めに眠ってしまった。叶姉妹は隣のおじさんと山の歌や山の話で盛り上がって遅くまで起きていたようだった。
次の日は茶臼岳に行って下りるだけだったのでゆっくり起きて支度する。夜のうちに降った雪がかなり積もっている。とりあえず僕がわかんを履いて先行していく。昨日警戒して通らなかった沢沿いの道が、踏み固められているのと風で雪が飛ばされているので歩きやすそうだと思い、様子を見に行くとそこはわかんもいらないほど歩きやすかった。すぐに稜線が見えるところまで上がることができたが、今度はまた風がきつくなってくる。峰の茶屋付近まで来る頃には昨日よりも強い風が吹き付けており、思わず吹き飛ばされそうになる。振り返ると叶姉が動けなくなっている。寄り添うようにして峰の茶屋まで連れて行き、叶妹も無事到着。茶臼岳に行くかどうか考えたものの、叶姉は頑として「行けない、行けない」の一点張り。それも当然かと思ったものの、せっかくだからという気持ちも強かった。しかし、ここに動かずに一人で残していくことはかなりの凍傷の危機をもたらすことであり、ひどい時には低体温症、凍死までありうると少し迷っていたら、峰の茶屋が避難小屋で中に入れることを見つけ、この中でなら大丈夫だけれど必ず火をたいて暖を取るようにと伝え、叶妹と2人で茶臼岳に向かった。風が強かったのは案の定小屋付近だけで少し進めば風が弱まり、あっという間に茶臼岳のピークに到着。活火山なので積もった雪が地熱で溶けているところもある。寒いのと叶姉が心配なのですぐに下りることにする。峰の茶屋に戻ると別れた時よりも元気そうだった叶姉を見て一安心。しかし、僕自身も風が当たっていた頬の部分が凍傷になっているような感じがしたので一休みした後、すぐに下山にかかる。来た時と同様に森林限界くらいまでは風があったものの、その後は順調に歩き、新雪とたわむれながら高度を下げる。そして昼過ぎには無事大丸温泉に戻り、温泉に入って食事をとり、人心地ついた後は、バス賃で行ってくれるという白タクに乗っかって黒磯駅まで下りた。
そのまま東京まで帰ればいいものを、電車の中で宇都宮の餃子の話になったしまい、途中下車して宇都宮の「みんみん」で餃子を食いに行った。こうして一部に年頃の女性が貴重な3連休を無駄に過ごしたとの物議をかもした山行は厳しく、かつ、楽しく、腹いっぱいで終えることになったのである。