八ヶ岳(赤岳主稜)

あつこ


3月21日
 3:50起床。朝食をとり、支度を整えるうちに明るくなる。天気は快晴。ヘルメット以外の登攀道具を身に着け、赤岳主稜チームが一足先に出発した。文三郎尾根を登るが、かなりの急登。高度感もあるため、結構怖い。下りのことを考えて憂鬱になりながら進む。文三郎尾根の途中で雪面を左にトラバースし、取り付きに向かうと、既に5、6人が順番待ちをしていた。取り付きのチムニーを越えるのに手間取っている模様。時刻は6:35。深沢さんの指示で、斜面にピッケルの柄を刺して自己ビレーを取り、ヘルメットをつける。7:10頃登攀開始。後ろには、3パーティー10人程度が並んでいた。ニシノさんがダブルロープで登り、深沢さん・私が後に続く。この頃には体が冷え切り、指先がしびれていた。

1P目:ニシノさんリード。取り付きのチムニーを登り、右上に回る。ニシノさんの登り方をよく見て真似しようとするがうまくいかず、さっそく左上の残置シュリンゲのお世話になった。しかし、そこから身動きが取れない。しびれた指先に手袋をはめての雪交じりの岩は、やはり厳しく、緊張で息が荒くなった。ホールドをちゃんと掴めているか、力をかけていいか判断がつかず、順番待ちがいるというプレッシャーも相まって、パニック気味になる。深呼吸をしながら少しずつ足を持ち上げ、どうにか乗り越えたが、早くも戦意喪失気味。ガイドブックやインターネットには初心者向けと書いてあったのに・・・と心の中で泣きながら、ビレー点に向かった。
2P目:深沢さんリード。岩と雪のミックス。声が聞こえにくく、ロープの状態で判断して登り始める。ここには支点がなく、深沢さんが岩にシュリンゲをかけてビレーをしていた。1P目の緊張とパニックを引きずり、ビレー点に着く頃には完全に息が切れていた。
3P目:あつこリード。このピッチは平坦で簡単だからとのことで、リードをさせていただいた。確かに難しくなく、傾斜の緩い雪稜をさくさく歩いていく。しかし、途中でランニングを取る際、慣れないため逆クリップにならないようにするのに時間がかかった。雪稜の終点、4P目の岩場の下までもう少しというところで、残り3mの声が聞こえる。おそるおそる歩を進め、どうにか支点に間に合うが、先行者がいるため足元の支点しか使えない。このためビレーをするのに勝手が悪く、ロープをなかなか引けずにニシノさんに迷惑をかけてしまった。ここでは後続パーティーがコンテで歩いていた。
4P目:中間部の小さい岩場を越える。
5P目:雪の斜面を登り、核心の6P目の岩場の下まで行く。前に5、6人、後ろにも2パーティー5、6人がおり、日陰の急斜面で30分ほど待機する。寒さのため指の感覚がなくなり、膝が震えた。ここでは南方リッジの笹田さん・カトさん組が見え、ニシノさんがケッチボーを叫ぶ。
6P目:ニシノさんリード。核心の岩場を登る。ニシノさんも、その後に続いた他のチームも苦戦している。続いて深沢さんが登り、私の後には女性が2人。仲間がいなくなり心細く感じつつ取り付くが、やはり難航。緊張と焦りで息が荒くなるが、深呼吸をして心を落ち着けながら、どうにか乗り越える。ちなみに、待機中に簡単そうに見えたルートがあったのだが、上から見るととても登れる場所ではなく、素人ぶりを実感した。岩場を越え、少しトラバースした不安定なところでニシノさんがビレイしていた。この付近で南方リッジのいたさんの声が聞こえ、自分も頑張らねばと元気付けられた。
7P目:深沢さんリード。岩を越えて右に進む、声が届きにくいピッチ。深沢さん−ニシノさん−あつこの順で登ったのだが、深沢さんのビレー中にロープが絡まり、ニシノさん・あつこが登り始めるまでに時間がかかってしまった。声が届かないため深沢さんに状況を伝えることができず、寒い中やきもきさせてしまったことと思う。ロープは完全に絡まっており、苦闘の挙句、ほどくためにはハーネスから外すしかないという結論に達するが、足場が悪く危険なため、岩場上の安定した場所に行ってからほどこうということになる。そのためニシノさんはロープが絡まった状態で登り始めたのだが、絡まった場所が悪く、岩に取り付いてすぐのところで先に進めなくなってしまった。上からロープを引かれているため、元の場所に戻ることもできず、やむを得ずその場でハーネスからロープをはずす事態となり、肝を冷やした。また、岩場には浮石が少しあり、後続パーティーがいたため気をつかった。さんざんお待たせした深沢さんと合流。深沢さんは稜線の岩角でビレイしていた。
8P目:ニシノさんリード。岩のリッジを越えて、岩と雪のミックス帯を登る。跳び箱を跨ぐような体勢で乗り越えなけらばならない岩が1箇所あり、岩に跨ったまま次の1歩を出せずにSしばし硬直。
9P目:ニシノさんリード。小凹角から雪壁を登り、緩やかな雪面へ。9Pが終わったところで、ビレイを解除し、頂上へ向かう。晴れ渡る空、絶好の視界の中、何ともいえない達成感・充足感を感じた。やはり、一般ルートから頂上に向かうのとは一味違う。

 13:00登頂。頂上小屋の横では南方リッジチームが待っていて下さり、皆で握手して無事を喜び合った。話を聞くと、1時間近く待たせてしまった模様。10分ほど休憩した後、赤岳山頂で写真を撮り、地蔵尾根を下る。深沢さんと私はこの日のうちに下山するため、急ぎ足で下ったのだが、深沢さんについて行くことができず、赤岳展望荘で2泊組に混ぜていただいた。14:45頃行者小屋を出発し、南沢を通って16:15頃美濃戸口に到着。南沢は雪でツルツルな部分と、泥がグジャグジャの部分が混合していた。
1P目から大渋滞 2P目は快適な登り
2Pを登るあっちゃん これから向かうルートを望む

 初の冬山登攀で、支点がない場所でのビレーの取り方や、声に頼らないロープを通しての意思疎通、スピードの重要性など、本番でしかわからないことをたくさん勉強させていただきました。また、ダブルロープでは2本のロープが絡まりやすく、狭く不安定な岩場でいかにロープを整理するかなど、課題も残りました。
 一番の反省点は、ランニングビレーをとるのに時間がかかったり、ビレーの際にロープがたるみっぱなしだったりと、ゲレンデで習得可能な技術を持たずに仲間に迷惑をかけてしまったことです。たった1度のビレーで疲労困憊してしまったのも情けなく、今後は基本的なことが当たり前にできるよう、練習を重ねて慣れていきたいと思います。
 1泊ですが、非常に内容の濃い達成感のある山行でした。お世話になった皆様、本当にありがとうございました。