長沢背稜〜石尾根

ぺがさす

期日:2009年6月13日 - 14日
参加者:ぺがさす(単独)

コースタイム
一日目
奥多摩駅(23:48)-本仁田山登山口(0:19)-本仁田山(1:50)-コブタカ山(2:33)-船井戸(3:33)-川乗山(3:57)-踊平(4:40)-日向沢の峰(5:05)-蕎麦粒山(5:50)-仙元峠分岐(6:01)-一杯水避難小屋(6:47)(7:01)-七跳尾根分岐(7:57)-酉谷避難小屋(8:34)-天祖山分岐(9:55)-長沢山(10:44)-芋の木ドッケ(11:59)(12:10)-大ダワ(12:38)-雲取山荘(12:57)(13:07)-雲取山(13:27)(13:35)-奥多摩小屋(14:05)

二日目
奥多摩小屋(5:08)-七つ石山(5:42)-鷹ノ巣避難小屋(6:47)-鷹ノ巣山(7:05)-六ツ石山分岐(8:03)-石尾根登山口(9:07)-青梅街道(9:33)


プロローグ
過去の山行記録を読んでいて、大魔王の長沢背稜の山行記録が大変面白く、長沢背稜に対する思いが伝わってくるようであった。本当は一度ご一緒させて頂きたかったのだが、ついにそれも叶わなかった。しかしあの方も私と同じく単独で行ったであろうから、私も一人で行くべきだったのだろう。

長沢背稜を歩くにあたっていくつかルートを検討した。ヨコスズ尾根から入るルート、川乗山から入るルート、秩父方面から入るルートなどいくつかあるが、美しさ?という意味では、やはり奥多摩駅を基点とし本仁田山と川乗山を経て背稜にはいり、石尾根を使って降りる一周ルートだろうということになった。ただ長い為に土日で行くには何かしらの工夫が必要だなあと思っていた。そこで思い出したのが、カモシカ山行(1)だった。

6月12日(金曜日)
会社を早々に退散し、家に帰って風呂に入って晩飯をかきこむ。田端駅に行って適当な電車で奥多摩へ。奥多摩駅でしばらく寝ようと思ったのだが、トラックが5分起きに爆音を立てて走るためにまったく寝られず、歩き始めることにする。23時48分。

6月13日(土曜)
安寺沢の登山口まで30分程舗装道路を歩く。街灯がありライトは不要だった。ここから大休場尾根から登る。熊よけの為に、熊鈴とラジオを鳴らし、時折笛を吹きながら登る。まだ体が山慣れしてないのか、奥多摩三大急登(2)のせいなのか大汗をかく。ほぼコースタイム通りに本仁田山山頂に到着。当然だが誰もいない(いたらびっくりだ)遠くに街の灯が見えてとても綺麗、しかも風が涼しい。夜間登山っていいもんだなと思う。ここからコブタカ山に向かうが、まだ暗闇の登山道に慣れておらず地形図からイメージできない様な下りがあると不安になって戻ったりして時間がかかってしまった。ライトは足元しか照らさないので分岐の表示を見逃しているのではないかという不安が常につきまとう。しかも虫(蛾?)が絶え間なく寄ってきて非常にうっとおしい。しかしなんとかコブタカ山、大ダワと到着する。ここから川乗山に登るわけだが選択肢が二つある。鋸尾根を登るのか巻くか、である。今回は巻くことにした。私には真っ暗闇の中で岩を登る勇気はなかった。ここから船井戸を経て川乗山に到着。依然として真っ暗。2年前に来た時には崩壊寸前の小屋があったのだが、なくなっていた。ちょっと休んで踊平に向かう。だんだん明るくなってくる。ラジオはずっとつけっぱなしでNHKのラジオ深夜便をずっと聞いていた。ちょうど日向沢の峰に登る時に、朝比奈隆のブルックナー7番が流れていて、朝日がキラキラしているのと相まってとても感動的だった。登る前に分岐があるが、ここで「蕎麦粒山まき道」にXXXが書かれてある。迷いやすいのかもしれない。あくまで稜線を行けということだろう。蕎麦粒山に5時過ぎに到着する。体力はまだまだ余裕。熊の方が心配だ。早朝と夕方は気をつけろとどこかに書いてあったので、いまだにずっと時々笛を吹きながら歩き続けている。(これは熊対処として正しいのだろうか?)

真夜中の本仁田山 山頂 真夜中の川乗山 山頂
まき道にXXXと書かれている 蕎麦粒山山頂


仙元尾根分岐をすぎると道が平坦になって非常に歩きやすい。長沢背稜でトレイルランしている人が多いのも納得がいく。(結局、水松山の天祖山分岐までずっと道は平坦で非常に歩きやすい)一杯水避難小屋の手前の水場で水を500ml補給し、避難小屋前で朝食休憩とする。コーヒーをわかし、パンを食べる。大魔王はここから登ってきたんだなぁとヨコスズ尾根を覗いてみる。7時に出発。

出発して50分もすると七跳尾根の分岐がある。なにかおかしい。コースタイムは80分なのに私は1時間弱で来てしまっている。このコースタイムはちょっとゆるすぎるのではないか。酉谷避難小屋は使用できないようなので中に入らず通過する。こんな立派な避難小屋が土台崩壊の危険性の為に使用禁止とはもったいなすぎる。ここからもひたすら水平な道を歩き続ける。木漏れ日の中、風も涼しくとても気持ちがよい。ただラジオではさかんに「大気が不安定になります」と言うのでうんざりして切ってしまった。

しばらく進むと天祖山への分岐がある。ここが要注意部分である。長沢背稜のルートを色々ネットで見たらここで迷っている人が多かった。天祖山への分岐の道標に従い斜面を登ると、もうひとつ道標があるが、道標が示す芋の木ドッケへ進む道には「いくな」とばかりに枝が沢山おかれている。うーん稜線に沿っていけばいいんだよなぁと安易に稜線を進んでいくとピークがあった。明瞭なふみ跡があるのでたどっていくと、なんかとんでもない方向に進んでいる。ここで「あ、これはやばいな」と思い、ここで初めて地形図とコンパスで位置を確認し、長沢山への稜線を見つけ、さくっと長沢山に到着。到着してから、「GPSの電源入れておけばよかった」と後悔。帰宅してからどこをたどったのか見えたらよかったのに。。(結局最後までGPSは使わずだった) 私は稜線沿いに進んだが、おそらく正規ルートは一旦秩父側を巻くようだ。地形図にはその道は載っていない(と思う)

ここから芋ノ木ドッケまで登りが続く。だんだん倒木が多くなってくる。なぜこんなに倒木があるのだろう。家で調べてみようと思いながら登りつづける(3)ちょうど12時位に芋ノ木ドッケ到着。ちょうど12時だから、ということでお昼にする。倒木に座ってサンドイッチと水を投入。エネルギー充電したついでにアミノバイタルプロも投入しておく。さて、ここまでくれば(大魔王によると)あとは銀座通りのようなものだ。大ダワへ急斜面を降り、雲取山荘へ登り返す。雲取山荘は久しぶりだ。水がじゃばじゃば流れているのでタオルで体を拭く。さっぱりして気持ちが良い。さらに水も満タンに補給する(しめて4L)ずっしり重たくなる。雲取山に登ればあとは下りだ。重たくなったザックをゆっくりゆっくり担ぎ上げる。1時半に雲取山に到着。人が少ない。一組の男女だけだ。彼らの記念撮影が終わるのを待ち、自分を撮ってもらう。一応、縦走の記念に、ということで。

さて、雲取隊は到着しているかなぁと思いながら、奥多摩小屋に向かう。下りなのでラクだ。2時過ぎに奥多摩小屋に着くと、雲取隊はまだ到着してなかった。あれーおかしいなぁ、と思い、もしかして中止になってないよなぁ、と携帯で掲示板を確認しようとしたが、電波が入らない。うーん、どうしようかなぁ、夜に雨が降りそうだし、鷹ノ巣避難小屋まで降りようかなぁ、あー今の時間なら石尾根を降りられるかなぁ。などと思っていると、雲取隊が到着。無事ケッチボーできた。よかったよかった。木の下にツェルトを張り、「お疲れ様ー」とビールで乾杯!ああうまい。つまみを供出しあい、自前の酒を飲んだり、カトさんのマッカランを頂いたり、楽しい宴会で盛り上がる。タニグチさんのフォアグラペーストがうまい! 雲取隊はヨシさん食当で豪華な夕食だ。私は乾燥食料のチーズリゾットとカレーピラフでおしまい。テントに移ってカトさんのロープ実習が始まるが、私は眠くてあまり集中できなかった。ごめんなさい。8時半にお開きし、自分のツェルトに移り、歯を磨いてシュラフカバーに入るとすぐ寝入ってしまった。


一杯水避難小屋 酉谷避難小屋は使用禁止のようだが。。
木漏れ日の中をひたすら進む 稜線上の道(正面)ではなく秩父側(右)をまくのが本線らしい。そちらにも明瞭なふみ跡がある
ツェルトを張る おいしそうな雲取山隊の晩御飯


6月14日(日曜)
予想通り夜中に雨が降る。4時に起きて朝飯を食べ、コーヒーを飲む。さっと撤収し5時すぎに出発する。天気はあまり良くなくガスだ。雲取隊の皆さんに挨拶をし、お互いの無事を祈って出発する。石尾根は何度も通った道なので緊張感なく進む。鷹ノ巣山は、せっかくだからということで巻き道を使わず頂上を通過するが、予想通りまったく視界が無かった。あとは、特筆することも無い。ただひたすら降りて、登山口に降り立ったのが9時過ぎだった。

青梅街道に下りると、道路向かいに以前立ち寄ったことある温泉があった。そこで温泉に入りさっぱりした後、奥多摩駅の2階で、山行の無事を祝って一人で乾杯する。なぜかソムリエ田崎真也がいた。そういえば大魔王さんも真也だったなぁとほくそえんでいると田崎さんがこっちをじっと見ていた。

鷹ノ巣山山頂 ガスで視界なし 一人打ち上げ


反省
1)軽量化の為ツェルトにしてみたが、他の部分でもっと軽量化できると思う。特にエアマットはいらないかもしれない。風雨対策にテントのグランドシートを持ってきたが、これはよかったが、張り方をもっと研究する必要がある。
2)水は常に2L以上担いでいた。安心は安心だが、あと1L少なくしてもいいだろう。
3)夜間歩行は、行ったことがあるルートならばいいが、行ったことの無いルートの場合は、めんどくさがらず地形図で先の地形を覚えてから進んだほうがよい。
4)ただし地形図に載っている登山道が本物かどうかは結構信用できない。

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(1)カモシカ山行とは、加茂鹿之助こと中村謙によると、
「兎角誤解されるんですが、マラソン式に速く歩くというのではないので、要は、我我は時間も(金も)ないからニ日なり、三日なり要して行く處を(夜をこめて)一日で歩くということです」(中村談・『山と渓谷』1947年4月号・99号)
(2)他に稲村岩尾根(鷹ノ巣山)らしいが、後一つは諸説あり。
(3)結局わからず