赤岳天狗尾根

あつこ

期日:2011年9月23日〜25日
参加者:あつこ、なお、ハギ、カト、ミナト


10月9日
新宿7:00〜清里9:40〜美し森10:00/10:20〜地獄谷11:30〜出合小屋12:20〜天狗尾根取付13:20〜天狗尾根稜線13:55〜標高2200m付近14:55(幕営)
10月10日
幕営地5:30〜カニのはさみ6:40〜第二岩峰6:45〜大天狗7:30〜主稜線登山道8:50〜真教寺尾根分岐9:30〜牛首山11:20〜賽の河原12:15〜美し森13:10

10月9日
 あずさと八ヶ岳高原列車を乗り継ぎ、観光地・清里へ降り立つ。可愛らしいピクニックバスにはしゃぐ女子を制し、カトさんが呼び止めて下さったタクシーで美し森へ。タクシーは5人で1000円、約10分。ピクニックバスは1人300円なので、タクシーの方が少しお得。登山ポストが見当たらず、登山届は観光案内所の方に預かっていただいた。毎日警察が巡回に来るので、渡してくださるとのこと。なおさんと私は売店の誘惑に勝てず、ソフトクリーム片手にいざ出発。
 売店脇の階段を登り、林道を歩き始める。観光案内所の方が、出合小屋までの道は荒れていると言っていたが、林道の時点で既に荒れている。1時間ほど歩くと「本谷出合小屋」の標識ともに、自然に地獄谷の河床へと導かれ、河原歩きが始まった。赤テープや、岩や堰堤に印されたマークに従い、右岸・左岸へ何度も渡りながら進んでいく。時期が早いと渡渉に苦労するようだが、今回は水が涸れており問題はない。堰堤をいくつも越え、赤テープ頼りに荒れた踏み跡を行くと、1時間ほどで左手に出合小屋の青い屋根が見えた。小屋を覗くと、ザックがデポしてあり、近くにテントも2張あった。目の前の赤岳沢にはきれいな水が流れていた。水は観光案内所で汲んできたが、ここで汲んでも良かったかもしれない。

「本谷出合小屋」の標識 自然に地獄谷の河床へ


 さて、ここからが本番。適当な場所から尾根に取り付き、稜線に出なければならないが、ガイド本やインターネットの記録を見ても、取り付き点はまちまちである。「チャレンジ!アルパインクライミング」には、出合小屋から15分ほどで取り付くとあるが、ネットの記録を見ると30分だの20分だの40分だのと、皆思い思いの地点から取り付いている。結果、我々5人の意見もバラバラ。取り敢えず様子を見ながら決めようと、歩き出す。今回は女子3人が前を歩き、男性2人は後についていただく。歩き始めてすぐ、「赤岳沢」の標識があった。15分ほど歩いたあたりから、古びた赤テープがちらほら現れる。皆、先人達の取り付き跡なのだろうが、「上のほうで取り付いたほうが藪こぎが楽」との誰かの記録を胸に、結局40分ほど遡った地点の古びた赤テープから取り付いた。最初から結構な急斜面なのだが、つかまろうとする木のほとんどが朽ちている。人の入らない山はこれだけ荒れるんだなぁとしみじみ思いながら、藪を掻き分けて進む。3Lの水とザイルが重力の存在を激しくアピールする中、40分ほどで稜線に到達。空は晴れ渡り、富士山がくっきり見える。悪くない取り付き点だったようだ。尾根沿いに踏み跡を進むと、すぐに2100m付近の平坦地に出た。が、時間も早く、2300mあたりまでは幕営の記録があるので、先に進む。時折踏み跡を見失いながら1時間ほど藪をこぎ、2230m付近の微妙な平坦地に幕営。かろうじて4-5テンが1張張れる程度のスペースだった。さっそくテントを設営し、宴会突入。たらふく飲み食いし、19:30頃就寝。ダウンがいらない暖かい夜だった。

出合小屋 「赤岳沢」の標識


10月10日日
 4時起床、5時半出発。ただでさえ不明瞭な踏み跡を、ヘッ電を頼りに歩き始める。2350m付近に、かろうじて4-5テンが1張可能な程度のスペースがあるが、倒木が邪魔で適地とは言えない。やがて第一岩峰と思われる岩稜に出、ここで女性陣はハーネス・ヘルメットを身に付けた。男性陣は出発からフル装備で、気合が伝わってくる。歩き始めて1時間ほどでカニバサミが現れ、まさしくその通りの形に一同顔がほころぶ。左を巻くのが主流だが、ハサミの間を行くこともできるらしい。が、下部の岩に手をかけた瞬間、大きな塊がガサリと動き、あっさり退散。散々脆いと聞いていたが、うかつに掴めないくらい脆い。以後、岩登りに行ったはずが、全ての岩場を巻くという暴挙の動機付けとなる。10分ほどで現れる第二岩峰には、記録どおり右手の巻き道にフィックスロープが張ってあるが、芯が見えていた。ロープなしでも可能なルートで、テンションをかけることはないと判断し、あくまで保険としてカラビナ通しで上がった。

人けのない稜線を歩きます 見事なカニバサミ
第二岩峰のフィックスロープ 振り返れば常に富士山。贅沢!
重荷を背負っての急登がキツイ・・・ 立ちふさがる大天狗


 50分ほどで、ハイライトの大天狗が現れる。取り付きの少し手前で休憩しながら観察。ネットで散々見た姿だが、本当に大丈夫かしらと不安がよぎる。立ちふさがるその姿は、直登はおろか、無事に巻けるかすら不安だ。取り付きまで行くと、手頃な位置に新しいハーケンが打ってあるが、ぐらついている。ここでロープを出し、女性3人・男性2人のチームで登攀・・・ではなく巻き開始。手前の潅木でビレーしていただき、取り敢えず5mほど上のバンドに上がる。この間、ハーケンは2箇所ほど。バンドに上がるとピカピカの支点(鎖付き)があったので、ありがたくここでビレー。バンドは右手に回り込んでおり、ロープをつけたまま偵察に行くが、残念ながらあとはロープ不要だった。巻いたのだから仕方ないが、物足りない気持ちでロープを外す。その後は1時間ほどで登山道に合流してしまった。はるばる埼玉から26時間かけて担ぎ上げた3kgのロープ、活躍したのは5mのみ。うーん、果てしなく物足りない。かといって赤岳ピストンをする気もおきず、やがて現れる赤岳への分岐は満場一致で真教寺尾根を選択。なかなか手強い鎖場&ガレた岩場をダラダラ下り、3時間半ほどで美し森へ無事帰還した。

 武装解除していると、すばらしいタイミングでピクニックバスが到着。またしてもソフトクリーム片手に乗り込む。パノラマの湯で途中下車して入浴&腹ごしらえをし、徒歩約5分の大泉駅から小淵沢での乗り継ぎを経て、満員のあずさで帰京した。

唯一ロープを出した5mの登り 小天狗もカッコイイですね
仲良く並ぶ県界尾根と真教寺尾根 真教寺尾根の下り。かなり嫌らしい
登ってきた天狗尾根を見ながら下ります 山はすっかり秋でした


 ビレーの仕方も危ういまま剱の八つ峰に突っ込んでから3年たち、この間いろんなバリエーションルートに挑戦させていただきました。が、常に笹田師匠の全面フォローで引っ張りあげていただくばかりで、いい加減そろそろ一人立ちせねばなぁと思い、今回の山行を計画しました。残念ながら全ての岩場を巻いたため、ただの藪こぎ縦走になってしまいましたが、行動の全てを自分たちで判断することができ、大変良い経験になりました。アドバイスを下さった皆様、無雪期にはあまり適さないルートにも関わらず誘いに応じて下さり、終始フォローして下さったメンバーの皆様、ありがとうございました。