上の廊下(夏合宿))
期日:2012年8月10日(金)〜16日(木)
つりし、アベ、ハギ、グッチー(記)
行程:
8/10(金)移動日 21:45 アベ車で西大宮駅発
8/11(土)扇沢に深夜着、アベ車を回送業者に委託、ステーションビバーク、5:50トローリバスのチケット販売開始、
6:30トローリバス始発に乗車、6:45黒部ダム着、9:57 平の小屋(渡船場)着、10:00 渡船乗船、
13:00 奥黒部ヒュッテ着、テン泊
8/12(日)3:30 起床、5:30 スタート、10:20 口元のタル沢出会、14:20 廊下沢出会、テン泊
8/13(月)4:30 起床、6:30 スタート、7:00広河原、7:40上の黒ビンガ、12:20金作谷出会、13:30 スゴの淵、
14:00岩苔小谷出会、テン泊
8/14(火)テン泊、終日停滞
8/15(水)3:00 起床、5:00 スタート、12:30 大東新道の高天原峠、15:30 薬師沢小屋、小屋泊
8/16(木)5:40 薬師沢小屋発、7:50 太郎平小屋、10:50 折立に下山、11:50 立山駅でアベ車に乗車、
楽今日温泉経由、19:20 西大宮着
グッチー
4、装備 (別途計画書参照)
(1)共同装備 フローティングロープ 6.5o 1本 30m、 クライミングロープ 1本 8o 30m、 ライフジャケット 2着、
(2)食事計画担当 ハギ
つりしリーダーから行程通しての食計を命じられた時には「!?」だったが。1人で購入すると、分配する
にも5日分の食料の総量におののくことになり、軽量化と省スペース化を意識的に図れてよかったと
思う。
軽さ、省スペースに加え腹持ちの良さから、主食はアルファ米中心。アベの「岩魚炊き込みご飯」を期待し、
1食だけ生米にした。
ジャガイモ6個とにんじん2本を乾燥野菜に。大好きな「昔ながらの中華ソバ」シリーズ横目にマルタイラーメン。
パウチのコンビーフは高価だが優秀。揚げ玉はカロリー増しに。行動中サッと身体を暖めるおやつ代わりにカップで
作れるマグヌードル。テルモスの熱い甘い飲み物は必須。
(3)個人装備 つりし:上下ファイントラック、その下に袖なし1mmゴム上着+1mmゴム半ズボン+上州屋3000円
鮎タイツを重ね着した。泳ぎの連続で皆が震えていたときでも比較的平気であった。(体脂肪の
おかげかも)
ファイントラックは水中では普通に水を通すので寒いが、乾きが早いので寝るとき快適である。
(特にパンツは有効)
ライフジャケットは暖かいしトップで泳ぐときあると心強い、嵩張るのが難点。
沢靴はフェルトであったが、ゴーロ歩きが多いのでアクアステルスでも良いと感じた、しかし
水中の岩はぬるぬるなので注意
その他
・沢の中でAMラジオNHK第一第二はなんとか聞けた。(携帯は不通)
ハギ 上 ファイントラックアクテイブスキン下着+Tシャツ+ウェット素材のラッシュガード+雨具&浸かりまくるところで
はライフジャケット
下 いつものモンベル下着+ファイントラックアクティブスキンタイツ+ファイントラックフラッドラッシュタイツ+いつものジャージ
*北アルプスだけどそこは沢、虫除けは必須。でも黒部のブヨには効かないらしく、グッチーの額
が凄い事になる。
夜は冷えるかと思ったが、シュラフカバーだけで暑いくらい(テント泊)。
グッチー 上着 ファイントラックベースレイヤー半袖と長袖、ファイントラックサードレイヤー、雨具
ズボン ファイントラックベースレイヤー長ズボン、ファイントラックサードレイヤーズボン、短パン
足回り 沢靴(フェルト)、スパッツ、ひざ当て
その他 ストック1本、手袋(手先の出るもの)
*ひざ当て、ストックは有効。雨具併用で寒さは凌げた。ファイントラックベースレイヤーの半袖は不要。
藪漕ぎには手袋有効。
5、状況
(1)初日 扇沢への途中、大町駅周辺のコンビニにより食料、酒等を調達。扇沢駅には、到着時(深夜)既に10数人
が軒下でシュラフでビバーク中。
テントは1張り。トイレは終日利用可。ビールで前途を祝い、我々も早々にビバーク。
トローリバスのチケット売り場には5時前から列ができ始め、5:30ごろには長蛇の列。値段は、一人1,500円
と(10Kg超の場合)荷物券200円。
2階乗車口には売店があり、オニギリ弁当の購入も可。トローリバス乗車の際には荷物は専用トラックに積む。15分
程度で黒部ダムへ。その間4人とも爆睡。
黒部ダムを渡り、平の小屋へ向かう。当初は、12:00の渡船を予定してのんびり行こうというリーダーの
指示だったが、先導するアベの快調なペースに10:00に間に合うかもしれないという野望?が芽生え、
一転駆けるように渡船場へ、間一髪間に合う。
しかし、このときの無理がたたり、後にアベの右足、グッチーの腰にダメージが発生する。下船後、長めの
休憩を取り、奥黒部ヒュッテに向かう。
奥黒部ヒュッテに向けては、当初は平坦な道だが、徐々に急な丸太階段のアップダウンの連続となり、アベの
右足がつらそう。天気は、朝から曇りだったが、ヒュッテへの途上時折雨がぱらつく。ヒュッテには13:00頃
到着。到着時グッチーが腰痛を訴え、テント設営後しばらく仮眠。その間、3人は小屋前で酒盛り。
アベは足の痛みもどこえやら、岩魚つりにいそしみ、大物をゲット。岩魚の炊き込みご飯となり、皆で
おいしく頂きました。
(2)二日目 天気は曇り、午後からは雨との予報。行ける所までということで、入渓。この日は、わが隊以外に
12人が上の廊下を目指すとのこと。そのうち、1隊が清水ガイド率いる5名。いくたびかスクラムでの渡渉を
繰り返す。水の勢いはさすがだが水温はそれほど冷たくない。最大の難所を前にロープでの渡渉。
なんとか口元のタル沢出会の先の最難関のゴルジュに到着。先着3名が右岸から泳いで渡渉にトライするが、
泳ぎきれず左岸をへつって何とか渡る。後続2名が渡り終えるのに約1時間。見てて、とっても寒そう
でつらそう。
わが隊リーダーも最初は右岸にトライするが流れが強く断念、左岸に転じて後続3名を引き寄せ、アベが左岸
岩壁上部を高巻、懸垂下降で渡る。アベが後続のためにハーケンを打ち最後尾のリーダーとフィックスロープを渡し、
ハギ、グッチーがフリクションノットで続く。このときグッチーが足を滑らせ滑落するが、ロープに救われ1段下のステップで
止り、無事通過する。
天気は予報と違い雨はまだ降らない。しかし、早めにテン場を確保すべく廊下沢の出会の高台を今日の
テン泊場所に決定。一旦、テントを張るが後続の遡行者が背面の崖地の崩落の危険を知らせてくれ、
テントを移動。用心が足りなかったことを反省。注意してくれた人はファイントラックの関係者とのこと。
わが隊が同社製品を身に着けていたことを喜んでいた。
嵐の前触れか、アベ、つりし両名人も釣果はなし。しかしながら、荒れた天気は訪れず、初の焚き火で
夕食を囲む。夜は満天の星で、明日の天気も期待できそう。
入渓初日。絶景、下の黒ビンガの前で山田リーダーがポーズを決める。
最難関の口元のタル沢に向かう手前の渡渉、既にハード。
口元のタル沢を突破後、やや余裕の表情。
(3)三日目 天気は、曇りでのスタート。テン場から広河原までは30分程度。こちらでのテン泊がベターと後で思う。
上の黒ビンガでは有名な滝を拝み、いよいよ2番目の難所、金作谷出会。アベが左岸へ渡る。
天気が変わり雨が降り出す。リーダーはしばし逡巡後、進むことを判断。3人が左岸へ渡る。
アベが左岸岩壁をトラバースし、後続はアベのロープで河から引っ張りあげてもらう。
その後、危ういへつりを経て、安全な河原に到着。雨が強くなり、すぐ高台へ避難。寒さに震える。
リーダーがフライを出し、しばしのビバーク。カップラーメンを分け合い体を温める。
雨をやり過ごし、3番目の難所スゴの淵へ。再び強雨となる中、右岸からつりしが飛び込み左岸へ渡る。
アベは水を嫌い左岸岩壁のトラバースを試みるが、断念。後続3名がつりしリーダーのロープで引き上げられ
無事渡渉。
ほぼ予定通り、ゴルジュ前の岩苔小谷出会の付近にテン場適地を発見。今日のテン泊場所とする。やはり、
両名人の針に岩魚はかからず。
上の黒ビンガの有名な滝の前でポーズ
(4)四日目 夜間から本降りの豪雨。見る間に増水し、これ以上ならテントの移設もと考えるほど。朝方には小降り
となるが完全にはやまず、午後の出発の可能性も失せ、11時に停滞を決定。
その後、晴れ間が出て暑いくらいの日差しとなる。
水量も大分減ってきてはいるが、まだ平水にまでは戻らず。
午後、エスケープルートの下見ということで、つりし、ハギ、グッチーが岩苔小谷を大滝付近まで遡上してみよう
ということで出発。
しばし、遡上したところで魚影を発見。つりし釣師が竿を出すと見事に3匹の岩魚をゲット。
直ちにアベ名人に伝えるとすぐさまつり道具を引っさげ参加し、やはり念願の黒部の岩魚をゲット。
今日は、都合6匹の収穫。焚き火で少ない酒を交わしつつ、岩魚の塩焼き、しょうゆ焼きを頂く。
また、岩魚の卵のしょうゆ漬けも頂く。珍味、珍味。
停滞。清流が濁流となる。怖ろしいですね。。
(5)五日目 水量は平水とは言えないが、だいぶ減っている。天候も、曇り。午前中に、ゴルジュ帯を抜けるべく
早朝の出発。最初のゴルジュは右岸をへつって通過。次のゴルジュは、水勢が強く、渡渉もへつりも困難。
リーダーが先行して右岸に高巻きのルートを探す。悪路の中、右岸の上部を高巻いていくが、下降しても
ゴルジュ帯の通過が見込めないため、尾根沿いにゴルジュ帯の先への高巻きを狙う。
しかし、笹薮をトラバースすることが困難なため、尾根へ出て、尾根伝いに大東新道に合流するルートを選択。
藪は濃く、笹は太く、先行のアベが四苦八苦しつつ、何とか尾根伝いに進む。途中(場所は定かに
覚えていないが)、グッチーが熊を目撃。笛を吹いたところ立ち去る。その先で大木の幹に刻まれた熊の
爪あとが見つかる。多分先刻の熊の縄張りなのだろう。さらに岩稜帯のやせ尾根を這い松に縋りつつ
進む。途中、軽量化のため、持参していたライフジャケット2着とつりしの沢靴を放棄。また、手痛い損失はアベ
の腕時計。藪漕ぎ中に喪失したようだ。グッチーもザックに下げていたビーサンを失くす。
とにかくピークを過ぎれば大東新道と交わるはずだが、ピークと思しき箇所を過ぎてもまたのぼりがあり、
どこがピークか不審に思っているなか、ここぞピークという箇所を過ぎたが登山道は現れず、落胆しつつ
あるとき、アベが先に一歩を踏み出したところ、そこが大東新道の高天原峠の分岐。歓声と共に全員
が登山道に出る。
これまでの7時間の藪漕ぎに比べれば、登山道は楽勝と思いつつも、疲れた体には薬師沢小屋までの
道のりは結構きつい。途中再会した黒部川は、水量多く、とても遡行できる状態ではなかったことを
思い知る。
薬師沢小屋で電話を借りようとしたが、同小屋には電話はなく、太郎平小屋へ無線で犬竹さんへの
伝言を電話連絡してくれるように依頼。今日は、小屋どまりとなる。
7時間に及ぶ藪漕ぎの末、ようやく登山道と合流。喜びの表情!!
(6)六日目 天気はよしという予報を聞いて出発の準備中雨が降り出す。山の天気は気まぐれ、すぐに雨はやみ、
われわれも予定通り早々に出立。
薬師沢小屋から太郎平小屋までは木道がよく整備され、沢筋を渡る際にも登山靴が濡れる心配もない。
太郎平小屋から折立までは約3時間の下降。途中、多くの老若男女の登山者と行き交う。先導する
アベのハイピッチなペースで、折立に10:50ごろ到着。
予約していたタクシーで立山駅に向かい、回送されたアベ車に乗り継ぎ、「楽今日温泉」へ。六日間の
汗を洗い落とし、名物の海鮮丼に舌鼓を打ち、帰京の途に。
渋滞もそれほどひどくなく、西大宮には19:20に到着。皆さん、お疲れ様でした。
6,参加メンバーの感想
つりし
・水量によりルートが変わるためガイド本に書いてあることは参考程度にしかならないので現地見ての判断が
大切 特に大枚はたいて購入したアドバンスDVD(志水氏監修)は撮影時期が秋(雪代がおさまり水量少)で
全く参考にならない。
・エスケープは岩苔谷、スゴ沢からあるらしいが記録を見ると簡単ではないとのこと。(未確認である)
・終わりに
総意を諮ったとはいえ天候不順のなか決行したのは決して褒められたリーダー判断ではない、しかしおかげで
多くのことを経験させていただいた。
テント場では地形図と睨めっこしながらこの箇所で増水したらどこを通るか頭を悩まし、
雑音交じりのラジオに耳を当てオリンピックで定時に天気予報を流さないことを罵った。
切立ったゴルジュの中で突然大雨が降り出したときは、逃げ場を確認しながら冷や汗もので遡行した。
そして普通一番の思い出になるはずだった核心部の突破が色あせてしまうほどの7時間に及ぶ大高巻き、
藪漕ぎで斜面をトラバースをするのは直上するより何倍も困難であることを思い知り、熊の縄張りに踏み込み
何度も笛を吹く。正直厳しかった、判断がぐらつくこともあった。でも一人ではなかった、傍らにはいつも3人
の強力なメンバーがいて、皆で一致団結しこの困難を乗り越えようと奮闘し、時にはその困難を楽しんだ。
おかげで念願であった場所に行くことができ、忘れられない思い出をもって帰ってこれました。
ありがとうございました。
アベ
上ノ廊下は渡渉や泳ぎの必要な、自分にとっては苦手なジャンルであることは理解していました。
でも、一度は足を踏み入れたい所、心の奥底で引っ掛かっているところでした。今回行くことが叶ったのは
つりしリーダーのお陰です。お世話になりました。
自分自身がリーダーとなって計画することはまず無いと思っているジャンルです。
この山行が終わって、呪縛から解放されたようである意味ホッとしています。
水流の脅威を味わいました。強烈な藪漕ぎを味わいました。天気に恵まれなかった分、忘れ難い2012年の
夏になったと思います。
現在はしっかりとした地図や装備があるので状況は遥かに有利ですが、登山道が無かった頃の北アルプスの
開拓気分を味わうことができたと思っています。
クラシックルートを辿る度に、先人者達の凄さを改めて感じます。
同行して下さったつりしリーダー、グッチーさん、ハギさん、ありがとうございました。
ハギ
○素敵だった
・景色のスケールの大きさ、素晴らしさ。遡行二日目(廊下沢〜立石)は見所満載、晴れていたらどんなにか
もっと...。せっかく晴れていた遡行初日は、渡渉でお腹一杯になってからは目の前(=水)しか見てい
ない。
・停滞日の(晴れてからは)ゆるゆる時間。
・黒部岩魚を釣り上げた名人二人。ご馳走様です。エスケープ偵察に出てよかった。
・B沢〜薬師沢小屋までの道。上の廊下のフィナーレを眺めつつの歩行は、それが澄み切った流れでなく濁流
でも、それはそれは清々しかった。
○辛かった
・遡行初日、口元のタル沢先ゴルジュで1時間近く、先行Pの苦労を見守ったこと。必要以上に萎縮してしま
った。
・15日の標高差500m/7時間の藪漕ぎ。トップの大変さに比べれば、なはずなのだが....辛いモンは辛い。
ライフジャケットを捨てたおかげで、引っかからなくなり、大分楽にはなったんだと思う。のだが....
やっぱり辛かった。
つりしさんの方向指示とアベさんのルートファインディングに感謝。
○終わりに
・黒部川上の廊下。
沢にはせっせと通っているだけで、万年ヘタクソ&ヘタレの私にとっては未来永劫、「いつか行ってみたかった
(でも行けなかった)」憧れの場所であり続ける存在だと思って
いた。行動中はみそっかす状態で、申し訳ない気分で凹むことも多かった。
あと15センチ足が長くて、あと15キロ重くて、もう少し泳ぎが上手くてへつりが上手かったらなぁ...(最後
のふたつはがんばる
余地あり?)
核心部だけでなく、行程通して安全に行ってこられたのは皆様のおかげです。つりしさん、アベさん、
グッチーさん、本当にありがとうございました。
皆で一丸となって一つの目標に向かって準備し、本番に臨めたことは自分の財産となり、忘れられない
6日間になりました。
グッチー
上の廊下は、予ねてあこがれつつも畏怖の想いが強く、現実のものとなるとは、まさに夢のようです。経験
の浅い私をメンバーに加えていただき、事前の訓練から、本番でのサポートまで、つりしリーダーには本当に感謝の念
で一杯です。また、しょっぱなから腰痛を訴え、足手まといになりながらも支えてくれた、アベさん、
ハギさん本当にお世話になりました。
上の廊下の難所といわれている3箇所を過ぎるまでは、ほぼ平水に近い状態で、何度も繰り返す渡渉も何とか
こなすことができましたが、四日目の増水時の水勢はすさまじいものがあり、五日目は平水よりやや水位が
高い程度と思ったら、もう渡渉すら出来ない状態でした。平水の時と増水の黒部川を実感できたことは、
何よりの経験と思っています。
また、立石奇岩群を見れなかったことは残念ですが、アベさんにくっついて行った藪漕ぎの高巻きも貴重な
体験です。
まさか、熊と会うとは思いませんでしたが。また、岩魚という口福にも恵まれ、一生の思い出に残る山行
でありました。
PS、もう一回行くかと言われると微妙? 大枚はたいたファイントラックは惜しい。
以上
日付が変わるまで雷を伴いつつ、降ったりやんだりを繰り返す。
r>