穂高連邦(畳岩登攀)
・日:2012.12.1(土)〜12.2(日)
・参加者:アベ(CL)、Sa山、サブ、たかたか、山のり、ミナト(記録)
・工程:9月15日 12:00上高地〜14:30テン場(岳沢)
9月16日 5:00テン場発〜9:10畳岩の頭〜10:00ジャンダルム〜11:30奥穂〜14:30テン場
9月17日 7:00テン場発〜8:30上高地〜帰京
ミナト
河童橋から穂高連邦を見上げると、正面に畳を立て掛けたような岩壁が目に飛び込んでくる。これが畳岩のスラブなのだが登攀記録は少なく、30年以上前のガイド
本にひっそりとルート解説があるくらいである。
当会きってのクライマーであるアベさんが畳岩から穂高を目指すと聞いて、最初は「畳岩ってどこなんだろう?」くらいにしか思わなかったが、その内容を聞くにつれ
俄然興味を抱き始める。傾斜は緩やかで、2級程度のフリクション抜群のスラブ壁が300メートル以上も続き、おまけに眺望も最高であるとのこと。そして、登りつ
いた稜線の目前はジャンダルム。もうこれは行くっきゃないでしょう!
9月15日早朝、いつもの西大宮駅に集合したのは、アベさん、サブさん、たかたかさん、ミナトの4人。これまたいつものようにアベさんの四輪駆動車にドカドカと
乗り込み、運転もアベさんに任せてくつろぎモードの3人。たかたか嬢なんて、乗ったとたんに爆睡する始末。本当に失礼な後輩たちばかりで申し訳ありません。
上信越道経由が功を奏し、3連休初日にもかかわらず車は順調に沢渡に到着。が、駐車場が大混雑で停められない。ここで、カト代表に続く二代目交渉人のサブさんが
大活躍。おかげで、タクシー会社の駐車場に停めることが出来ました。さすがですね。タクシーも割り勘にすればバスとたいしてかわらず、上高地にもあっという間に
到着するので、今後はこのアプローチがいいかもですね。上高地の喧騒を後にして、早々に岳沢小屋を目指して出発。途中、涼しい風が吹いてくる不思議な穴のあたり
で一服し、「あれが畳岩だ!」などと言いながら登っていくと、まもなく岳沢小屋に着く。
岳沢小屋のテン場は一言でいうと「最悪」。沢筋のゴロゴロのゴーロ帯で、雨が降ったら「やばいんじゃないの?」という感じ。そしてテントを張るには整地というよ
り、完全な土木作業を1時間も強いられ、こんな所で石積み作業を行うとは思ってもみませんでした。やっとこさテントを張り終え、小屋前のテーブルで乾杯していた
ら、後発のSa山さんと山のりさんが仲良く御到着。その後の入山祝いは大いに盛り上がったが、リーダーから「明日に備えてホドホドにするように」との指示あり。し
かし、それを無視したのがSa山、たかたかの呑兵衛ふたり。当然、天罰が下ったことは言うまでもない。(翌朝Sa山さんは額から流血が、たかたか嬢は何かを失くした
らしい)
9月16日快晴、暗いうちから行動を開始、天狗のコルへ向かう登山道を喘ぎつつ登り、途中で雪渓の残る沢を渡ると畳岩取付きに着く。取付きで登攀具を装備し、ア
ベリーダー、山のりさん、たかたかさんの班と、Sa山さん、サブさん、ミナトの班の2つに班分けされる。Sa山班の3人は言わずと知れた最強の雨降らしトリオではあ
るが、明るくなった雲一つない空を見上げる限りでは大丈夫だろう、たぶん…。
あれが畳岩だ!!
雪渓の残る沢の向こうが取り付きだ
まずは、左上に異彩を放つ異教徒ピナクルを目指して登攀開始。先行のアベリーダー班は快調に飛ばし、後続の雨降らし班をあっという間に置き去りにする。通常は左
のルンゼを詰めるみたいだが、落石が多そうなのでルンゼルートを避け、右の階段状逆層スラブにルートを取る。最初は滑ってしまいそうでおっかなびっくりであった
異教徒ピナクルをめざして
感動的なスラブの始まりだ
が、フラットソールのフリクションが面白いように良く効き、スイスイ登れるようになる。トップのSa山さんがルーファイミスしロープを1回使ったが、あとは最後ま
でノーロープ。異教徒ピナクルを巻くと、スラブは前後左右広大に広がり気分は最高潮に。快晴の中、どこまでも広がる底抜けに明るいスラブ、その真っただ中を自由
気ままに登り、振り返れば、あの喧騒の上高地を隔てて立ち聳える霞沢岳の絶景が。
スラブの真っ只中を自由気ままに登ってゆく
そしていよいよ登攀はクライマックスに達し、もうここは日本じゃないみたい状態
いよいよクライマックスへ
に!ああ、この記録を書いているだけでまた行きたくなってしまいます。300〜400メートルは続いた感動的に素敵なスラブも、やがてグズグズのルンゼに収束されてい
く。ここからは、大落石大会の始まりだ。3分に1回は「ラクッ!!」「また、たかちゃんかよ!」の怒声が繰り返されながら30分も登ったであろうか、そんなルン
ゼもやがて稜線直下の緩やかな草付き斜面に変わり、そして畳岩登攀は終わりを迎えた。大休止前に、まずはアベリーダーに、一同お礼の言葉を述べる。「こんな素晴
らしい山行を企画していただいてありがとうございます!」と固い握手を交わす面々の顔には、喜びと感動が満ち溢れている。事実、この後のジャンダルムや奥穂の記
憶が霞んでしまうほどの素晴らしい登攀であった。
その後、昨年あんなに感激したジャンダルムに登頂をしたのだが、今回はあまり記憶がない。頂上は360度の絶景であったハズなのだがうろ覚え、ロバの耳や馬の背の
難所もなんとなく通り過ぎてしまい、奥穂の頂上はただ混雑が酷かっただけしか覚えていない。
ジャンダルムはおまけかな?いや、感動しましたよ!!
紀美子平に向かう途中も、あの広大なスラブが思い出され、夢遊病者の
ごとくフラフラと歩いていたようだ。ただ、重太郎新道を下り、そろそろテン場も近くという時に強烈な獣の臭いを感じ、ハッとした。以前藪の中で、して間もない熊
の糞を見た時と同じ臭いだ。臭いの記憶っていうのは、けっこうハッキリと覚えているものだ。Sa山さんと山のりさんも、その獣臭に気付いたらしい。テン場のそばで
はあるが、月の輪熊は臆病なのでテントを襲ったりはしないので大丈夫だろう。
その夜の畳岩登攀成功祝いは大いに盛り上がり、そしてやはりと言うか、当たり前なのだが、例によってあの二人が最後の最後まで呑んでいたようであった。
登攀成功祝いの開幕だ。
9月17日薄曇り、今日は下山だけなので、昨日の余韻に浸りながらゆっくり下りましょうとのことであったが、Sa山さんを先頭にしてしまうという間違いを冒してし
まう。「そんなに早く下りたって、温泉がまだ開いてないよ!」と怒鳴っても、Sa山さんは鎖から放たれた駄犬のごとく、とんでもないスピードで猛然と駆け下りてい
く。余韻に浸るもへったくれもありゃしない。あっという間に河童橋に下り立つと、早々にジャンボタクシーを捕まえ乗り込んでしまった。タクシーの運ちゃんから、
昨日は穂高岳山荘から奥穂頂上まで3時間もかかったらしいことを聞いた。「畳岩では誰一人とも会わなかったことが嘘みたいだねぇ」と一同頷きつつも、間もなく沢
渡へ到着。そして、やはりと言うか、当たり前なのだが、誰かさんのせいで風呂屋の前で開店を待つハメとなった我々なのであった。
sa山
自称写真担当、sa山です、疲れてくると、登山中の核心の写真は相変わらず抜けが多く、後で見るとストーリーがつながりません(プロはストーリーを頭の中で作り撮
っている)のり様の写真と合わせてやっと繋がりました。
今回一度は行ってみたかった畳岩に、念願が叶いました。
山なぞまったく興味も無く、石川県(富山県と言う人が多いでここで言い訳しときます)から東京に来て二年目、初めて会社の同僚と行った山が槍ヶ岳〜穂高岳縦走、
それ以来ほれ込んで、この山域にかようように成りました。そして、こんなに素晴しい所だとは思いもしませんでした、もっと早い時期に、今のサブ様、タカ高様のよ
うな若い時期に、経験していれば、私の山人生も、変わっていたことでしょう。
今回は、阿部さんと、穂高屏風岩を狙っていたのですが、出戻sa山の、最近の山行での体調不良を見て延期としました。その代わり出された計画にテントキーパー覚悟
で、乗っかりました。
畳岩へは、岳沢から天狗のコルに向かう山道をたどり、途中から進路を右沢沿いに変え、雪渓を目指し進む、上部からの落石に気を使いながら、斜頚した壁に取付く。
上部は雪渓が運んできたガレが、日が照るとともに、落石の危険があるので、雪解け時期は注意が必要でしよう、場所により、一抱えも在る落石を起こす恐れが在り、
ルンゼ沿いにピナクルを回りこみ登るときは特に注意する。
回り込みを省略し傾斜はゆるいが直登すると、上部で行き詰まりザイルを出す羽目におちいる、左へトラバースし結局、ピナクルを回り込むルンゼコースに入るので、
省略しないほうが早い。
ピナクル後ろのルンゼを上りきると、ゆるい傾斜で草付き交じりのスラブを快適に登りきると、広大なスラブが広がる。何処でも登れそうだが、歩き安いところを詰め
てゆくと、水の滴るところにたどり着き、そこを一段上ると傾斜が落ち、見晴らしのいい広場状になる。ここで一本、正面に霞沢岳、上高地、右に天狗岳が槍ヶ岳のよ
うに聳えて見える。
そこから左の畳岩尾根のルンゼを目指し進む、傾斜も増し、ガレ登りになる、足元はすぐ崩れるので慎重に足を置く、途中高さ2mほどの狭まったところを3箇所ほど越
すが、コケが生えホールド、スタンスが小さく、かつ、すべりやすく慎重に行く、メンバーの力量を見てお助けロープを出したほうが良い。そこを抜けるとまもなく、
傾斜も落ち、ガレたルンゼから這松混じりへと続く。1本たて阿部様のりんごの差し入れに堪能。途中から左にトラバースし西穂高からの縦走路に合流。踏み後の付い
た道は歩きやすい。
後は道なりに畳岩の頭、こぶの頭を通過しT1フランケの登攀は時間が無く中止ということで、ジャンダルムを登り、ロバの耳、馬の背を通過し2週間ぶりの奥穂高岳頂
上。今回は祠での写真撮影に列が出来ているので、全員での写真撮影をカットし、紀美子平に向かう。
奥穂高岳から吊尾根、紀美子平を遠望すると、すごい絶壁をトラバースしている様に見えるが、実際は快適な道が続いている、途中2箇所ほど鎖場が出てくるが、幅も
あり傾斜もゆるいので困難なことはない、紀美子平からの下りはガレていて注意を要するが、重要部には鎖が張ってあるので、慎重に進めば良い、多くの人が入ってい
るので、岩のグリップはあまい、赤土の所もあるので雨天時はスリップ注意だ。「展望台」、「カモシカの立場」を過ぎ、40段ほどの梯子を降りると岳沢ロッジはもう
すぐだ。「カモシカの立場」を過ぎたあたりでクマの匂いを感じたが、4日前にこの辺でクマに遭遇し、威嚇された記録がある、鉢合わせせず助かりました。皆様、ま
た行きましょう。