袖沢南沢岩穴沢左俣~白石沢スラブ

期日:2017年10月14~15日
場所:奥只見・袖沢南沢岩穴沢左俣~白石沢スラブ
メンバー:つりし(L)ハギ・コバ・うえ・ノリ・つかみ(記)

コースタイム:(前夜泊)
一日目/
奥只見ダム駐車場7:20→ 袖沢~南沢~岩穴沢出合9:20→ 岩穴沢左俣10:00→稜線15:00→BP18:10
二日目/
BP7:00→ スラブ8:00~登攀完了9:00→岩穴沢出合12:50→南沢出合14:20→袖沢出合15:35→奥只見駐車場16:50
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「うわー!凄い!」山の領域で何度も発して来た言葉。
今回もスラブの姿を目にした瞬間「うわー!」と合唱団のように飛び交った。絶好の山日和、と云うよりはむしろ霧付きの曇り天気。それでも「うわー、凄い!」ホントに凄かった。
突如として現れるスラブは、まさに奥只見の秘境である。
ネットで検索しても、このルートを最初に開拓した「トマの風さん」と、次に行った「山登魂さん」の記録しか出てこない。(大いに参考にさせていただき本当に感謝です)
今回挑んだメンバーは6名で内4名が女子、そして今年沢デビュー者2名、このメンバーで未踏に近いルートにチャレンジ。途中、膝の痛みと戦ったハギさん。風邪から体調を崩したうえちゃん。細身の体に重いザックを担ぎながらも、泣き毎一つ言わない明るいノリちゃん。彼女はデビューしたてだが、どんな滝でもスイスイと登って行く。そして今年で四年目になるけど、未だ自立できずにいる私。こんな私達をリーダーが「女子が満身創痍で頑張りました」と評してくれた。なんだか嬉しい。ボロボロになりながらもたどり着き、歩きぬいた未踏(にちかい)ルート。

【前夜泊】

小出ICを降りて、近くにある公園の駐車場にて幕営。この日はつりし車のみで、19時に東京を出発。渋滞も眠気もなく22時前には到着。素早くテントを張り軽く乾杯。明日からの二日間にわたる山行、どうか晴れますようにと願う。曇り時々星空。23時には横になる。なんとも理想的な就寝となった。
一方、コバ車は夜中に出発。予定よりも約二時間も早くに到着した。この日の行動予定を振り返ると、早くに合流出来たことも大きかった。でなければ、藪の中でセルフ付きのビバークになっていたかもしれない。

【一日目】

奥只見ダム駐車場。他に駐車している車はなし。数匹の猿たちがこちらを見ている。10月とは思えない程冷え込んでいる。これから沢に行くと思うと、寒さが一層身に染みる。
さあ、出発。まず袖沢沿いの林道歩き。おしゃべりしながらゆっくりと歩きたい、そんな感じだが、これから向かう未踏の地にそんな余裕はない。時より男子に離されながらもスタスタ進む。

shiraishi01
袖沢沿いの林道

次に南沢のゴロー歩き。大きめな石の上を飛び乗ったり、避けたりしながら進む。単調な動きの連続。帰りもまたここを通るんだなー、とまだ始まったばかりの山行なのに下唇が突き出る。出発から約2時間のアプローチも終了。いよいよ岩穴沢の出合。ここから入渓となる。時間短縮と荷の負担を軽減するため、最初から沢靴で出発。なので差ほどの時間もかからず、装備を整え沢に入る。歩き始めてすぐに、秋の味覚、ぶなしめじを発見。テンションが上がった。

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ブナシメジをみつけました!

岩穴沢左俣を遡行。なだらかなナメ床が連続している。うっすらと曇りがちな天気の影もあってか、奥深い大自然の癒しに溶け込んでいく・・そんな感覚。スラブに行くまでのアプローチと思っていたが、想定外の楽しい時間を過ごした。5~6m級のナメ滝がいくつか現れる。お助けロープを何度か出してもらいながら超えてゆく。万が一などあってはならないので、慎重にと神経を集中しているが楽しい。しかし、進むにつれ、徐々に厳しく辛くなっていった。快適だったとは言え、ひざ下は当然濡れてるし、上半身も滝の飛沫などで濡れている。照りつける日差しはなく、体が冷えていく。慎重をきして何か所か、ロープを出す。6名の大所帯。登り終えるまで時間もかかる。
10m程のヌルヌルの滝は右側から必死に潅木を握りしめながら巻いた。
稜線に近くなったところで大滝出現。1段目15m2段目10m3段目35mの3段構えだ。見た目は階段状でも、取りついてみると簡単ではないので全てロープをだす。リーダーが先頭を行き、所処滝の飛沫を浴びながら登って行く。3段目は30mロープでは滝上までわずかに届かず左岸の潅木にフィックス、皆が登り終えるまで結構な時間を費やした。

shiraishi03岩穴沢
shiraishi04大滝

大滝を越し、沢形をしばらくたどると藪の平らな稜線に出た。計画より既に2時間押している。ここから本格的なやぶ漕ぎが始まる。道なき道を進む。離れると何処へ向かえば良いのかわからなくなる。なので必死について行く。30分ぐらい進むと、ちらりと白いスラブが姿を見せた。「うわー!」歓声が飛び交う。
喜びも一入、痩せ尾根や行く手を遮る潅木たち。秋の夕暮れはあっという間で、日がどんどん暮れて行く。稜線900m付近から稜線を外れ、白石沢の方へ降りて行く。17時頃、ヘッテン装着、辺りは真っ暗、励まし合いながら進む。途中落差2m程の岩の段差に遭遇。安全のためロープをだしてもらう。その間にリーダーは、幕営地まで降りるルートを確認しに行った。全員が段差を降りたころには、リーダーの姿は全く見えなくなってしまった。大声で呼びかけると彼方から返答が。何も見えない中、声がした方角を手掛かりに進む。まさにサバイバル。こんな経験したことなかったので、興奮した。リーダーの明かりが見えた。互いに明かりを手掛かりに誘導。無事に到着。予定より3時間遅れての到着。「あーよかった・・」ほっと、安心に包まれながらも、早々に設営開始。通常、薪拾いに時間を要するが、そこら中に薪があったので一時間もかからず、乾杯の席に腰を下ろすことできた。

shiraishi05痩せ尾根
shiraishi06スラブの姿が

【二日目】

日没後の到着となったので、昨夜は気づかなかった。藪から抜け出た場所が、ドンピシャだった。少しずれていたら、斜面が急なスラブ帯で登り返さないといけなかったか、もしくは湖でドボンになったかもしれなかった。
これもまた「うわー、凄い!」さすがだったのか、幸運だったのかいずれにせよ、全て含めて貴重な経験だ。

shiraishi07幕営地

朝7時、テン場を出発。白石沢を進むこと1時間でスラブにたどり着いた。沢を登り詰めた箇所でクライミングシューズに履き替える。少しだけ重くなったザックを背負い、スタスタ登りだす。5分とかからずダイナミックなスラブに囲まれた。
「うわー!凄い、すごーい!」300度に広がる大パノラマ。見渡す限りの大自然。私たちの他は誰もいない。寝っころんだり、ポーズを撮ったりと童心にかえる。ここに来るまでの長い過酷なアプローチが消え去るような錯覚さえ覚える。昨年、計画を立てたが天候に恵まれず断念。一年越しでのトライ。それも6名で。白石沢スラブにいる。快適なスラブ、見事なスラブだ。左ルートをコバさんが偵察に登った。稜線まで距離がありそうだったので、リーダーを先頭に中央ルートを進んだ。岩の表面が浮いてる箇所もあったが、ロープを出さずに1時間程で稜線に到着。そのまま稜線を右側に進む。

shiraishi08白石沢スラブ
shiraishi09みんなでポーズ

快適だったスラブとはうってかわり、稜線上は所々しっかりした藪漕だった。30分ぐらいしてから、しとしと雨が降りだして来た。霧雨近い雨だったが、止むことなく最後まで降り続けた。雨の中のスラブなど想像を絶する。ギリギリセーフだった。約4時間弱の稜線歩き、それから岩穴沢左沢を下降し(懸垂を4回くらいした)来たルートを戻って行く。

shiraishi10スラブの稜線
shiraishi11岩穴沢下降
shiraishi12南沢

出発も1時間遅れていたら。いや30分遅れていたら。方角がわずかにずれていたら。真っ暗闇の中ヘッテンの明かりで進んだ・・等々、一歩違いで大変なことになっていたかもしれない、今回の山行。こんな経験は滅多にない。あちこちにぶつけた痣や擦り傷。だけど、無事に終え逞しくなった気がする。それもこれも、的確にみんなを引っ張ってくれたリーダーつりしさんや、しっかり皆を支え見守ってくれたコバさんに感謝。そして、貴重な体験を共にした仲間たち、みんなにありがとう!

【装備】
・お助け紐:10m ・ロープ8㎜30m
・カム(使わなかった) ・ハーケン ・ハンマー
・沢靴(フェルト) ・クライミングシューズ