日程: 前日発 5月3−5日
メンバー: ハギ(L)、つりし、キム、トヨタ(記)
5月2日(土) 快晴
昼前東京発、車で銀山平に向かう。銀山平船着場にて前夜泊。
前日のうちに登山口を確認すると、宿泊場所から登山口まで向かう途中の銀山平船着場⇔石抱橋間は雪崩の危険があるため、夜間(18:30-6:00)全面通行止めとなることがわかる。
5月3日(日) 無風快晴
4時起床。1日目の行動時間の予測が難しいため、6時の開通に一番乗りできるよう、少し早めに車で向かうと、ゲートが開いており難なく通過できた。民宿「きこり」前の銀山平駐車場に車をデポし、6:20出発。
蛇子沢の左岸の尾根をルートとして選び、石抱橋付近の尾根の末端に取付く。
朝一で雪がやや固く、傾斜もあるので、安全のためアイゼンを付けて登り始める。
尾根に上がるとしばらくは快適な雪の尾根歩きが続く。
1256m付近から雪が少なくなり、雪があっても亀裂があり、そのため雪のない踏み跡を辿る箇所が徐々に多くなってくる。
しばらくすると、ルート上に雪がまったく見えなくなり、藪だけとなったところでアイゼンを外し、ピッケルやストックをしまう。
周りは白いコブシにピンクのシャクナゲ、足元にカタクリ、イワウチワと春爛漫である。だが、藪が背丈を越え、藪濃度がグンとあがると花どころではなくなる。
ザックに括りつけたピッケルやストックが枝に引っかかり苦戦する。藪漕ぎ慣れしているメンバーもこの状況には辟易としていた。
そのうち薮100%の急登となり、薮との格闘が始まる。
男性が体重で枝を押し下げ空間を作って抜けて行くような箇所を、軽い女性は抜けることができず別ルートを探り、逆に、女性なら通り抜けられる隙間で男性が苦戦するといったように、藪漕ぎ力が試されるようなルートだった。
1649m手前あたりから、また雪面が現れようになり、再度アイゼンをつける。やっと薮を抜け、快適な雪稜が現れるかと期待するが、案に相違し、雪と薮の繰返しであった。
無風快晴の急登&藪漕ぎで汗がしたたり、喉が渇く。手持ちの水がだいぶ少なくなってしまったので、雪を口に含みながら登る。
1800mを越えたあたりで樹林帯を抜け、荒沢岳までのルートが一望できる雪稜に出る。
雪はあるのだが、所々クラックが走っており快適な状態とは言い難い。安全を考えると部分的に薮を選択せざるを得ない箇所があり、最後まで薮と離れられなかった。ハギリーダーの情報で夏道を発見し、薮から解放される。
16:45本日の幕営地、荒沢岳直下の鞍部に到着。テント設営時あたりから少し風が出てくる。
5月4日(月) 曇りのち雨
4時起床。天候は曇りでやや風がある。
5:40空身で荒沢岳往復。荒沢岳までのルートには雪がなく、テン場から15分で山頂到着。山頂からの眺望は、360°の山・山・山の景色で、山の奥深さを感じる。これから縦走する中岳までのルートも見えるが、やや遠く感じる。
6:20テン場に戻り、荷物を持ち出発し、5分程で分岐に到着。灰吹山方面は広い雪面が広がり、快適な雪稜歩きとなる。
8:30灰の又山山頂。今日は面白いように距離を稼ぐことができる。このあたりから、登りの北面は雪だが、下りの南面は雪がなく、夏道を行くといったパターンになる。
9:50巻倉山通過、11:30兎岳到着。休憩後、兎岳の山頂から延びる夏道を進むが、どうも向かっている方向がおかしい。地図を確認すると、丹後山へ向かう分岐に入り込んでしまっており、15分程度ロスする。兎岳の山頂から更に少し戻ると、雪の中に中ノ岳に向かう分岐を発見する。
兎岳から中ノ岳まではほぼ雪道となる。兎岳からの下りで雨が降り出す。西の空も暗く、本降りになるかと思われたので雨具をつけるが、雨は暫くぱらついただけで止んでくれた。
小兎岳を経由し、一旦グンと高度を下げ、それから中ノ岳への長い登りが始まる。雨具を着ての登りは暑いが、風があるので助かる。雪庇やクラックを避けながら、黙々と登って行くと、中ノ岳頂上の手前で雪壁が現れる。
14:30雪壁の高さは20m程度、70°以上あると思われ、上部は更に傾斜が増している。雪壁にははっきりと登りのステップが刻まれており、先行者がいるようだ。
一番手のつりしさんがステップをトレースしながら登り始める。後続が続いて登るのはリスクが高いため、残りのメンバーは下で見守ることにする。ステップはまあまあしっかりしているようだが、上部に行く程、慎重を期している様子が窺える。
雪壁を乗り越え、つりしさんの姿が見えなくなると、こちらもホッとする。
安全を期して、ロープを出してもらうことにする。少し風があるため、ビレイヤーが寒いと思われたので、急いで登る。
(同じ時期にここを通過した他パーティの記録では、雪壁の西側をトラバースして巻いたと記されていた。)
雪壁を抜け、やや傾斜が緩くなった雪稜をしばらくいくと15:35中ノ岳に到着。
このころから少しガスがかかる。15:50中ノ岳避難小屋着。小屋には先行パーティがいた。彼らは前嵓岳経由で荒沢岳に登り、ここまで来たという。荒沢岳直下では2ピッチ程ロープを出したとのこと。先ほどの雪壁のステップは彼らのものと思われる。
その日は夕方から雨が振出し、夜は暴風雨となったが、快適なトイレ付の小屋で一晩明かすことができたのは幸せである。
夜は、GWの越後駒ヶ岳の山頂小屋でビールを売っていたという情報で、小屋でビールを調達し、幕営地でビール片手に越後の山並みを愛でようという話で盛り上がる。
5月5日(火) 快晴
一晩中小屋にたたきつけていた雨音が明け方には聞こえなくなった。5時起床。3日目は越後駒ヶ岳を経由して適当な場所で幕営予定なので、ゆっくり身支度を整え、7:40に小屋を出発する。
明け方の冷え込みで雨は雪に変わったようで、新雪が薄らと雪面を覆っている。雪もしまっており、快適に中ノ岳からぐんぐん下る。
9:40檜平方面はほぼ夏道なので、アイゼンをはずす。途中、雪面に黒い物体を見つける。熊?と思ったが、カモシカだった。
11:10天狗平到着。駒ヶ岳への途中で盆栽のような小さな桜が花をつけていた。
12:20山頂直下で再度アイゼンを付ける。
13:10越後駒ヶ岳到着。
中ノ岳からのルートですれ違ったパーティは1組だけだったが、さすがに百名山の越後駒ヶ岳には登山者やスキーヤーがちらほらいる。山頂で小屋の様子を尋ねると、小屋は開放されているが無人とのこと。ビールの調達ができないとわかり、メンバーのテンションが一気に下がる。話をした登山者は日帰りで、これから下山すると聞き、我々も下山しようかとの声が出る。
越後駒ヶ岳の山頂からは雪の斜面をどんどん下る。雪の状態もよく、下りは軽快である。
15時過ぎに道行山付近で休憩をとる。
目の前に3日間かけて辿ってきたルートが一望でき、最高のロケーションである。
蛇子沢の尾根は上部がかなり急登であることがわかり、二日前の苦闘が蘇る。荒沢岳から中ノ岳、越後駒ヶ岳にかけては美しい山並みが続いている。このまま山中で泊り、のんびり山を眺めながら一晩過ごすのも捨てがたいが、帰りの高速渋滞を考え下山することに決める。
途中、コシアブラを収穫しながら山から降りきると、白沢に出る。白沢の中州にスノーブリッジがかかっており、沢を渡り進んでいると、リーダーからこちらからは北ノ又川が越えられないとの声がかかる。改めて地図を確認するとその通りであった。後続パーティは白沢の対岸を川下に向かっている。白沢の対岸に戻り、残雪で斜面となった沢沿いを進む。何気に歩きにくい道を厭きるほど歩くと、石抱橋の手前に小さな橋がある。それを渡ると駐車場へ続く車道へ出る。17:30下山。
白銀の湯で3日間の汗を流し、銀山平船着場でテントを張り、ビールで乾杯した。
3日間とも10時間程度の行動となったが、山菜と薮と雪と山を楽しんだ、とても充実した山行だった。