大キレット

日程:H28.8.26~28
参加者:L・記録_ミナト、たけ

8/24の朝、勤め先のPCで1通の不穏なタイトルのメールを開いてみると、
『三つ峠が中止になったみたいなので、槍穂縦走に同伴してください。私は新人なのでリーダーやってください。ついでに計画書も。あと、8/26のAM5:00に上高地に集合です。私は夜行バスで行きます。ミナトさんも適当に来てください。 byたけ』
なにぃー、8/26って明後日じゃん!ということは本日中に計画書を作って提出しなきゃヤバイじゃん!でも今日が提出期限の見積書がまだ終わってないし、午後からサイトーさんとのエナジー練もあるし、どうしよう?少ない脳みそで考えた結果、以下のような不等式が成立しました。
[ 計画書 > エナジー練 > 見積書 ]
その後は、ルートや共同装備や食担やらのメールを十通近くやり取りし、何とか午後イチに計画書を提出し、そしてエナジーへGO!です。あれっ見積書は…まぁいいや。

8/26(晴れのち曇り):上高地~横尾~天狗原分岐~氷河公園~南岳小屋(幕営)

前夜、自車(会社の)で沢渡へ行き仮眠をし、朝一のタクシー相乗りで5時15分に上高地へ到着です。15分の遅刻ですが、たけちゃんはおにぎりを頬張りながら待っていてくれました。
「サイトーさんに文句を言われたから、ウェアーを新調しましたよ」などと話すたけちゃんとすっ飛ばし、あっという間に横尾です。ここでたけちゃんは水を大量に汲んでいます。疑問に思ったのですが、聞くと怒られそうなので黙っていました。横尾から先は登山道らしくなり、斜度も増してきます。次第にたけちゃんの息遣いが荒くなってきました。「大丈夫?」と聞くと、「み、水が、お、重い…」とたけちゃん。「何リットル背負ってるの?」、「炊事用4リットルと行動用1.5リットルと、ジュースと、えーと」…唖然とする私。ここはリーダー権限でプラティパを奪い取って私が1リットル程がぶ飲みし、残りは捨てさせました。「ザック、かる~い♪」と喜ぶたけちゃんですが、当たり前ですよ!
荷が軽くなったので快調に飛ばし、登山道が槍方面と南岳方面に分かれる天狗原分岐に到着です。休憩しながら何となく協議しました。
「俺は槍に4回登ったけど、たけちゃんは槍に登りたい?」
「2回登ったので、どっちでもいいですよ」
「ふ~ん、今夜のテン場を槍から南岳へ変更すると明日が楽なんだよなぁ…」
「槍に未練は無いし、今回は大キレット狙いなのでそれでもいいですよ~」
と、なんとなく日和った感じですが、このいい加減な決定が後の大キレットの成否を左右する重要な決定であったことを、この時はまだ知らない二人でした。
天狗原分岐からは、天狗池、氷河公園を経て南岳へ直行です。途中にクマ糞が大量にあり、しかも、数十分前と思われるものもありましたが、たけちゃんが怖がるので黙っていました。

クマ糞地帯クマ糞地帯
槍ヶ岳が見えました槍ヶ岳が見えました
やっと稜線へ出ましたやっと稜線へ出ました

15時頃に風力発電機のある南岳小屋のテント場に到着し、テントを設営したら取りあえずビールで乾杯です。食担失格者の汚名を晴らすべく久々に私が夕食を担当しましたが、パスタがビーフンみたいになってしまい、やはり失敗してしまいました。なんでうまくいかないのだろう…。

ビーフンのようなパスタビーフンのようなパスタ

8/27(雨のち曇りのち雨):幕営地~大キレット~北穂高岳~涸沢~横尾(幕営)

朝目覚めると、テントを叩く雨音はかなりの音量です。クラッカーとお菓子の朝食を食べながら今日の行動を検討します。大キレットを越えるか、昨日のルートで槍沢へ降りるか、停滞するかと思案していると、「7時頃には雨が上がるみたいですよ!」と、スマホで天気を見ていたたけちゃんの情報です。
「じゃあ様子を見ながら大キレットへ行ってみるか?」
「行くっきゃないですよね!」
大キレットへは、まず最低コルへ大下ります。所々に鎖があってけっこう急です。雨は上がっているのですが、岩が濡れて滑りやすいので慎重に進みます。たけちゃんは新調した靴のグリップが良いので喜んでいますが、調子に乗らないようにお願いしますよ!

大キレットへ突入します大キレットへ突入します

最低コルから長谷川ピークまでは普通の縦走路並みです。長谷川ピークが第一核心部となります。岩が濡れていなければ面白い岩稜だと思うのですが、今回はツルツルなのでちょっと怖いです。鎖を伝ってトラバースする所では、鎖が太すぎて手の小さいたけちゃんは苦労していました。長谷川ピークを過ぎるとA沢のコルで一休みです。同じく北穂に向かう3人パーティが休憩していましたが、長谷川ピークを第二核心部の飛騨泣きだと勘違いしていて、「飛騨泣きはこの先ですよ」と教えたらガッカリしていました。このパーティ、ちょっと心配です。
A沢のコルからは傾斜の緩いフェースと岩稜を鎖を頼りに50m程登り、そしていよいよ第二核心部の飛騨泣きに突入します。最初の岩壁は鉄杭を足場によじ登り、次の岩峰を右から回り込むと写真でよく見るステップ付のナイフリッジのトラバースです。ここでは我々も写真を撮ったりして遊びました。たけちゃんは長谷川ピークの方が悪かったと主張しますが、手の大きい私には同じくらいの感じでした。

飛騨泣きで遊ぶ飛騨泣きで遊ぶ

さあ、後は上空に見える北穂小屋目指して頑張りましょう。急登30分で小屋に到着です。朝出発してからここまで約2時間半でしたが、対向パーティは2組、同方向は1組と渋滞皆無の状況だったからですね。天気が良ければ渋滞は必至で、3時間以上はかかると思われます。
大キレット越えの成功をジュースで祝っていたら、急に雨脚が強くなってきました。
「昨日槍に行っていたら、今日の大キレット越えはダメでしたね」とたけちゃん。
「うん、この雨じゃ南岳から下りちゃっただろうな」
「私たちラッキーですね!」
と話していると、先ほどの3人パーティが元気に登ってくるのが見えました。ああ良かったです。3人に手を振ってから、北穂頂上へ向かいました。

北穂の証拠写真北穂の証拠写真

北穂頂上で証拠写真を撮り、この雨じゃ奥穂までの縦走は危険であることをたけちゃんに言い聞かせ、涸沢に下りることにしました。ここで注意がひとつ。北穂頂上からすぐの地点で涸沢方面へ下るペンキ矢印がありますが、これは東稜(バリエーション)への分岐です。涸沢へ下る一般登山道はそのすぐ先の標柱がある所ですので間違えないように!
土砂降りの涸沢にはテントが数えるほどしかなく、こんな寂しい涸沢は初めてです。涸沢ヒュッテのテラスでパンをかじりながらまた協議します。
「飛ばせば最終バスに間に合うかも。でも、家に着くのは深夜になっちゃうな」と私。
「この雨の中、上高地まで走るのはイヤですね…」とたけちゃん。
「俺も嫌だな」
「じゃあ、横尾に泊まりましょうよ。食料はいっぱい残っているし、ビールも飲みたい!」
横尾への道すがら、残雪期の横尾尾根の取付きを探しますが、何となく此処だろうと思う場所はありましたが確証は得られませんでした。来年の春にはぜひとも行きたいですね!
15時位に横尾のテン場着。広々としたテン場には我々のテントがぽつんとひとつ、ちょっと寂しいですね。

テントがぽつんとひとつテントがぽつんとひとつ

白馬でリュウちゃんから教わった「じゃがりこサラダ」をつまみにビールで祝杯を上げます。昨夜失敗した私は夕食を作る気が失せて、リーダー権限でたけちゃんの大量のお菓子を夕食とすることにしました。お菓子ウマー!

8/28(晴れ):幕営地~上高地~帰京

昨夜、徳本峠越えのケンちゃん達と徳沢で合流出来ないこと(ケンちゃん達に合わせると3時起き!)が分ったので、今日の起床はゆっくりです。さらに二度寝までしてしまい、普段の山行では考えられません。余っているお菓子を朝食とし(いったいお菓子をどれだけ持ってきているんだ?)、のんびりと上高地へ向かいます。天気は上々で、前穂東壁や明神も良く見えました。コバさんとエビちゃんが行った明神を仰いで、よくあんな所を登ったよなぁと二人で感心してしまいました。

朝の明神岳朝の明神岳

その後、せせらぎの湯へ行ったら、駐車場でケンちゃん達に遭遇しました。ケッチボーできて良かったです!

今回は天候不順により当初計画を縮小しましたが、第一目標の大キレット踏破は達成しました。雨の間隙を突いての踏破でしたが、初日に槍に向かっていたら達成出来なかったことを考えると、つくづく運なのかなぁと思ってしまいます。
また、反省点としては、計画が早急過ぎて会での十分な審査時間が得られない状況になってしまったことです。一般ルートでもあり、ダメ元で計画書を提出しましたが、承認して頂いたリーダーの皆さま、本当にどうもありがとうございました。今後はもっと早く計画を表明できるように、参加者のたけちゃん共々反省しております。