八ヶ岳(阿弥陀南稜・石尊稜)

八ヶ岳(阿弥陀南稜・石尊稜)

・日程:2015年12月28~31日

・参加:アベL、トヨタ、エビ

 

【記録】 エビ

○はじめに

山行中の準備、ルートファインディング、歩行、その他ほとんどにおいて劣っている私でしたが、とても充実した山行を堪能できたことにとても感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

計画、そして連れて行ってくださったアベLにお礼申し上げます。

また、様々なアドバイスで支えてくれたトヨタさんもありがとう。

山行中は、無我夢中で楽しんだことや、不慣れなアルパインクライミングに不要なところでロープを出したり、ピッチを細かく刻んだりしたことで、トータル何ピッチで何ピッチ目という記録ができず、特に印象的だった部分だけを抜粋して述べることをご了承ください。

 

○12月28日

朝7:00福生駅前に集合し、アベさんの車で向かいました。

計画では、舟山十字路から立場岳を経由して阿弥陀南稜、行者小屋か赤岳鉱泉をBCにして、横岳西壁を登り、美濃戸口に下りるので、舟山十字路か美濃戸口のどちらかに車を駐車し、行きか帰りにその間のタクシー移動が必要になります。

今回は、帰りにゴタゴタするのが嫌かなということで美濃戸口に駐車し、先にタクシーを利用することにしました。(コスト的には、舟山十字路に駐車して、後でタクシーを利用した方が、駐車代とられない分若干得かもしれません)

途中のSAで朝食をとったりしながら渋滞なく順調に美濃戸口9時過ぎに到着。準備をしてしばらくタクシーを待ちましたが、この日はいっこうに来る気配がありませんでした。山荘で呼んでもらい、30分ほど待ち、タクシーで舟山十字路に移動。車が数台停まっていました。

10時半頃から歩き始めました。印象としてはとにかく雪がない!これでは楽しみにしていた阿弥陀南稜の雪壁は期待できないな…、どころか幕場での水が心配になり、念のため途中の沢で水を汲んで運びました。少しずつ雪が現れはじめて、立場岳より先は、水をとるのに十分な積雪量があったので、不要でしたが、ガスの節約ができました。先まで様子を見に行き戻ったりしたので15時半頃幕営。

天気は、快晴で明日登る予定の阿弥陀南稜が近くによく見えました。やはり雪は少なく、岩稜むき出しなのが、私には、恐ろしく感じました。

1_1日目_アプローチは快晴

 

○12月29日

4時起床、生憎の天気でした。朝食を食べて、撤収、6時頃ヘッドランプをつけて出発しました。吹雪でなかなか明るくなりません。取付き直下にテントが1張ありました。(先に行きますよ)と心の中でつぶやきながら、小さめの声で「おはようございます」と言って通り過ぎました。7時過ぎ阿弥陀南稜に取付きました。

前日は、ピークまでの尾根がずっと見えていたのに、当日は、吹雪で視界不明瞭でした。でも明確な踏み跡を辿ってほぼ夏道を順調に進みます。トヨタさんの記憶にある冬の阿弥陀南稜ルートとは、どうも違うようでした。しばらく行くとワイヤーが現れ、その先のルンゼに続いています。しかしそこから下に下りている踏み跡もあります。とりあえずワイヤーがどこまで続いているのかルンゼをのぞき込むとすぐのところで終わっていました。その先にはなんだか楽しそうな斜面があります。

上と判断して、ルンゼを登ることにしました。「ロープは必要か」と問われ、先ほど見た感じでは、必要と思いませんでしたが、距離が長そうなので、途中行き詰るのが嫌なのと、滑ったら止まりそうになかったので、吹雪でとても寒いところでのビレイは恐縮でしたが、お願いして登り始めました。

ワイヤーを掴んで乗り越して、ルンゼに入ると、思っていたとおり締まった雪で登りやすい。しかしピッケル・バイルが冷たすぎて指が痛く掴んでいられませんでした。時々手を離して休みながら、それでも順調に20Mほど登り、そろそろランニングをとっておきたいと思い、探すと、しっかりした氷があったので、お守りにと思って1本だけ持ってきたアイススクリューをねじ込んでみると、気持ちよく入っていきました。そのスクリューも左手に持っているバイルも頂いたものです。「中村先生ありがとうございます」とルンゼの中で一人つぶやきました。あとからアベさんに聞くとリングボルトがあったようですが気付きませんでした。

さらに10Mほど上がり、そろそろ30M、ピッチ切れるところを見定めたい。尾根に木が立っているのは見えるが、30Mほどありそうなのでロープが足りない。あと10Mくらい上がったところに岩が出ているのが見えるので、そこを目指して登りました。しかしついてみると岩が丸く出ていて支点をつくれません。仕方なく尾根の低い方を目指してトラバースしていると雪から出ているハイマツを見つけたので、沢登りで覚えたアンカーをつくってコールしました。ATCを持ってこなかったので1人ずつムンターヒッチで二人を確保しました。寒さで全身が痛かった。登ってきたアベさんがそのまま尾根まで上がりました。

そのあとは慎重に歩けば、特に危険個所はありませんでしたが、トラバース部分で足元は歩ける幅があるものの、岩が少しせり出していて私は怖かった。

間も無く10時半ごろ阿弥陀岳山頂に到着しました。山頂は広く、お地蔵さんなど色々ありました。時間は短かったのですが、吹雪と寒さで辛く、やはり山頂に到着した時にはとても嬉しかった。

登頂の記念撮影をして下山。余裕があったので、行者小屋は通り過ぎて赤岳鉱泉を幕営地としました。

下りてくると悔しいことに午後はずっと快晴でした。時間が早かったので、翌日に予定していたアベさんの餅入りもんじゃを1日前倒しして堪能。雪の状態などから、翌日は石尊稜を登ることになりました。

夕方テントから出ると八ヶ岳の西面がとてもきれいに見えていました。

2_2日目_生憎の天気での阿弥陀南稜 3_2日目_阿弥陀岳登頂

○12月30日

4時半起床、6時半頃テントを出て石尊稜を目指します。天気は快晴。赤岳鉱泉から中山乗越方面に少し進んで、橋を過ぎたところから道を外れた踏み跡を辿っていくと、途中に「石尊稜」と書いてあるピンクテープなどもあり、雪が少なくラッセルなしで取付きまで到着しました。

石尊稜には前半と後半に核心的なピッチがありました。前半の核心部は、取付きからロープを出して3ピッチ目、前2パーティ7人が岩壁で渋滞していました。後ろからも2パーティが追ってきて大盛況です。順番待ちをしていると、横のルンゼでアイスクライミングをしているパーティが見えました。そこは切り立っていて、上まで行くのであれば、かなり厳しそうでした。

それに比べるとこれから自分が登る方は、傾斜が緩くて、ガバホールドも多そうでした。

順番を待ってようやく登り始めます。左右2本のルートがあり、先に空いた左のルートに取付きました。下から見ていた時には、ガバばかりと思っていたのに、取付いてみると、グローブをした手では掴めるようなホールドがなく、緊張しました。岩の出っ張りをピンチ気味につまんで、バランスをとりながらアイゼンの前爪でなんとか登っていきます。ところどころ爪が4~6本置けるところにホッとしながら、3Mほど上がるとハンガーがあったので、ランニングをとり一安心。残置のハーケンにもランニングをとりながら上がると、ボルトと残置ロープのある小さなテラスがありました。前パーティは、ここでピッチを切っていましたが、ここまでまだ20M弱、ルート上の先あと20Mくらいのところに支点となりそうな木が見えているので、ここでは切らずそのまま登ります。見当をつけた木のところで前パーティもビレイしていました。

ロープ足りるなと思い進みましたが、スリング・ガチャ類をあまり持っていないことにあとで気付きました。確保のことも考えると少しまずいなと思いながら、ランニングに使う予定ではなくアイススクリューを掛けていたビナやギアラック代わりでピッケル・バイルにもつなげて肩から掛けていたスリングなども最終的には全て使い切ってギリギリでした。支点に使おうと思っていた木の直下の乗り越しが、ホールドなく少しいやらしかったですが、その直前の立ち木でランニングがとれていたので、雪なのか土なのかにバイルをきかして思い切って登りました。

「やった」と安堵感と小さな達成感を抱えながら1人ずつ二人を確保。二人が登ると、そのすぐあとにフリーソロで登ってきた男性がいたことには衝撃を受けました。しかも予定ではなかったのだけど、天気が良いので登ることにしましたと言って余裕の様子でした。

そこからしばらく難しいところもなかったので、渋滞なく順調に登りました。少しだけコンテで登りましたが、3人でのコンテに不慣れで、どうも煩わしかったので、先に登らしてもらい、そのあと二人一緒に登ってもらいました。前日ATCを持っていなかったので二人同時に確保できないと思っていましたが、アベさんからエイト環でもできることを教わり早速実行しました。また、それよりもさらに断然早いボディビレイを多用しました。ルートが屈曲していたりして、登りやすくてもロープが重いと後ろに引かれる恐怖心があって、細かくピッチを切らせてもらいました。

先の岩壁で前パーティがつまっているのが見えて、また核心的なところだなとわかりました。しばらく順番待ち、高度感があり怖そうです。アベさんに「高度感はあるけど、下よりホールドが大きくて登りやすいよ」と言われて、登ってみるとそのとおりでした。

そこで核心は終わり、山頂少し下でロープをしまって登頂しました。時間は、我々でなんとか16時前。まだ後ろにいる数パーティが心配でした。

渋滞で順番待ちもありましたが、快晴の中での快適なクライミングをフル1日できたことに大満足でした。時間の短い地蔵尾根の方から下りて赤岳鉱泉のBCに戻りました。途中で日が沈んでしまい、テントについたのは17時を過ぎて真っ暗でした。

4_3日目_石尊稜前半核心部の岩壁 5_3日目_前半核心部終了点付近_ここの乗り越しわるかったー OLYMPUS DIGITAL CAMERA

○12月31日

7時少し前に起床して、朝食を食べて、撤収。車を駐車している美濃戸口に下山。

スマホとカーナビで探して、近くの「もみの湯」に寄って帰路へ。入浴料500円、きれいでよかったです。

年末をとても充実した山行で締めくくれたことはとても幸いでした。

 

【感想】

アベ

10月に小同心クラックを登った時に、八ヶ岳はいい山だなと改めて感じました。

その時に積雪期も訪れたいと思い、参加希望者を募ったところ、海老原さんと豊田さんが参加表明してくれて今回の山行になりました。

今回計画した「阿弥陀岳南稜」も「石尊稜」も20年以上も前に行ったことのあるルートですが、ほとんど記憶に残っていません。

さらに今回は雪が少なく、全く違うルートを登っているように感じました。

雪が無い分岩が露出し氷もベルグラ状で、雪が付着している状況より難しく感じました。

海老原さんが全てリードを担当してくれました。見事だったと思います。

さらに経験を積んで、今後入会してくる後輩たちをリードしてくれることでしょう。

 

八ヶ岳は冬季でも入山者数が多く、静かな山とは言えませんが、侮れない山であることは間違いありません。

暖冬と思っていましたが、八ヶ岳はやっぱり強烈に寒い所です。

待ち時間が長く、手足が冷え切ってしまい、それが一番辛い記憶です。

自然相手のバリーエーションルートを相手にする場合は、スピードが大事だと改めて思います。

それなりの技術と経験を積んでから臨んで欲しいと思います。

「石尊稜」で我々の2つ後のパーティーは、稜線に抜けるのが真夜中になったようです。

今回は自分にとって想定以上に、充実した山行になりました。

あと何回こんな山行ができるかな・・・?

山行を共にしてくれたエビちゃんと豊田さんに感謝。

二人とも酒が好きだったら、もっと良かったんだけど。

 

トヨタ

夏山や縦走も楽しいですが、自身の能力をフルに使って登る冬のバリエーションも大好きです。

いつまでできるかわかりませんが、今回の機会を与えてくださったアベさん、エビさんに感謝です。

八ヶ岳 小同心クラック

  • 場所:八ヶ岳 小同心クラック
  • 日程:平成27年10月3日~10月4日
  • メンバー:サイトーL・アベ代表・かおり(記録)

10月2日 22:00 西大宮駅集合のはずが、電車トラブルが相次ぎ、私が30分も遅刻。

不吉な予感。おおらかなアベさんは笑顔で迎えてくれる。サイトー氏に助手席を任せ後部座席で起きていようと思ったが寝てしまった…

深夜1:00過ぎ美濃戸口着。そこからダートの悪路をアベさんの四駆がグイグイ登る。すぐに赤岳山荘駐車場に到着。まだ深夜なので駐車場は数台の車のみ。良い場所をみつけテントを張り就寝。

 

10月3日 晴天☀ (赤岳山荘駐車場~赤岳鉱泉~小同心クラック~横岳~硫黄岳~赤岳鉱泉)

5:00 起床。5:25出発。途中朝食をとりつつも7:00に赤岳鉱泉に到着。テント設営を済ませる。

7:35 赤岳鉱泉を小同心へ向け出発。硫黄岳方面の登山道よりすぐに大同心への分岐がある。緑のロープをくぐり、目の前にそびえる大同心基部へ。

①「大同心への分岐。緑のロープをくぐる。道標有り」①「大同心への分岐。緑のロープをくぐる。道標有り」

②「分岐の道標。緑ロープの横にある。」②「分岐の道標。緑ロープの横にある。」

踏み跡も明瞭だが、最初の沢筋を少しあるくと左側の山道への分岐がある。見逃し注意。

大同心基部で、装備を装着し小同心へ向け右へトラバース。

③「大同心の基部。これから左へトラバース」③「大同心の基部。これから左へトラバース」

④「背景は大同心の側面。あれを登る人がいるのか・・・」④「背景は大同心の側面。あれを登る人がいるのか・・・」

先行パーティも無く。後ろを振り返ると北アルプスの端までクッキリと見渡せる。絶景である。

9:00 小同心の基部につき、アベさんがリードで登り始める。

私は、この時すでにかなり緊張していてトイレの回数と心拍数がヤバい。

西面なので、日が当たらず寒い。

ガッチガチに緊張している私とは反対にアベさんはスイスイ登る。真横のサイトー氏の冷たい視線が・・・

1ピッチ目 : チムニー手前のビレー点で切ってもらう。支点あり。

2ピッチ目 : チムニーを抜け、その上部で切る。支点あり。

草付きを歩く。

3ピッチ目 : 横岳頂上直下の壁で、パーティによってはザイルを出さない人もいるようだが、私がいるのでザイルをだしてもらう。ホールド・スタンスともにあるが、高度感がすごい。

10:25小同心の頭着

⑤「小同心の頭にて。震える手でポチリ」⑤「小同心の頭にて。震える手でポチリ」

ホールドはしっかりしていて、とくにもろい所は無い。

11:00頃 横岳の頂上(2829m)にダイレクトに突き上げるので、一般登山客から「どっから来たの?」と驚かれた。緊張してて口が回らない為、格好よく答えられないが。

頂上で、装備を外し硫黄岳へ向かう。

初めて行く硫黄岳だがすごい横殴りの風に、ヘロヘロになっていた私はかなりダメージを受けた。硫黄岳の点在するケルンにすがり付きながらなんとか頂上へ。そうそうに退散し、下山する。

12:00 赤岩の頭で大休止。快晴無風。横岳山頂が嘘のように穏やか。

⑥「赤岩の頭付近。快晴無風.涅槃仏の様なアベ氏と赤岳」⑥「赤岩の頭付近。快晴無風.涅槃仏の様なアベ氏と赤岳」

⑦「大同心の様な頭部フォルムのサイト氏と北アルプスの絶景」⑦「大同心の様な頭部フォルムのサイト氏と北アルプスの絶景」

13:30 赤岳鉱泉着。下山するか?との声にどうしても一泊したいと主張。ゆっくり宴会の準備。

ビールで乾杯し、阿弥陀から赤岳・大同心を眺めつつ宴会。

 

10月4日 晴天☀ (赤岳鉱泉~赤岳山荘駐車場~諏訪湖の温泉(片倉館)~帰京)

5:00 起床。ゆっくり準備し、景色を担当して7:30テント場を出発。

8:50 赤岳山荘駐車場に到着。

諏訪湖畔の温泉片倉館により、食事をして帰路へ。

念願の外岩ルートを触ることが出来ましたが、練習不足・度胸不足・勉強不足をかみしめ落ち込んでの帰京。もう少し頑張りますので、また懲りずにおつきあいくださいませ。

お二方、本当にありがとうございました。

2015年GW 春合宿穂高

• 場所:穂高
• 日程:平成27年5月3日~5月6日
• メンバー:かおり(L・記録)・イタ・トン + 先発隊サブL・笹田・カトー
• 記録
5月3日 晴れ ☀ (新宿駅発あずさ1号~松本駅~新島々駅~(バス)上高地~徳澤)

夜行バスを使わない往路は初めてで、松本電鉄上高地線に乗るのが楽しみだった。
期待を裏切らない松本電鉄のローカルっぷりとサービスにテンションが上がる。
新島々駅にてバスに乗り換え。ゴールデンウィークとあってかなりの人混みだ。
上高地に入ると、登山客と散策の観光客で賑わっている。
12:20 入山届をだして、3人で安全を確認後歩き出す
14:30 徳澤園到着
夜から天候が崩れると予報が出ていて、地面が芝生の徳澤園のほうが快適だとイタさんの名判断により徳沢泊に決定。テントは沢山張られているが、快適な場所を見つけ、設営。
サルがたくさんいて、テントの食料を食べに来ているらしい。残飯やごみ処理に注意したい。
16:00 sa山さんに会う
夕食の準備中に、ヒョコっと現れた。いつものごとくちょっと含みのある笑みをニヤっと浮かべている。
3人で興奮して再会を喜ぶ。本人はすでに一杯やっているらしく、テレながら「娘夫婦を連れてきた」と徳沢に居る訳を言う。当たり前のように娘さん夫婦も引き入れ大宴会。

写真①「あれ…あっつ!!」写真①「あれ…あっつ!!」

5月4日 曇りのち雨☂ (徳沢~涸沢)

7:00 sa山さん一家に見送られながら、徳沢を出発する。
天気が崩れる予報だ。早めに上高地を目指す。
8:30 横尾通過
途中、アイゼンを装着しようかどうしようか迷いうあたりで、雨粒があたる。雨具とアイゼンを着用。
どんどん天気が悪くなり、視界が良くない。涸沢を臨む絶景が見えない。
間近まで行かないと鯉のぼりも見えなかった。
13:00 涸沢到着
風と雨の中、先発隊テントの目印を探す。しばし探した後で、受付の目の前に陣取ってくれていたのを発見。
雨足が強まる中で設営。テントの中までビショビショになり靴も脱げない。
3人で気持ちまで湿気ってしまう。トンちゃんは初めての涸沢で一番悲惨な春の雨である。
先発隊が優しく「こっちのテントに来い」と声を掛けてくれるが、しばし3人で固まり無言。
「明日も、こんな雨だったら・・・下山しますか?」と誰が先に言いだしたのだろう?3人で大きくうなずく。イタさんと「こんな悲惨なテン泊もあまり無いよね~」と妙なテンションで盛り上がる。
先発隊と相談し、ケッチボー宴会をその日に行う。昨日に引き続き大宴会。

5月5日 晴れ☀ (涸沢BC~奥穂高~涸沢BC)

テントの外で前穂北尾根隊の声がして、飛び起きる。見送りもしないで爆睡しているとは?!
万全の準備を整え、勇ましい出で立ちの仲間たち。月が明るく、北穂に影を映し出す幻想的な涸沢を背に歩き出した。
朝食はイタさん特製の餅入雑煮。美味しい。
7:00 明るくなり、雪の状態が良くなるのを待ちアズキ沢に向かう。
30~40分歩いた頃だったか、長野県警の方が駆け上って来た。道をあけて追い越してもらう。すぐに人だかりが見え、事故が有った事を耳にする。簡単な消毒薬とガーゼを持っていたため、声を掛けに行くが、すでに心肺停止状態で蘇生措置を40分以上施している。涸沢から医師も上がって来て、手伝えることは無いと。
仲間の所にもどり、状況を伝えて、登頂するか意志の確認をする。逡巡するが登るとの心強い返事が返ってくる。頼もしい。
事故者の無事を祈りつつ、呼吸を整えさらに歩行や態勢に注意して歩きはじめる。救助へリが来るからなるべく距離をとりたい。
11:00 奥穂高山荘到着
お互いの装備を確認し、いよいよ難所である奥穂高山頂を目指す。
山頂直ぐの鉄梯子は露出していて、しっかりと握れる。つづいてのルートは凍結していない岩を選びたいが落石を起こすので、その右サイドの雪面を行く。
前日の悪天候で下山した人が多いらしく、あまり人が居ない。自分たちのペースで歩くには丁度良い。
快晴・無風の最高コンディションの中奥穂高山頂へ。
12:30前日の悪天候が嘘のように、素晴らしい奥穂高山頂である。360度の絶景。
前穂頂上にいるサブちゃん・笹田さん・カトーさんと無線でつながる。
2パーティほど頂上にいた他の登山者も前穂との無線を一緒に喜んでくれる。
大休止の後、名残惜しいが下山を開始する。登り以上に気を使い、少しでも危ないヶ所はザイルを出し下山する。奥穂の小屋まで慎重に下山した後、日暮れも迫っていたので早々に涸沢に向けアズキ沢を下る。

写真②「イタさんの貫録とは対照的にトンちゃんが乙女ちっく。奇妙な3人組にも他の登山客は写真②「イタさんの貫録とは対照的にトンちゃんが乙女ちっく。奇妙な3人組にも他の登山客は

17:15 涸沢BC到着
無事に登頂できた喜びを仲間と喜ぶ。18:00頃前穂のサブ隊が追って無事に下山。全員で無事を喜び大宴会となる。

5月6日 晴れ☀ (涸沢BC~上高地~帰京)

7:00 涸沢出発
晴天の中、惜しみつつ上高地にむけ下山開始。
何度も振り返りながら、青空の中雄大にそびえる奥穂を背を向ける。

写真③「無事に合宿最終日!ようやく全開の笑顔のメンバーと」

12:30上高地着
バスターミナルは登山者と観光客で賑わっていた。
バスの時間を確認し、チケットを取るとカトー氏・笹田氏以外の全員で温泉へダッシュ。
入浴時間はわずか10分ほどしか無かったが、汗だけでも落としたい面々は河童橋の人の山を越えて風呂へ。
往路と同じく新島々でバスを乗り換え松本へ。蕎麦を食した後、帰京。
今回も、穂高に来て無事に下山できたことを、仲間に感謝したい。

北アルプス 赤木沢~黒部五郎岳~双六岳

  • 場所:折立~赤木沢~黒部五郎岳~三俣蓮華~双六岳~新穂高温泉
  • 日程:平成27年9月19日~9月22日
  • メンバー:サブL・かおり(記録) + 合流:アトムL・トヨタ
  • 記録

 

 

9月18日 夜の新宿バスターミナル(新宿発~富山駅前)

シルバーウィーク前夜。富山電鉄の夜行バスをなんとか確保でき、3列シート居心地の良い夜行バスで富山駅へ向かう。仕事が切羽詰っていたサブLもなんとか間に合う。

 

9月19日 土砂降り☂ →☀ (富山駅~有峰口(タクシーにて)~折立~太郎山~薬師小屋)

 

AM5:30 富山駅に近づきバスのアナウンスで目を覚ますと、外は土砂降りの雨である。

駅が停留所に停まると、とりあえずオフィスビルの軒先に避難し、100mも離れていない富山電鉄の駅に行くのに雨具・ザックカバーを着用する…そして地下道を使う。

6:11 発の電鉄に乗り込み、雨を引き連れて有峰口へ。雨女の話題でもり上がりつつ、携帯で天気予報をチェックし、希望を見出そうとする女2人。

有峰口で予約していたタクシーに乗車。運転手さんに「なんで降っているのかね?」との疑問に苦笑い。

9:05 折立出発

雨具を着用して、樹林帯の中を登る。すごい人混みで40人近い団体が3組いた。

14:30 太郎山到着

樹林帯を抜けたあたりから、雨があがり、天気が回復。

太郎平について、トイレ休憩から戻るといっきに視界が晴れ、目の前に雲ノ平から水晶・薬師などの絶景が広がる。雨女な2人はあまりのお天気の回復っぷりに一生涯の運をここで使い切ってしまうのでは?と不安がる。テンションはMAXである。

赤や黄色に変わり始めた風景を楽しみつつ、薬師沢小屋へ下る。

3:30 薬師沢小屋到着

テント泊禁止のため、素泊まり。小屋は混雑の為、自炊は外でするように言われる。お天気も良いのでウッドデッキに陣取る。乾杯する直前サブLが床板を踏み抜く。釘が留っていない板の端に乗ったのだ。隣にいた男性達が美女の事よりビールの心配をする。サブLの足のケガよりビールが未開封だったことを喜ばれた。優しさには感謝。足も無事だし気を取り直して乾杯。最高に美味いサブLの夕食で大満足の一日が終了。

 

9月20日 晴天 ☀ (薬師沢小屋~中又乗越~黒部五郎岳~黒部五郎小屋)

 

5:20 薬師沢小屋わきの階段を下り、黒部川に入渓する。天気も良く、先頭を歩くサブLの後を何とかくっついていく。左岸へ右岸へと何度かわたると赤木沢の出合へ。

先行パーティを発見。後を追いそうになるが、サブLが「あれ?ここ赤木沢出合じゃん?」と左岸へ。どうやら、黒部川本流を詰める人たちのようだ。

その時、後ろから名前を呼ばれる。後続パーティの一人がサブLの友人でしばし盛り上がる。世間は狭い。

写真①「赤木沢出合。楽園です。」写真①「赤木沢出合。楽園です。」

天気も良く、気温が高いので寒さは無い。水は冷たいが。

順調に前を遡行するリーダーにピヨピヨとついていく。ちょこちょこお助け紐を出してもらい無事に大滝へ。

F7:大滝はザイルを出し高巻。

その後小滝とナメが続き、分岐へ。

資料①「汚い手書きですが、遡行図」

 

左右でしばし迷うが、磁石と周囲の状況で左側を詰める。

水が途切れる前に給水。登山靴に履き替え赤木岳と黒部五郎だけの間にある最低鞍部を目指す。

最後にほんの少しだけハイマツをこぐと、サブLのルーファイが神業で中俣乗越の標識の目の前に出る。

しかし、ここからが長く、黒部五郎岳の登り・小屋までの長~い道のり。私はバテた。

荷分けしてもらったにもかかわらず、黒部五郎岳頂上直下の急登がキツい。沢装備を全て捨てたいと本気で思った。頂上にようやくつくと、一面ガスがかかり眺望無し。五郎・・・つれないオトコだ・・・

時間も押しているので、早々に小屋へ向け急登を下る。

一瞬黒部五郎小屋が見えるが、すぐに見えなくなる。ここからが長い。アップダウンはそれほど無いが、疲労困憊の体には見えたはずの小屋が中々着かないのにはメンタル的にヤラレル。五郎小屋・・・つれないお方・・・

5:35 日暮れギリギリで到着。

テント場が溢れかえっていて、張れる場所が無い。暗くなって、何とかハイ松とクマ笹の上に張る。

受付を済ませてくれたサブLが「酒が売り切れていた!」と憤慨して帰ってくる。食事を済ませ、早々に就寝。

 

9月21日 晴天 ☀ (黒部五郎小屋~三俣蓮華岳~三俣蓮華小屋~鷲羽岳~三俣蓮華小屋)

 

4:00 起床。早々に体調不良を告げ、様子を見ながら出発してもらう。6:15 小屋出発。

途中、体調不良で大休止を取ってもらいつつ9:35 三俣蓮華小屋到着。

すでに、テント場がかなり埋まっており、アトム隊のスペースも確保。

サブLは黒部五郎小屋でアルコールが確保できなかった怒りを思い出したかのように、酒を調達する。やはりビールは品切れ。最後の一本だった赤ワインと日本酒を確保していた。

受付を済ませ大休止の後、本日の目的である水晶岳ピストンはあきらめ、目の前に格好良くそびえる鷲羽岳のみ登ることにする。

写真②「鷲羽池と落込むサブL。日焼止を忘れたLにキレる私。あんなに世話になったのに…写真②「鷲羽池と落込むサブL。日焼止を忘れたLにキレる私。あんなに世話になったのに…

快晴無風の中、鷲羽岳山頂で2時間近く休憩。絶景の中、ゆっくりとした時間を味わい至福。

後ろ髪をひかれつつ、三俣蓮華小屋に戻ると、小屋前でばったりアトム氏・トヨタ氏に会う。

アトム氏渾身の鍋料理に大盛り上がりとなる。

明日の予定である、槍ヶ岳の情報では大混雑でテント場・槍の穂先大渋滞とのこと。

一日早いが予定を変更し直接、新穂高温泉へ下山することにする。

 

9月21日 晴天 ☀ (黒部五郎小屋~三俣蓮華岳~三俣蓮華小屋~鷲羽岳~三俣蓮華小屋)

 

3:00 起床。6:00頃 テント場出発。

トイレが大混雑で、大変なことになっていた。

薬師沢小屋・黒部五郎小屋・三俣蓮華小屋ともに、過去にないくらいの収容人数らしくテント場も場所外に張っているテントがすごい。

写真③「小屋の前にあった張り紙。憎悪か愛のどちらかが芽生えそう」写真③「小屋の前にあった張り紙。憎悪か愛のどちらかが芽生えそう」

最高のお天気の中、三俣蓮華・双六と順調に登り、双六小屋から新穂高温泉に向けて下山。途中の鏡平小屋の池に移る逆さ穂高にしばし見とれる。長い下りだが4人で楽しく下る。

写真④「双六からの稜線で。後ろの槍の穂先は往復30分の所を4時間以上の大渋滞らしい…」

わさび小屋でサブ・アトム両リーダーが先行して車を取りに行ってくれる。大型連休の為駐車スペースが無く、ロープウェイで上がったところに駐車したらしい。どこもかしこも混雑している。

新穂高温泉で日帰り入浴し、仮眠をとり夜のすいている高速で帰京した。

サブLのおかげで、無事に遡行し縦走できたことに本当に感謝。また合流後重たい荷物を担いで生野菜を運んでくれたアトムL、トマトをふるまってくれたトヨタお姉さま、皆様に感謝感謝です。