八ヶ岳冬合宿 笹田隊(天狗尾根、赤岳)

冬合宿 天狗尾根 記録
参加者:笹田(L)、カト、さぶ(記録)

期日:2013/12/28-30

コースタイム
1日目(晴れ)
7:00 新宿発(あずさ)-8:54 小淵沢~タクシー~9:30美しの森駐車場~14:20出会い小屋~16:00 2100m付近で幕営
2日目(晴れ)
4:30起床幕営地~第一岩峰~8:30カニのはさみ~10:30第2岩峰?~14:00大天狗~小天狗~15:50文三郎尾根~16:40行者小屋
3日目(晴れ)
5:00起床-7:20行者小屋-9:30赤岳-10:30行者小屋-(撤収)-11:30行者小屋出発-14:15美濃戸口バス停着

記録

さあ、厳しくも、楽しい冬合宿の始まりだ。
笹田リーダーより、2泊3日で、天狗尾根を越え、行者に抜け、最終日は大同心稜もしくは、赤岳の南峰リッジを登る予定を聞き、私は相当ビビッていた。
天狗尾根は、ガイド本には、初級ルートとなっているが
私みたいなピヨピヨには、冬期のバリエーションルートは厳しいという事を改めて思い知る山行になった。

一日目
新宿発、7時ちょうどのあずさ1号で旅立つ、3人。
カトさんは、前夜から嘔吐腹痛により体調不良とのこと。(ナマモノにあたったようだ・・)
様子をみての乗車、笹田Lより、状況により天狗尾根を辞めて、美濃戸から行者に入ろうかと提案、しかし、カトさんの体調も回復傾向とのことで、とりあえず予定どおり天狗尾根へ。
小淵沢駅にて、予約したタクシーに乗り込み、美しの森の駐車場にて降りる。
身支度をし、いざ出発。平坦な道なのでアイゼンを付けずゆくが、だらだらと続くなだからな林道にイマイチテンションが上がらない。
ただ冬合宿前にいつもやる歩荷トレをしてなかったので心配だったが、今年の過酷な合宿や剱の登攀を経て体力がついているようだ。軽量化したのもあるが、背中が軽く感じる。
天気は申し分なし、出会小屋まで、何回か、抜きつ抜かれつしたパーティーが1組のみ。静かだ。

そのパーティーは出会い小屋で幕営とのこと。
ここの小屋に荷物をデポして空身のラッシュで登るスタイルが記録を読んでいても多い。

出会小屋で、しばし他のパーティーと談笑し、別れを告げる。
小屋の先もトレースがある。先行パーティーがいるようだ。
少し足が潜るので、体力温存のため、私とカトさんは、わかんをつけてあがる。
赤岳沢を少しつめると、一個目のルンゼのところからトレースは天狗尾根に上がっている。もう少し先の方が道がよさそうだが、トレースがあった方が楽だろうという笹田Lの判断の下、トレースをたどりうえに上がる。
キレイにまっすぐ伸びる尾根に気分が高揚する。特に危険個所もなくゆっくり高度をかせぐと途中で、トレースをつけてくれたと思われる二人組?のパーティーが2000m付近の小さなスペースにテントを張っていた。(後で知ったが、聞いたら友人の友人だった)
心の中でお礼を言い
私たちは予定どおり2100mまで上がる。さらに2人用と思われるテントが既に張られていた。

2100m付近のテンバ。先行パーティーのテント。
2100m付近のテンバ。先行パーティーのテント。

しかし、中には、気配は全くなし。少し心配しながらも(どうやら、ぐっすり寝ていたようだ)私たちもスペースをみつけて整地、テントを張り、ここで幕営。
人気ルートの割に、本当に人が少なくラッキーだ。軽くお酒を飲み、カトさんの絶品、白菜とばら肉のミルフィーユ鍋を頂く。
鍋にぎっちり、白菜にくるくるまかれたばら肉が入っており、ポン酢のつけだれで頂く。
非常に美味。ごちそうさまです。
テント内でしばし歓談し、早々に眠る事にする。明日は長い一日になるだろう。
2日目
4:30起床。朝は、笹田Lのホタテのリゾット。なんと生のホタテの貝柱が!!(乾燥貝柱が売ってなかったららしい)このまま、しょうゆで食べたい!!とカトさん(生ものにあたったのに懲りてないところがさすがだ)アルファ米をバターでいため、粉末のオニオンスープをお湯でといておいたもので貝柱で煮込む。うまい!!笹田さんの食事はいつも手早く、軽くて、そして、美味しい。温かいものを腹につめ、元気がついたところで、撤収、出発。
昨日と同様、カトさん、さぶ、笹田Lのオーダー。
樹林帯を進むと、次第に視界が開けてくる。美しい尾根の背中に乗っている3人。
後ろを振り返ると富士山がどーん!左を見ると権現岳がどーん!
顔がにやけてしまう。素晴らしい風景だ。

富士山をバックに上がってくるカトさん、笹田リーダー
富士山をバックに上がってくるカトさん、笹田リーダー

カニのはさみが見えてしばらくテントが張れるくらいの平らな場所に出る。
でも、風が強いと危険そう。。。
カニのはさみの基部(これが第一岩峰と言っている記録もおある?)を左に巻くが、一瞬、体を切れ落ちた外に出さないといけない箇所があり、ここでカトさんが躊躇。確かに怖い。
笹田さんに先に行ってもらい、お助け紐を出してもらう。ありがたい。。。
ほどなく行くと、
直上する10メートルほどの岩場。ここで、先頭のカトさんが再び、躊躇。ここで初めてザイルを出して、笹田さんにリードしてもらう。私は立木にセルフを採り、笹田リーダーをビレイ。

一つ目の岩場。ミックスでいやらしい。。。
一つ目の岩場。ミックスでいやらしい。。。

ほどなくビレイ解除のコースが聞こえ、私は中間で結んで、登攀開始。
重荷を背負っての登攀は厳しい。途中、体を上げるのを躊躇するような場所あり、ロープ出してもらってよかったと思う。
引き続き、カトさんを私が引き揚げ(今回は半マストを多用しました)、その間に、笹田リーダーはするすると上に上がってしまう。終始こんな感じのシステムで上がっていく。

もう1ピッチ上がると、30メートルほどの第二岩峰にあたる
(これを第一岩峰と言っている記録もあるがどれが正しいか定かではない・・・。ちなみには私はこれが大天狗だと思っていた。だめすぎる。。。)
あとで、他の記録をみると、ここでフィックスザイルがあったらしいが、見当たらなかった、雪の下か、撤去されたか。
ここも、笹田さんがまずリード。

第2岩峰? トラバースあと、ルンゼを上がっていく 笹田さんリード
第2岩峰? トラバースあと、ルンゼを上がっていく 笹田さんリード

8メートルほど切り立った岩場をトラバースし、雪の岩のミックスの壁を上がる。
笹田さんは、するする上がっていたが、私にはちょっと手にあまる。ここは私はプルージックで登ったので、片手を離すのがちょっとつらい箇所があった。

右手はバイルを出して雪に打ち込む。左手は、恥を忍んで、ロープをつかんでぐっと上がる。その上は雪壁。
笹田さんは、立木でビレイをしていた。私が上がると、「俺のビレイはいいから、カトさんあげてあげて~」とするするまた登って行ってしまう。スゲー。。。

ルンゼを上がってくるカトさん
ルンゼを上がってくるカトさん

カトさんが上がってきて、また、私が押し出されるように、上に上がる。
ここの間があまり記憶にないが、次のピッチはあまり難しくなったようだ。
途中、コンテを交えて上がっていくと、岩峰をぐるっと右に巻いたところで、手ごわそうな壁が現れる、どうやら、これが大天狗だったらしい(私はこれが小天狗だと思っていた..orz)
笹田さんが、手前の立木のところで、体に巻いたザイルを下したので、ここでビレイするのだなと、立木にセルフをとり、半マストの用意。
笹田リーダーはとことこと、数メートルのミックスの壁をややトラバース気味にいく。
岩場には、残置のパサパサのシュリンゲが風に揺れている、笹田リーダーはその横にもうひとつあるハーケンでランニングをとり、右にトラバース気味難なく上がっていく。本当、何でできてるんだろう。。。うちのリーダーは。。。
上がせまいテラスになっているようで、そこでピッチを切ってくれた。
(テラスには、ぴかぴかの新しい鎖あり)
私は、セカンドなので安心なはずなのだが、それでも怖いものは。怖い。
一応「落ちてもいいですよね?」と念を押してからトライ。トラバースが怖いので
うすかぶりだが、ガバがある方を選ぶ。ランニングをとってあった壁から、力任せに、体を上げる。

大天狗登り ちょうど私の左側にパサパサのシュリンゲ。 テラスに上がるところがうすカブリ。
大天狗登り ちょうど私の左側にパサパサのシュリンゲ。
テラスに上がるところがうすカブリ。

さすがに息があがり、テラスに出たときは、精神的にやられていた。
「じゃ、カトさんビレイして~」と例のように言われたが、「ごめんなさい!少し休ませて~」
とお願いする。いやはや、情けない事、この上ない。。。
「日が暮れちゃうよ~」との言葉にまずいと思い直し、カトさんをビレイ。
カトさんも直上ルートを選ぶが、手に力が入らない模様。
それを、笹田さんがゴボウで引き上げる。
この時点で、14時近く。急がないと、降りる頃にはヘッドランプが必要になるだろうとのことで、ここからコンテを交えてトラバースをすると出たコルが小天狗のコル(だったらしい。小天狗はコンテで草付き交じりを左にまいて抜けたとリーダーから後で教わるも記憶が定かじゃない。記録係失格。。)
最後、雪壁を登り、登山道に出ると、鎖がまだ出ている。稜線は風が強く(笹田さんいわく、ヤツでは、このくらいは、そよ風だとのこと。)
コンテのザイルが足に絡まり、怖い。ここで、さぶ、風とロープに八つ当たり。
1人、プチキレながら歩く。
赤岳に直登するのかと思っていたら、左巻きに巻き道がついているようだ。
ほどなくして、文三郎尾根の標識をみつけた。
ここで、相当ほっとする。文三郎を降りてると16時10分の交信時間になる。
カトさんより、ハギ隊が心配しているだろうと言われ、トランシーバーで交信を試みると、スガさんが応答してくれた!もうテント場にいて、場所も確保してくれているとのこと、
あと20分ほどで到着する旨を伝え、交信を終える。
仲間の声に励まされ、順調に文三郎を降りていくと、部長がなんと迎えに来てくれていた。
「ケッチボー」と声をかけて、お互いの無事を喜ぶ。
テンバにつくとハギ隊のみんなが出てきてくれて、フラッシュの嵐。
成田空港についた、ハリウッドスターの気分だ(笑
しずかな部長おすすめの場所に整地までしてくれて、温かいスープまでふるまってくれる。
仲間は本当にありがたい。
はじめてここで3人で集合写真を撮り、幕営。

行者小屋でパチリ。リーダーありがとうございました!
行者小屋でパチリ。リーダーありがとうございました!

行者小屋でビールを買い込み、さぶの軽量化マーボカレー鍋を食べたところで
ハギ隊のテントお呼ばれし、合同宴会。お互いの山行話に花が咲く。

笹田リーダーより、今日は疲れがたまっているので、翌日の登攀はやめて、ハギ隊と行動を共にしようと告げられ、赤岳ノーマルルートに変更。
安心して、あるだけの酒を流し込む。ああ、酒がうまい。。。

3日目
ハギ隊長のもと、赤岳を地蔵尾根から上がる。
詳細はハギ隊ミヤノリさんの記録を参照。
晴天の下、ピーンと張りつめた厳冬期の空気。
地球って丸いんだなーって感じさせるようなパノラマの風景。
そして阿弥陀、権現などのヤツの名峰。
登るかもしれなかった大同心を遠くで眺めながら、山にいる幸せをかみしめる。

地蔵尾根から赤岳を臨む。ダイヤモンドダストが!
地蔵尾根から赤岳を臨む。ダイヤモンドダストが!

赤岳の頂上で、行者から上がってきた。コバケンコンビに遭遇し、
期せずして、赤岳集中山行。厳しくも、最高の合宿であった。

赤岳頂上でコバケン隊とバッタリ!奇跡!
赤岳頂上でコバケン隊とバッタリ!奇跡!

厳しいルートを常に冷静に判断して私たちをリードしてくれた笹田リーダー
体調が悪い中でも、常に前向きに行動するカトさん
そして、温かく行者で迎えてくれたハギさん率いる天狗~硫黄縦走隊
驚異のスピードで赤岳に登ってきたコバケンコンビ。
皆さんと一緒に山に行けたことに心から感謝します。

(笹田L感想)

「天狗尾根」                        笹田記

大天狗を越えて小天狗にさしかかる頃には疲労が著しくなり、コンテのザイルが常時緊張して立ち止まる状態となった。

稜線に出て10分間の短い休憩を取る。

これからの竜頭峰から赤岳直下までは吹き募る雪交じりの八ヶ岳特有の北西風を避けるすべは無い。

その間ビバーグの適地も無く、明るいうちに行者小屋に辿り着くべく強行する。

ザイルが風に翻弄され、仲間の顔面は烈風に晒されて赤鬼の様に見える。

アンネ・ソフィー・フォン・オッターが歌う「コッポンゲン」の癒しのメロディーが聞こえる。

・・・・・never die.

此処だけは覚えている。

通信販売で買ったCD “Healing Voice”の中の一曲だ。

帰宅後改めて聞いてみると

一小節は

There is silence around me in the peaceful winter night.

From the church down in the valley.

I can see the candlelight.

And I stopped for a moment in this winter paradise.

When I heard a choir singing through the darkness and the ice.

今だ厳しい冬山に身を置くことが出来る幸せは、何物にも代えられない。

 

(カトさん感想)
今回の合宿参加者は5隊、13名。私はミナト合宿担当から取りまとめを依頼され
た俄か担当。ミナトさんの水面下でのお膳立てとリーダーの主体的企画で今回も
多数の参加を得た。冬合宿初参加者は4名。今年入会2名とベテラン2名。八ヶ岳
というなじみの山域の所為かも知れない。また、9連休という好条件かもしれな
い。
前半は好天気に恵まれて順調に推移したが、中盤(1/1-1/2)は風雪激しく行動
不可となり撤退となったことは残念だった。しかしこれも良き経験でリーダーの
好判断を称えるべきだろう。また、急変への対応も各隊へのコミが良く取れスムー
ズな行動になったこともよかった点だろう。
さて、私はというと、出発前夜から体調不良。前夜2回嘔吐。朝家を出て北赤羽
駅に着くまでの5分間で2回嘔吐。体温は36.9。足はしっかりしているが気分が悪
い。コンビニで胃薬を買って飲む。前夜食事を食べすぎたものと判断したが、ど
うも2日前に食べた生かきが原因のようだ。電車に乗り体温を測ると36.3度。山
行を止めようとも考えたが体温が下がってきたので行ける所まで行こうと決断。
軽量化したつもりでも8日分の行動食、1/2以降の登攀具などザックは重い。20K
g弱程度か。冬の天狗尾根、大天狗、小天狗は厳しいと聞いていた。しかし、笹
田さん、さぶさんのお陰で何とか行者まで辿り着くことができた。雪山の厳しさ、
楽しさを味わうことができ、また、自分の拙さ、弱さなど含めていろいろな意味
で価値ある山行だったと勝手に思っている。パートナーの心配を顧みずに…。
いつものことながら別世界、異次元の体験をさせてもらっている笹田さんには感
謝している。
1/1以降計画変更があり別働隊と合流ができなくなったので急遽テントを撤収し
て下山することにしたが荷は重かった。
この冬合宿は重い荷に泣かされた山行だった。