爺ヶ岳東尾根〜鹿島槍(積雪期)

2019/3/22(金)〜3/24(日)
メンバー:こば(L)、うえ(記録)

蔵出し記録シリーズ。
爺ヶ岳の東尾根から鹿島槍を目指す、2年前のリベンジを果たすため挑戦だ。

1日目

5:00 東京発
9:30 登り始め
鹿島集落の駐車場に車を停めさせていただき、狩野家の前の登山ポストに計画書を投函。オババの碑の奥が登山口だ。
登り始めはいきなり急登。2年前は雪があったのだが今回は全くない。木の根を掴みながら、さながら沢の高巻きのような状態で登っていく。1476mピークのあたりからようやく雪がでてきたが、とても少なく歩きづらい。
すごい斜度の樹林帯をひたすら登っていく。

ジャンクションピークまでの急登
腐った雪に苦しめられた

12:30 ジャンクションピーク1767m
ようやく東尾根の稜線に出たので歩きやすい積雪を期待したが、気温が高いので雪が腐っている。
この日は我々が先頭だったので、踏み抜きラッセルに苦労し、予定よりだいぶ時間がかかってしまった。
はるか遠くに爺ガ岳山頂、鹿島槍が見えた。

ジャンクションピークからの眺め
下界の雲海が次第に晴れていくようす
遠くに槍ヶ岳を発見!
P3手前の辛いところ

14:30 p3幕営地
本当はp1まで行きたかったのだが、時間と体力の問題でこの日はここまで。
明日の早朝、雪面の状況がよくなることを期待しよう。
ささやかな風除けを作りテントを張った。この日ここにビバークしたのは、我々ともう1パーティだけ。
一時的に風が強まったが、2年前に泊まったp1よりはるかに快適だ。
夜は満月で、美しい山頂と星を眺めることができた。

p3にてビバーク

2日目

5:00 出発
昨日の遅れを取り戻すべく早めの出発。
雪面がクラストして歩きやすくはなったのだが、アップダウンがつらい。
p2周辺には痩せ尾根がいくつもあるが、雪が少なく柔らかくなっていた。崩れるのも時間の問題かもしれない。

明け方P2周辺
p2のナイフリッジ

7:00 p1
p1手前の雪壁を越えてようやくp1に到着。p1は一昨年に幕営した場所だ。
ずっと目の前に見えているのに、爺ヶ岳山頂までがとても長く感じた。歩きやすい広い尾根だが雪庇やクレバスに注意して歩いた。

P1に到着
p1〜爺ガ岳山頂を眺める

8:30 爺ガ岳中峰
ようやく到着。到着したころにはガスってしまったが、次第に正面に立山と劔岳が見えるようになった。

爺ガ岳山頂に到着!
爺ヶ岳山頂から南方面の景色

ここから夏道を辿り、爺ヶ岳の西側斜面をトラバースして冷池山荘に向かう。富山側に出た途端、西風が強くなった。
尾根上は巨大な雪庇ができていて、登山道すぐ横まで亀裂が走っていた…

爺ヶ岳の西面をトラバース

立山も剱岳も間近に!
遥か遠い鹿島槍ヶ岳山頂。よく見ると山荘も写っている
冷池山荘のコルに降りる手前で冬毛の雷鳥とも遭遇
実は2羽いた雷鳥

10:50 冷池山荘
ようやく冷池山荘の冬季避難小屋に到着。
小屋は屋根まで雪に覆われていたが、出入り口周辺には雪がなく、すんなり入れた。

11:15 出発
小屋に荷物をデポして、〜布引山〜鹿島槍ヶ岳を往復。
出発した時の天候は高曇りだったが次第に西風が強まり、天候悪化が目に見えていた。
明日はもっと悪くなる予報なので、登頂のチャンスはこの時だけ。一刻の猶予も許されないと、小屋で休みたい気持ちを封印して必死に歩いた。

布引山とその奥の鹿島槍を目指す

小屋の周辺から布引山、鹿島槍山頂までは至る所に10m以上の雪庇が発達していて、夏道の近くまでクラックが数多くできていた。今回の全行程を通して、雪庇が一番すごいのはこの辺りだったように思う。

13:26 鹿島槍ヶ岳
山頂への九十九折りに差し掛かったあたりで、無情にも霧が立ち込め、山頂に立った時には真っ白になっていた。
タイムリミットが迫る中、なんとか山頂に立てたことに安堵しつつ、即下山。

証拠写真。東面は景色が見えていた

15:00 冷池山荘
小屋に帰ってきた15時頃には粉雪が舞い始め、夕方以降は風雪がかなり強く(風速20m以上?)なっていたようだ。
小屋の中には我々以外に2パーティと、さらに外に1パーティが幕営していた。
ちなみにこの小屋は、冷池山荘が休業中にだけ解放していただいている冬季避難室だ。下山後に、周辺状況をお知らせするお手紙とともに利用料をお支払いする。
この日のような吹雪の日には、小屋の存在は本当に心強い。

3日目

6:40 出発
翌朝は厳しい行動となった。
小屋に泊まっていた他のパーティと共に赤岩尾根を目指すものの、途中の尾根では強風に煽られて必死に耐えながら前進。
赤岩尾根に取り付くトラバース道は、昨夜積もった15cmほどの積雪のため厳しいと判断し、急斜面を100mほど下降して様子を見たが、そちらも雪崩の危険がありそうだった。
他パーティはロープを出して斜面の途中からトラバースするようだったが、我々の装備と技術では危険があると判断し、元来た道を引き返し爺ヶ岳東尾根から下山することにした。
ちなみに、同日に先行していた屈強な4人パーティは、最初夏道でのトラバースを試みるものの断念し、ロープを使用して尾根通しで下降していたと思う。

8:30 赤岩尾根敗退
ここからは昨日と同じ道だが、西側斜面をひたすら歩く道のため、2時間も西風の強風に吹かれ続けた。風上側の右手や右頬が冷たさで痺れたが、隠れる場所もないので摩ったり動かしたりしながらとにかく進んだ。
この時の風で右頬がごく軽い凍傷になり、なかなか跡が消えなかった…(涙)。

10:30 爺ガ岳中峰
爺ヶ岳の東側に出た途端、今までの強風がぴたりと止み天候が回復!
ふわふわのパウダースノーが広がる天国のような場所だ。東と西でこんなにも気候が違うとは…
富山側を無事に抜け出したことに心の底からホッとした。

東面から爺ヶ岳山頂を振り返る

12:40~50 p3
天候が回復すると今度は気温上昇に伴い、初日以上の腐り雪に苦しめられた。
しかもこちらの斜面はさほど降雪がなかったようで、樹林帯の泥山は相変わらず。
一昨年同様、息も絶え絶え下山することとなった。

p2あたりの尾根
山頂を振り返る

15:50 下山

最後に…
今回、2年越しの念願が叶い鹿島槍に登頂することができたものの、爺ガ岳下部の腐った雪や最終日の強風にはかなり苦しめられ、春先とはいえ北アルプスの難しさを思い知らされた。
だがそれと同時に、恐ろしくも美しい巨大な雪庇や、ふわふわのスノーパウダーなど貴重な体験も数多く、忘れられない山行になった。

コースタイム
1日目/9:30登山口〜12:30ジャンクションピーク〜14:30 p3
2日目/5:00 p3〜7:00 p1〜8:30爺ガ岳中峰〜10:50-11:15冷池山荘〜13:26鹿島槍ヶ岳〜15:00冷池山荘
3日目/6:40冷池山荘〜8:30赤岩尾根敗退〜10:30爺ガ岳中峰〜12:40-50 p3〜15:50下山