奥穂南稜

日程

2022年5月3日~5月5日

メンバー

コバ(L)、ウエ

1日目

上高地〜岳沢
東京を5:00に出たものの、小仏トンネルからの渋滞が既に調布辺りまで伸びていて上高地に入れたのは12時過ぎ。
岳沢には15時ごろ着。
テントを張り早速取り付きの偵察に向かう。
記録でよく見るルンゼの入り口は数日前の雨で雪が剥がれ落ち、ルンゼの奥にチムニー状の壁が剥き出しになっている。ルンゼに上がるアプローチとしてはここを直登するか、左の斜面にあるバンド状をジグザクにたどるか。
足元がスノーブリッジになっていて、今はそれ以上近づけないため、本番判断とした。
南稜登攀後岳沢に戻るルートとして考えていた前穂高沢も上部まで見えるわけではないので、明日の判断。

奥穂南稜全景:上高地から奥穂南稜全景(赤線は今回のルート)
取付き偵察:南稜取付きルンゼ(実線が実際に登ったルート)

この時間で足元の雪はかなり腐っていて、今日よりも気温が上がる明日にどうなっているか若干心配になりながらテントに戻った。

この計画、計画書では荷物を担いで登り涸沢に抜けることとしていた。しかし岳沢まで登ってきて思ったのは、テン泊の荷物でやろうとするならもっと徹底して減量しなければ我々の体力では無理だと気付き、2つのオプションを持つことにした。
①吊り尾根から前穂高沢下降で岳沢に戻る
雪が安定していて、さらに吊り尾根を通過する時間が必要。
②涸沢に降りて小屋泊にする。
安全なのは②だが、テント回収に岳沢をもう一度登らなければならない。
さあどうなることか。

2日目

4時発。取り付きには4:30ごろ。
先行パーティーがすでに前を歩いている。どうやらルンゼの右(滝沢側)の尾根から取り付くようだ。
スノーブリッジを避けてチムニーに近づいてみるとチムニーの右側の壁が比較的簡単に登れそう。コバがまずはノーロープで登ってみる。ホールドもしっかりあり難なく登れたが、残置ピトンもありロープを出すのが正解か。上は傾斜が緩いがところどころベルグラが張っていていやらしい。落口から少し上がったところにあるピトンを使ってフォローにロープを出して登ってもらう。先に小滝状の岩場が見える。

チムニーの右壁を越える

小滝を越えるところまでウエのリード。右岸側のブッシュ沿いを巻き上がり、小滝上に出る。ここで一旦ロープを仕舞う。
ブッシュを使いながらルンゼを進むと途中から雪壁となる。朝早いので雪は締まりアイゼンがよく効く。快調に登るとルンゼは二手に分かれ、我々は右のルンゼにルートをとる。先行パーティーはそのまま直上するルートを登っていくが、その後いわゆる下の岩壁で合流することになる。
右のルンゼは途中雪渓が切れている。ハイマツやブッシュを使いながらルンゼ状を抜けると再び雪壁登りで岩壁の基部へ。下の岩壁の右に続くハイマツ帯をトラバースしていくと、再び雪稜。右手は滝沢に向かって切れ落ちている。左の大岩に沿うようにして登ると、上部の雪渓が雪庇の壁状に前方を塞いでいる。すでに先行パーティーの影はなく、雪庇を切り欠いたトレースを残してくれていたのでありがたく使わせてもらうこととして、ここでロープを出す。雪庇状の高さは3mほど。まだ雪が締まっていてピッケルもアイゼンもよく効くので難なく乗り越せる。乗り越したところでスタンディングアックスでビレイしウエに登ってもらう。

大岩に沿って雪壁を登る1
大岩に沿って雪壁を登る2

先にトリコニーI峰の取り付きと思われる岩場が見えるので、ロープは仕舞わずスタカットで進む。岩場に入って1ピッチ、記録でよく目にする螺旋状のチムニーに到着。入って右回りに登るとチムニーの上に出るので、さらにチムニーを跨いで先に進むと、トリコニーI峰手前の小岩峰の基部になる。チムニーを跨ぐところで勇気がいる。
小岩峰に登る岩は記録によってはトリコニーの核心とされていて、凹角状4mほどの岩に残置ピトンが1本、なんとカラビナ付きのスリングがぶら下がっている。また、この岩の左奥を覗くとI峰のピナクル手前のコルに簡単に行けそうにも見える。どちらにしようか悩んだ末、リードするウエの判断は核心アタック。1段上がった後がホールド・スタンス共に細かくなり、アイゼンでの登攀では少々厳しく感じた。ここは左に巻くのが正解か。雪が多い年であればもっと手前から左に巻いて雪壁登りでコルに出るのが一般的なようだ。

トリコニーⅠ峰へ続く岩場の取付き。奥にモノリス岩が見えている。
らせん状チムニー。中に入ると右に折れ、右壁を登ってこの上に出る。
小岩峰へのルート。ピトンが一本
ちょっとだけ懸垂してⅠ峰のコルへ(手前のピナクルがⅠ峰、奥はⅡ峰)

登ってしまった岩峰からちょっとだけ懸垂してコルへ。I峰とII峰の間のナイフリッジを期待していたが、雪が少なくハイマツの稜線が剥き出しになっていた。II峰から先はほぼ雪稜で、Ⅲ峰を左に見るあたりでロープを仕舞う。Ⅲ峰は通過しない。

Ⅰ峰からⅡ峰へ。雪のナイフリッジはなかった。
上部からトリコニーを見下ろす(左からⅠⅡⅢ峰)

この先は雪稜と易しい岩場が交互に現れ、特に難しいところはないが、長くて疲れる。
途中一箇所今朝あったような簡単な雪庇状の乗り越しがあったが、今回はノーロープで通過できた。
南稜の頭についた時には11時半になっていた。

雪庇状の雪壁を越える。
雪と岩のミックスを丁寧に通過する
南稜の頭
南稜の頭から奥穂を見上げる

出発前のオプションの①は、想定より時間がかかり気温が上がったため雪が腐ってきていること、トリコニーのあたりの滝沢支流で小さな雪崩れがあったこと、2日前に雪が降ったことなどを考慮して危険と判断し、涸沢に降りることにする。これで岳沢をもう一度登ることが確定してしまった。
南稜の頭で岳沢小屋に戻らない旨電話し、併せて涸沢ヒュッテの予約をとった。便利になったものだ。
南稜の頭から奥穂は15分ほど。
穂高岳山荘経由で涸沢着が15時ごろであった。

3日目

岳沢に寄って下山。

タイムレコード

4:00 岳沢テンバ発
4:30 南稜ルンゼ取り付き
5:50 下の岩壁
8:00 螺旋状チムニー
10:00 トリコニー通過
11:30 南稜の頭