奥利根・利根川本谷

日程:2016年8月5日(金)~8月9日(火)
メンバー:つりし(L),ハギ(食計),あずさ(記)

コースタイム
1日目
22:30湯檜曽駅
2日目
05:00湯檜曽駅-05:20民宿やぐら-06:30奥利根湖出発-06:50下船(割沢手前)-08:00雨量観測所-09:50巻淵-14:35滝ヶ倉沢出合
3日目
06:00幕営地(滝ヶ倉沢先)出発-08:20定吉沢出合-09:35魚止滝-13:30大利根滝-15:20ハト平-16:45佐市平(西小沢手前)
4日目
06:15佐市平出発-09:40人参滝-10:50深山滝-12:10赤沢滝-12:35水上滝-14:15利根川水源碑-18:50十字峡

 

元々は、夏合宿ということで初級者も連れて東北の沢へ…という予定だったが、今年の沢希望者はこの3人のみ。つりしLの提案で、雪も水も少ない今年なら!ということで利根川本谷への挑戦が決まった。
日程は、出発前日に発生した台風5号により8日には十字峡に抜けるのが先決という話になり、エスケープを考えつつの沢中2泊3日の山行となった。

【1日目/8月5日】
19:20 つりしLの車でハギさんと私をピックアップし、東京を出発する。
22:30 湯檜曽駅前着。今夜はここでビバークとなる。

【2日目/8月6日】
04:00 起床
05:00 湯檜曽駅出発

05:20 民宿やぐらの駐車場着。
やぐらのご主人と挨拶をする。私たちの他には、男性二人組の1パーティのみ入渓するようだ。

06:15 奥利根湖到着
ご主人の車で奥利根湖こと矢木沢ダムへと向かった。
先々週の奈良俣ダムと同様、水位が低い様子(というか、それを狙って来たのだが)。

06:30 管理小屋に計画書を提出し、ボートでいざ出発!
私たち沢登りのパーティ以外にも、釣り人さんが何パーティか船で湖へ入るようだ。
奥利根マリンの高柳さんらしき方とも少しお話をした。曰く、「今年はオイックイの雪渓も無いだろうな。」…!本当にそうだと大分遡行が楽になりそうだ。

06:50 下船
割沢少し手前で大量の倒木が浮いており、水位も低くなる。
バックウォーターに入ったようなので、ここから入渓となる。

 

倒木の湖面を必死に漕ぐつりしL(ハギさん撮影)。カヌー経験者の腕が鳴ります!と、頑張ったのにその先の水位が低く、結局引き返すことに…。
入渓点は、干上がっていた期間が長いせいか草原のような状態に。

08:00 雨量観測所
水線通しにひざ下の徒渉を繰り返し、シッケイガマワシ手前の雨量観測所まで入渓から1時間弱。

▲シッケイガマワシの終わりを告げる、又右衛門ヶ淵
入ってみるも、結局右岸を巻く。
▲エメラルドグリーンの水流が美しい

09:50 巻き淵
暗く洞窟の様に穿たれた右壁に取付いてみるも、突破は困難。
少し戻って左岸を巻く。

10:50 越後沢出合
幕営適地とされている出合左岸には、水溜りが出来ていてとても適地には見えない。

▲まるで鏡面のように静かな流れ
剣ヶ倉土合へと足を踏み入れる

例のヒトマタギは明らかに男性サイズの幅で、つりしさんのみ記念撮影。私とハギさんは、絶対落ちる!と遠慮させて頂いた。

▲剣ヶ倉土合終盤の淵。私がトップで泳いでみるも、意外と水流が強く進めない(つりしさん撮影)。すると、後ろからつりしさんが泳いで来る。二人でもがいているうちに、つりしさんの「足着いた!着いたよ!」との声。やっと先に進める!

14:35 滝ヶ倉沢出合
そろそろ、本日の幕営地を探す時間だ。予定では滝ヶ倉沢出合のテンバ、ということだったが中々見つからない。仕方ないので、少し先の砂地(というより砂利)を幕営地とする。高さは無いが、増水の心配も少ない天気なので平坦で快適そうなここに決定!

16:00 天気図を取る
台風が近付いているので、気象通報を聞くことにする。しかし、周波数を合わせてもなかなかNHK第二放送に繋がらない。周波数と格闘すること数分、やっと繋がったと思えば、聞こえてきた声は「ルドナヤプリスタニは~」。日本域は終わった後だった。その後の漁業気象で、台風は若干遅れているようだということだけ分かった。

今日の夕飯は、ハギさんの工夫が凝らされた高野豆腐そぼろ丼。
これがなかなか美味しい!軽量化をしつつもお腹を満たすのは至難の業なので、ハギさんには感謝しかない。

20:00 就寝
疲れもあり、今日のところは早めに床に就いた。

【3日目/8月7日】
04:00 起床
06:00 出発
今日は、天気のことを考えると大利根滝を越えて西小沢手前の佐市平まで行かねばならない。オイックイの雪渓も心配だ。
そう思っていたのだが、オイックイ入口の下北沢出合を過ぎても、水温は温いまま。もしかして、本当に雪渓が無いのでは…?

▲雪渓の無いオイックイを行く。
途中、一緒に入渓したパーティの出発準備に出会ったり沢床まで下りてきたカモシカとご対面したりなどのイベントを交えつつも、雪渓とは遭遇しなかった。唯一支流に残る雪の残骸だけが、

そこにスノーブリッジが存在していたことを物語っている。

08:20 定吉沢出合
先には、暗いゴルジュと滝が見える。最初の滝は高巻き、次の滝はつりしLが空身で取りつき、細かいホールドを拾いながら突破。

後から来た二人は高巻くつもりだったようだが、つりしさんの登攀を見て登る気になったようだ。しかしこの二人の御仁、足も速くてロープも出さないので、今日も抜かれた後は一度も出会わなかった。

09:35 魚止滝

▲ここは右岸から巻き、途中の灌木にスリングを残置して懸垂。
今回は、残置用の捨てスリングが大いに役立った。

13:30 大利根滝
魚止滝からいくつもの滝を越え、やっとこさ大利根滝にたどり着いた。多くの記録で快適だのピッチグレードⅢだの言われているが、果たして。

▲トップで右壁に取付くつりしL(ハギさん撮影)。
なんだか岩質がフェルトと相性が悪いようで、緊張の時が続く。これだけ登られているのだから残置もあるかと思われたが、それもほとんど見られない。
結局、よく写真で見られる「落ち口へトラバースするルート」ではなく、「直上して灌木帯へ入るルート」を取った。
登った感想は、「やっぱり5級に行くような人の評価は私たちと感覚が違う。」ということだった。この先、もっと難しい滝ばかりになるのだろうか…。

15:20 ハト平
大滝に時間を取られ、気付けばこんな時間に。明日のことを考えると、西小沢まで急がなければならない。

16:45 佐市平
途中1回の高巻きを交えつつも、お目当ての幕営地へとたどり着く。
佐市平こと西小沢手前の幕営地は、噂通り3張近く張ることの出来る大きく平坦なテンバだった。そのテンバより手前にも、1張のみの場所と2張張れる場所の2ヵ所が見つかった。どれも、ハト平と同じくウドやシダの藪の中にあり、焚火をしなければ虫にたかられそうだ。私たちは虫を忌避して、佐市平の外にある砂地にタープを張った。

▲今晩は最後の幕営となるだろうということで、持っていたおつまみを大放出。前回の集会でイシツカミさんから頂いていた大きなにんにくもその一つ。
晩御飯は、大豆ミートを使ったカレーでこれまた美味だが、おつまみ類が多く早々に満腹に。カレーは朝ごはんに持ち越しとなった。

22:00 就寝

【4日目/8月8日】
04:00 起床
朝食は、前日のカレーを使ってカレークリームパスタ。カレーが程よくマイルドになっていて、朝からリッチな気分に。

06:15 出発
少し先で、またも二人組先行者の朝仕度にばったりと鉢会う。しかし、この後の滝で私たちがロープを出している隙に反対側の壁からの-ロープであっさり抜かしていってしまった。ボルダ―チックな登攀で、軽やかな二人だった。

▲まだ日も差していないのに、朝っぱらから泳がされたり。
この時は、日があたらなくて寒いということばかり考えていたので、この後の悲劇など知るべくもないのである…。

そろそろ人参滝であろう、という4m位の滝で、悲劇は(主に私にだけ)起こった。滝の左壁を登っていたところ、体重移動を誤って滑り落ちた上、壁に左膝を思い切り打ちつけてしまったのだ。不幸中の幸いは、ロープを出して頂いていたことだろうか。これ程盛大に落ちたのは人生初だった。もう少しクライミングを練習します…。
それにしても、左膝がすごく痛い。その後のトイ状滝の高巻きでも、膝立ちをした時に凄まじい激痛に見舞われた。その上、しっかり回収したと思っていたハーケンを一つ失くしてしまった。持ち主のつりしさん、ごめんなさい!前日の高巻き中にもタイブロックを滝壺の餌にしてしまっていたので、これで紛失物は2つ目だった。不注意極まりない…。

09:40 人参滝

2つの失くし物と膝の痛みにシクシクしていると、とうとう人参滝にまで来てしまった。今日の核心部その1だ。ここは右のリッジから高巻くが、あまり良くなさそうなので、つりしLがトップでリードする。やはり脆くなっているようで、リッジ上から浮き石を滝つぼに落とす音がする。

▲高巻き後に見つけたキイチゴ。少しすっぱかった。

10:50 深山滝
今日の核心その2。3段(見えないが4段目?もあり)の美しい滝だが、所々脆くなっているので、注意が必要そうだ。ここもつりしさんがリード。
今回の山行はほぼ全ての核心でつりしさんにリードをして頂き、本当に頭の下がる思いだ…。私もいつかは負担を減らす手伝いが出来るようにならねば!

▲深山滝をリードするつりしさん(ハギさん撮影)。2段目と3段目の間が核心。

12:10 赤沢滝
名前の通り、赤茶色でぬめった滝だが、一見ホールドは良さそうに見える。

▲ここは、つりしさんに勧められてハギさんがリード。登りやすいが、ぬめりが何だか怖い滝だった。ロープを出したのは一番下の段のみ。

12:35 水上滝

ここが、最後にロープを出した滝となった。やはりつりしLがリードし、右壁から突破。その上にある苔のついた滝は、思い思いの場所から登り、これが最後の滝となった。

最後のツメは、水が無くならないうちにおいしい利根川の天然水(本物!)を汲みながら進む。そろそろ三角雪田かなぁというところで、なんだか緑が美しい草原が見え始めた。あれはもしや…。

やはりと言うかなんと言うか、三角雪田も全く雪がありませんでした!!

そして、振り返ると今まで遡行してきた利根川の谷筋と越後の山々が見える。2泊3日の急ぎ足だったが、長い道のりだった。

御花畑も美しく、3人で谷筋をバックに何枚か記念撮影。

14:15 利根川水源碑

少しだけ笹薮を漕ぎ登山道に出て歩くと、利根川水源碑が見えてくる。
ここでも記念撮影。
丹後山までの稜線は、笹が美しい快適な道だった。
丹後山避難小屋にはワンダーフォーゲル部の学生が10人近く集まっていて、今夜は避難小屋に泊り、明日からは藪漕ぎで巻機山方面へ行くそうだ。私たちは、十字峡方面へと下山する。

18:50 十字峡
下山途中、私の失態で足をくじいてしまい、つりしさんがタクシーと合流するために先に下山して下さった。私は、ハギさんのストックを貸してもらいながらなんとか林道まで下りることが出来た。最後の最後に、慢心してしまったのかもしれない…。
林道を、メジロアブにたかられながら40分ほど歩くと、タクシーと合流したつりしさんが私たちを迎えに来てくれていた。やっと終わったのだ。
その後は五十沢の素泊まり宿に宿泊し、翌日にはデポした車を回収して帰京した。宿の女将さんは気の良い人で、旅の疲れも癒された。

北稜に入会して2年とちょっと、まだまだひよっこの私はあまりお役に立てませんでしたが、利根川攻略という大きな山行に同行することが出来て、先輩方には感謝が尽きません。特に、今回リーダーを務め、車から登攀までお世話になりきりだったつりしさん、本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。もう少しでも遡行に貢献できるよう、クライミングもちゃんとやらなければなぁ…と、改めて感じる山行でした…。
ともあれ、雪渓の無い利根川をある意味完全遡行したこの思い出は、一生忘れることの無いものとなると思います。お二人とも、ありがとうございました!

楢俣川前深沢

写真9

場所:楢俣川前深沢
日程:2016年7月22日(金)~24日(日)
メンバー:コバ(L)、つりし、ハギ、トヨタ、あずさ(記録)

【1日目】7月22日(金)

21:00 近場の駅に集合。コバ車で水上方面へ。
23:30 ならまた湖畔着。オートキャンプ用の大きなテントを立て、24:30過ぎ就寝。

【2日目】7月23日(土)

04:30 起床
約4時間しか眠れなかったことに嘆きながらも、準備を開始。
自分たち以外には、先行者の車が1台と、通りかかった洗ノ沢へ入る1パーティのみ。
写真1

05:40 出発
長~い3時間の林道歩きが始まった。
今回は鳩待峠へ抜けてしまうプランの為、この林道を引き返してくる必要が無いことが、唯一の救いだ(と、面倒くさがりの私は思っていた)。
途中、今晩のおかずになりそうなフキや蕨、コゴミを採取。秋になると、この林道は山ブドウの畑のようになるという。
以前は崩壊していたようだが、整備された為目立った崩壊は1ヵ所程度だった。

07:20 休憩
湖畔で一息取る。
おそらくクルマユリと思われる花の橙色が眩しい。背後の奈良俣ダムは、だいぶ水位が低いようだ。
写真2

09:10 入渓
ヘイズル沢を過ぎて数分後、道幅が広くなっている場所で装備の準備をし、ピンクテープを横目に狩小屋沢から入渓。
写真3↑せっかく良いカメラを持ってきたのに、F値が高くてなんだか暗い。しかも、譲っていただいたものなのでまだ使い勝手が分からず、元に戻せない…。

09:15 楢俣川本流出合
本流のスケールは非常に大きく、楢俣初心者の私は感嘆の声が止まない。
横幅が広く連瀑が美しい階段状の滝や、滑らかなスラブ滝などなど。
しかし、以前訪れた時より数10cm水位が低いらしい。
カメラはどうやらマニュアルモードだったらしく、初心者の私はおずおずとオートモードへ戻すこととなった…。

写真4↑わざわざ泳いで滑滝に取付こうとするコバリーダー

写真5↑同じ滝でたわしを使ってホールドのぬめりを取るも、滑り落ちていくつりしさん

写真6↑特にこの連瀑は美しい!

10:30 前深沢出合
幅広の4m滝のところで、本流とはお別れする。
前深沢は本流より沢幅が狭そうだ。
写真7↑楢俣川本流にかかる4m滝

11:37 12m滝
途中、数分の河原に意気消沈するも、奥に待ち伏せていた12mの滝に「おぉ~」という歓声(?)が上がる。
ここは、水流を横切ってシャワークライムする。
写真8↑意を決して先陣を切るコバL

写真9↑すぐ先にある10m滝は、コバLがリード。

ハーケンの打ち抜き練習と称してつりしさんが滝の中間点にハーケンを打ち、続く私→ハギさん→トヨタさんの順で、抜いては打つ、を繰り返した。
私の打ったハーケンは、簡単に抜けたらしい。練習あるのみ!

その後も、美しいナメ床と階段状の滝が続く。

写真23↑途中、かわいい雛鳥がいる巣を発見。踏まないように気を付けて通り抜ける。

そろそろビバーク地を、ということで探し始めるが、どこもいまいちだ。
そうこうしている間にも、大滝近くのトイ状連瀑が現る。
写真10
写真11↑最後の4mはつりしさんが最初に登り、上からお助け紐を垂らしてもらう。

シャワークライム気味で、上の方が若干難しい。

14:30 大滝
結局その後もビバーク適地は無く、大滝下の小さめな平地に幕営することとなった。
写真12↑奥に見える大滝は、霧で霞んでいる。

私たちが着いた時には2人組が取付いており、滝上でビバークすると話していた。
その後も3人パーティが通りかかり、霧のかかる大滝を越えて行った。

夕食は私の担当で、キムチ鍋とシメはうどん。
が、いつものごとく大量のつまみを持ってきてくれるメンバーや、林道で採取した山菜に助けられ、満腹状態に。
20:30には就寝した。

【3日目】7月24日(日)

04:30 起床
寒さに目を覚ますと、女性陣の寝ていたツエルトは前日の霧と若干の定員オーバーにより、凄まじい結露が起きていた。
朝食は、トヨタさんのクリームリゾット。とろけるチーズの濃厚な感じがとても良い。
と、ここで前日まで使っていた“いいカメラ”ことOM-Dの電源が夜中中入りっぱなしだったことが発覚。電池が無くなってしまったため、コバLのコンデジを借りることとなった。

07:00 出発
朝一番から大滝登攀に取り掛かる。
写真13↑40mの壁に、どう登るか思案中のコバLとつりしさん。

写真14↑途中、一瞬だけ水線に入りつつも、ガイドや事前の記録通り右側の乾いた壁を登るコバL。アクアステルスは快調の様子。

ハーケン1枚と、カムでいくつかランニングを取る。
途中の狭いテラスで1ピッチ切り、ビレイヤーのつりしさんもそこまで登る。
テラスからコバLがもう1ピッチ登るが、ロープは50mあるので落ち口上から固定ロープを張り、残りの女性陣3人は1ピッチで滝上へ。
高所恐怖症の私には、スリルたっぷりの登攀だった。ホールドも、ガバというよりカチ。

09:00 大滝上
5人いたこともあり、大滝攻略には約2時間かかってしまった。
しかし長い登攀を終えると、滝上の美しいナメ床や快適に登れる気持ちの良い滝の数々が私たちを待っていた。

写真16

写真17↑視界は開け、雲の中に稜線が見え隠れする。

写真18↑途中、会のクライマーたちが好みそうな岩壁を発見。クラックにカムが良く効きそう!

10:40 二俣
両岸からゴルジュ状に稜線が迫る石積み連瀑帯を通り抜けると、最後の二俣に直面する。
ここは右の5mCS滝へ。
写真19
その後まもなく水が無くなり、ウスユキソウなど高山植物を愛でながら灌木のツメを進む。
私が花を片っ端から写真に収めていると、コバLから「時間押してるよ!」とお叱りを受けてしまう。ごめんなさい…。

稜線へ出る直前の岩壁が視界に入るころ、前日滝に挑んでいるのを見かけた二人組が藪漕ぎしているのを発見。私たちも同様に、岩壁の付け根へ向かってハイマツの藪を漕ぐ。ハイマツは頼りになるが、マツヤニがベトベトして気持ち悪い。
写真20

12:10 登山道
茶色い岩壁の真下まで来ると、登山道のロープがすぐそこにあるのが見える。ようやく遡行終了だ。
先行の二人は、4日間使ってゆっくりと楢俣川周辺を堪能しているらしい。隊員からは、思わず「いいなぁ」という声が漏れる。

12:30 至仏山山頂
登山道に詰めあがった場所の岩陰に貴重品以外をデポし、至仏山へ。
前回ヘイズル沢へ行ったときは、終了点からの遠さに登頂を諦め、小至仏山の「小」の字を隠して写真を偽造したらしい(面倒くさがりもここまで来ると…笑)。

14:10 鳩待峠
デポした荷物を回収し、鳩待峠へ下山。
途中、たくさんの登山者とすれ違う。天気も悪くなかった為、一般道は混雑していた。
写真22↑鳩待峠は、見渡す限り人、人、人。
奈良俣ダムへは、金に物を言わせてタクシーを手配。およそ35分で峠まで来てくれるらしい。

16:00 奈良俣ダム
無事ここまで戻ってきた…。
前日からデポしていた車の中はムシっと暑い。無事に帰ってこられたことに感謝し、一路東京方面へ。

私にとって初めての楢俣川でしたが、ぎっしり詰まった良い沢でした。一緒に遡行したメンバーの皆さんには感謝、感謝です!

コースタイム

1日目
23:30奈良俣ダム
2日目
05:40ダム出発-09:10入渓-09:15楢俣川出合-10:30前深沢出合-14:30大滝下
3日目
07:00幕営地出発-09:00大滝上-12:10登山道-12:30至仏山-14:10鳩待峠-16:00奈良俣ダム

後立山縦走

夏合宿縦走隊番外編 『隊長ヨレヨレ顛末記』

プロローグ

合宿二日前、私は隊長ヅラしてエラそうに参加者にメールを送りました。

内容は、「皆さま、ここまで来たら後は体調管理に気を付けて合宿当日を迎えましょう!」

合宿前夜、軽い悪寒と頭痛に襲われる。「あれ~これはヤバイかも!一昨日会社サボってサイトーさんと深谷ジムで汗だくになって、そのまま着替えず帰ったのがマズかったか?」

7/28 合宿1日目(自宅~長野駅集合~白馬大池テン泊)

ミナト、ユミ、ミナザエモン

4時の目覚ましで起床するも、完全に風邪の症状。「やっちまった!これじゃ穂高合宿の二の舞だ…」3年前の夏合宿で、やはりリーダーであったにも関わらず風邪をひいてしまい、多大なる迷惑をかけたことを思い出し悔いるも後の祭り。「もう行くしかない!」と根性キメて20キロ超のザックを担ぐも、駅まででヘロヘロです。「こんなんで大丈夫かぁ?」でも隊員の新人たちに気を使わせるわけにはいかないので、風邪ひきのことは気付かれない様にしなければ…。

長野駅で新人のユミちゃん、ミナザエモンと待ち合わせ。ミナザエモンがなかなか現れないので探しに行くと、ポケモンGoをしてました。ったくも~。

特急バス~ゴンドラ~ロープウェイと乗継ぎ白馬大池への登山口へ到着です。

「まず俺がペースを作る。縦走はゆっくり、これが基本だ!」と自分が先頭になりゆっくりペースで歩き出すが、なんのことはない、体調不良なのでゆっくりしか歩けないことをカモフラージュする作戦なのでした。そんなことを知らない新人二人は素直に従います。カワイイもんです。のんびりと3時間程登って本日のテン場の白馬大池に到着。静かで綺麗でとても素敵な場所です。池の畔のテン場は平らで水場もあり、トイレも清潔です!

夕食は二人の新人さんが作ってくれたマーボ茄子です。ユミちゃんは油を忘れたので失敗作だと言っていましたが、トンちゃんの「茄子を忘れたマーボナス」に比べればどうってこと無いです。味付けも丁度良くとてもおいしく頂きました。

夕食後はすぐに就寝します。ミナザエモンは飲み足りないと文句を言っていますが、「縦走は早寝早起き、これが基本だ!」とさっさとシュラフに潜り込むが、なんのことはない、体調不良なので早く寝たいことをカモフラージュする作戦なのでした。そんなことを知らないユミちゃんは素直に従います。が、ミナザエモンは従いません!テントの真中であぐらをかき、ひとりで缶ビールをグビリとやり始めました。恐るべしミナザエモン…。

7/29 合宿2日目(テン場~白馬三山縦走~天狗山荘テン泊及びサブ隊合流)

ミナト、ユミ、ミナザエモン、天狗合流サブ、タケ

3時半起床。外には星が瞬いていますが、体調は昨日より悪くなっている感じです。う~んマズイなぁ…。朝食のラーメンもほとんど喉を通らず、二人に全部食べてもらいました。

予定の5時を少し過ぎて出発です。ミナザエモン、ごちゃごちゃしたものをもっとまとめて、ちゃんと予定時刻に出発できるようにしましょうね!

天気も景色も上々、雷鳥もお目見えし、新人二人は高度が上がるにつれどんどん感激度がアップしていきますが、私は高度が上がるにつれ咳き込む様になり、どんどん体調が悪化していきます。

テンションアップの新人たち

 

新人:「わ~キレイ!」「スゴイ雲海ぃー!」「感激です!」「どこまでも行けそうですぅ」

私:「よかった ゲホゲホッ ね…、ゲホゴホ、カー、ぺッ」「少し休もうか…」

新人:「どっか悪いんですか、大丈夫?」

私:「ぜんぜん大丈夫、ちょっと咳が出るだけ…」とあくまで体調の悪さを悟られないように体裁を繕いますが、もう気付いているんだろうな、たぶん…。

残念ながら白馬岳頂上はガスの中、なのでさっさと白馬岳頂上小屋へ下り休憩しましょう。と、ここでユミちゃんがお知り合いに遭遇です。こんなところで奇遇でしたね!

さて、これから杓子岳、白馬鑓ケ岳と縦走するのですが、「こんなにキツかったか?」と言うほどキツかったです。ですので、景色や状況などの記憶がありません。ただ、杓子岳頂上でサブちゃん隊と無線交信が出来て少し元気をもらえました。

白馬鑓ケ岳をやっと越え、ヨロヨロと本日のテン場の天狗山荘に向かっていると、鑓温泉の硫黄の香りとともになにやら聞こえてきました?どこかで聞いたことのある歌声…野太い拳の効いた…あの歌声は、そうです!北島サブちゃんならぬ北稜サブちゃんでは!!

♪はぁ~るばるきたぜぇしーろうまぁ~ なぁ~なつのさけをの~みながらぁ~♪

上機嫌で歌いながら我々を迎えに来てくれたサブちゃんに「ケッチボー」すると、サブちゃんもケッチボーを返してくれました。嬉しいですね!感動的なお迎えケッチボーです!!

天狗山荘のテン場では、合流隊の新人タケちゃんが我々を発見してなぜかピョンピョンしています!(この後も彼女はいろんな所でピョンピョンしていました。飛び跳ねるのが好きなのでしょうか?)

夕食は私の人生初となるロコモコ丼です。感動的なおいしさ!で、体の具合も良くなり私も思わずピョンピョンしたくなりましたよ!ありがとうタケちゃん!!

人生初のロコモコ丼

7/30 合宿3日目(テン場~不帰ノ瞼~唐松岳~唐松山荘テン泊)

ミナト、ユミ、ミナザエモン、サブ、タケ

3時半起床、天気は多少ガスがかかるもまずまずで、雨の心配はありません。5時出発でサブちゃんを先頭に天狗の大下りへ向かいます。

私は、ロコモコパワーのおかげで元気を取り戻すも、大下り終わったらパワー切れになってしまいました。それにしても、私以外の4人は元気全開です!うらやましい…。

ロコモコパワーが切れた隊長

 

大下り終わると、今合宿最大の難所の不帰ノ瞼です。取付く前にヘルメットと簡易ハーネスを装備し、いざ出陣です。ここで先頭が私に代わります。私がミナザエモン、サブちゃんがユミちゃんの安全を確保します。あれっ、タケちゃんの確保は?えーと、まあ、大丈夫でしょう…。

いざ不帰へ

 

不帰Ⅰ峰は、特に問題ありません。

不帰Ⅱ峰が問題ありです。危ない所には鎖が付いているのですが、高度感があります。でもみんなヘーキなんですね!大したもんです。

危険個所を過ぎてⅡ峰の南峰まで来たところで、安堵したからか、とうとう私が発熱しグロッキー状態になってしまいました。仕方がないので、皆に私の荷を分担してもらうことになりました。「情けないなぁ」とショボクレていたら、ミナザエモンに「つまらない男のプライドなんか捨てちゃいなさいよ!」と叱られてしまいました。う~もっともでございます。

みんなから介護される隊長

 

唐松岳を越えて唐松山荘に到着したところで、さらに情けないことに、私が「もうこれ以上動けません」状態になり、今後の行動ついて合宿最大の決断をしなければならなくなってしまいました。案は二つ。

A案:唐松に全員がテン泊し、明日は八方尾根で下山する。(五竜岳は諦める)

B案:ミナトのみを唐松に残し、サブちゃんが隊長となって計画通りに五竜登頂を実行する。当然、ミナトは明日一人で八方へ下山することになる。

優しいサブちゃんは新人たちを気遣いB案を推挙したいようだが、さて、新人たちはどのように考えているのだろうか?新人たちには難しい選択であり、議論が続く。

この時、私は笹田師匠との合宿を思い出していた。師匠は言う「合宿の良さは、先輩と新人が寝食を共にし、お互いに助け合いながら行動し信頼を築き、かけがえのない山の仲間となっていくことだ。それが同じ釜の飯を喰った仲間というものだ」また、こんなことも教わった「サイゴマデ タタカウモイノチ 友ノ辺ニ スツルモイノチ 共ニユク」松濤明の有名な遺書の一節である。友を見捨てれば助かるかもしれないが、松濤は友と一緒に死ぬことを選ぶ。私の決断は決まった。

重苦しい沈黙を破って私は言った。「リーダー権限で、今日は全員が此処に泊まることにします。そして明日は全員で八方尾根を下山します。以上、よろしくお願いします」

しかし、自分が原因でこんなことになってしまったので、この決断を口にすることにはかなりの勇気が必要であったことを付け加えておきます。小心者なんです自分…。

その後、私は2人用テントに隔離され、みんなからいろいろな介護を受けて、十分な療養を得ることができました。おかげさまで随分と回復したように感じます。本当にありがとうございました。

7/31合宿4日目(唐松山荘テン場~八方尾根で下山~帰京)

ミナト、ユミ、ミナザエモン、サブ、タケ

5時起床、今日も天気は上々で7時出発。唐松山荘前で山ガールモドキのピョンピョン写真を撮ってから下山開始です。

山ガールモドキがピョンピョン

 

尾根道からは、縦走してきた山並みが見渡せます。「あんなに遠くから歩いてきたんだぜ」「ホント、凄いですよね!」小蓮華、白馬、杓子、鑓、不帰、唐松、本当によく歩きました。これぞ縦走の醍醐味ですね!

大勢の登山者と観光客で賑わう八方池山荘とリフト乗場が見えると、合宿も終わりに近づきます。いつものことなのですが、「いろいろあったがもう終わりだ」と思うと、やはりちょっと寂しいです…。

 

エピローグ

隊長の私が不注意により風邪をひき、参加の皆さまに大変な迷惑をかけてしまった事を深く反省します。ちゃんと注意していれば防げた事なのに、本当に情けないことです。この場を借りて皆さまにお詫びします。どうもすみませんでした。

しかし、私がダメになってしまったことで、サブちゃんを中心に新人たちが一致団結し、大変良くまとまったパーティーになったように見受けられます。隊長が頼りにならなくなってしまったので仕方がないことだったのでしょうが、とても頼もしく感じられました。

また、新人たちの著しい成長も嬉しく思います。最終日の八方尾根は登山初心者であふれておりました。4日前は同様の初心者であった新人たちですが、合宿を過ごすうちに歩き方や身のこなしが格段に成長していったことを、この八方尾根の初心者さん達と比較することで十分確認することができました。

最後にお願いですが、これに懲りずにまた山行をご一緒しましょう!同じ釜の飯を喰ったかけがえのない仲間なのですから…。

ミナト記

魚野川完全遡行

 

日程:2016年7月16~18日

メンバー:つりし(L)、ハギ、つかみ(記)

CT:

16日 切明温泉5:50→ 渋沢ダム8:50→  黒沢出合 12:50(幕営)

17日  黒沢出合7:15→ 魚留ゼン8:30… 10:10 → 南沢出合 15:50(幕営)

 18日  南沢出合7:00→ 北ノ沢からの詰めの分岐 9:05→  藪の詰め10:00→稜線 10:50→ 志賀高原高天ヶ原12:10(ゴンドラリフトにて発哺温泉下山13:00→タクシーにて切明温泉14:00

装備:靴/フェルト ザイル/8×30m

 

記録:(16日) 秋山郷の最奥に切明温泉がある。ここの雄川閣旅館の駐車場に車を

泊め車中泊。朝方5時に起き準備を整え出発。まずは渋沢ダムを目指す。約3時間かけて5キロの道のりを進んで行く。歩き始めは平坦な登山道。地元の釣り人、三人組が年期かかったミニバイクにまたがり先をゆく。とっても楽しそう。そして楽そうだ。ダム迄は吊り橋を渡りトンネルを通ったり、これより始まる、長い魚野川完全遡行に向けての準備開始だ。

入渓地手前の吊り橋

ダムより10分ぐらい進んだ地点で入渓。沢靴に履き替え魚野川に足を入れる。天気は曇り。大汗をかいているのに冷たい。あ~だけど気持ちいい。前日に鉄砲水が流れたとの情報を、途中すれ違った東京電力職員らしき人が言っていた。しかし、増水の気配はない。千沢を過ぎた廊下状のゴルジェもなんらく通過。何度か訪れているリーダーも、巻かずに通過なんて、とつぶやく。それぐらい今回は水量が少なかった。

例年より水量がない

曇りがちではあるが、気持ちよく癒されながら登って行く。高沢出合いを過ぎ、大ゼンに差し掛かる。左岸を巻きすんなり超える。

大ゼン

大ゼンから1時間弱進むと、一日目の幕営地、黒沢の出合。ナマリ岩がお出迎え。水量がすくなかったこともあり、予定よりも早くに到着。ほっとするのもつかの間で、私はそわそわした。誰もいない貸し切り状態の大自然。焚火に釣り。ビールに御馳走・・・と頭を駆けめぐった。時間はたっぷりあるのに、心は小学生のようにはしゃいでいた。

黒沢出合幕営地、ナマリ岩

予定では、夕方より雨。一刻もはやく遊びたい心をなだめ、まずはテントを張った。テン場も最高の場所にある。沢よりも一段高め。しかし水場も焚火からも遠くないベストエリア。設営終えると、リーダーつりしのアドバイスを受けイワナ釣りに出かけた。どれぐらい、釣りをしていたのだろう。調理を始めたころは、既に夕刻時である。三人で10匹近くの大捕獲である。ムニエル、塩焼き、ぬか漬け、オリーブ炒め等々、お腹いっぱい満たされた。元気がよかったのかこの日の就寝は22時を過ぎていた。

イワナ

(17日)いよいよ、核心部が顔を出す遡行になる。気が引き締まる。天気は厚い雲に覆われている。いつ雨が降りだしてもおかしくない。小雨が降りだしてきた。合羽を着用して出発した。1時間強進むと、魚止めゼンが現れる。スラブ状の幅の広い滝だ。リーダーがロープをつけ左端から登る。しかし容易に登れない、滑々なのだ。ザックをおろし空身でチャレンジ。すんなりとクリア。次は私の番だ。行ける!と思ったが、やはり素人目線だった。二~三歩踏み出した途端、滝に滑り落ちた。二度も三度も、何度やっても落ちる。挙句、左端から水量が多い右側の隙間で立ち往生してしまった。滝の上で腰がらみをしているリーダーは状況が見えず、テンションがかかりっぱなしなので、腰まで浸かった体を動かせずにいた。淵から見守っていたハギさんとは、滝の音に声がかき消され正確に言葉を交わせない。絶対絶命のピンチ。体が冷え震える。どうしたらいいの!?頭の中は真っ白。もがいているとどうにか元の出発地点に戻れた。ハギさんに先に登ってもらい、最後にトップロープ状態であげてもらい、どうにかこうにか、越えた。魚止め滞在時間は1時間40分にも及んだ。実力のなさを思い知らされた。

とんでもない迷惑をかけてしまった。このあとしばらく音が消えて行く・・・。

恐怖の魚止めゼン

庄九郎大滝までたくさんの小滝の連発。日差しも差し込み見事なナメ床が続く。

ナメ床
連発する小滝

魚止めゼンから進むところ2時間弱。庄九郎大滝。10メートル位だがわりと迫力がある。滝の右側のルンゼを登り巻く。足場は悪く倒木や浮石がひしめき合う。15メートル程登ると、ミナトさんが20年前に張ったらしきロープがあった。そこから先はロープを張りトラバースで進む。

庄九朗大滝、トラバース

その後、穏やかな癒し沢を楽しみ二日目の幕営地、南ノ沢出合15:50分到着。

テン場は、整地無用。ご丁寧にも厚手の銀マットあり。何方かの忘れ物?贈り物?ありがたいのだが、大自然には似合わない物であることも確かだ。どうしたことか、三人して空きっ腹。テントを張る前にハギさん手製のマカロニスープをいただく。この日イワナは釣れなかった。一匹釣ったものの逃げられた。しかし心配無用。昨日数匹ぬか漬けにしておいた。本日のおかずはイワナのぬか漬け。網の上で焼いた。特に皮の部分が美味い。最後の焚火を惜しみながら22時、横になった。

(18日)南の沢出合から北ノ沢。左岸7つめの沢を行く。一本一本確認しながら進む。

方角も合っている。確信をもち7つめの沢を登って行く。そこから100メートル位で3又の分岐。左に曲がり稜線に出る。そんな作戦を練って進む。しかし左側は垂直ちかい壁。登り詰めるような谷間は見つからない。枝沢みたいのが現れた。そこを行くことにした。急な登り。濃い藪に突入する。リーダーを先頭に藪と奮闘を続けた。途中から鋸で狩り進むこと50分、稜線に出た。

藪漕ぎ

寺子屋峰をピークを得て、志賀高原山頂に。開けた高原にはニッコウキスゲが咲き誇り綺麗だ。手付かずの大自然とは、また一味違う美しさだ。

ニッコウキスゲ

大自然って何だろう。魚野川で堪能したはずなのに、言葉にしようとすると難しい。さえずりだったり、匂いだったり。風だったり、色だったり。五感が自然を感知する。ありがたい。こうやって楽しめる一つ一つ。癒しあり。勉強あり。恐怖あり。沢って凄い!

 

 

 

 

 

 

日原川巳の戸谷

日程: 2016年7月3日

メンバー: つりし(CL)、ハギ、アズ、ユイ(記)

CT 八丁橋先、天祖山登山道入口ゲート(7:35)〜林道ガード先、日原川降下ポイント(07:45)~日原川河原にて遡行準備(07:50/08:10)~15m大滝(08:25)〜忌山の悪場入口(08:45)〜忌山の悪場、核心部8m滝(09:15)〜忌山の悪場6m滝(10:05)〜小屋跡(10:30)〜8m滝(11:55)〜3連の滝(12:35)~五平窪出会付近(13:30/14:00)~ヤケト尾根1,247m峰付近(14:50/15:00)~八丁橋先、天祖山登山道入口ゲート(16:55)

記録:日原川の崖地を縫う林道を車で慎重に走って、八丁橋先の天祖山登山道入口まで入る。登山道入口にあるゲートを越えて出発、左側ガードの切れ目、赤いペンキの塗られた箇所が日原川への降下ポイント。急降下する登山道を慎重に下り、日原川河原で遡行準備して、日原川を右岸へ渡って出発。

日原川右岸を歩いて程なく入渓地点に到達、緩い勾配の道を沢沿いに進むと、すぐに15mの大滝が現れる。

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直瀑の見事な滝は右側に高巻き、苔と岩、小石の沢床を20分ほど歩くと、忌山の悪場と呼ばれるゴルジュ帯に到達する。

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忌山の悪場のゴルジュ帯は、入口から直ぐ左に大きく折れ、滝が連続する。先ずは3m、3m、4mと次々に滝を越えていく。4mの滝は、右側を登るが、やや足場が悪く、つりしCLが安全確保のロープを出す。

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4mの滝を越えると、今日の核心部ともいうべき8mの滝が現れる。左壁を登っていくものの、なかなか足場の確保が難しい。一方、丁度良いところに残置(ハーケン4か所)があり。私も先行者の足場、手の置き場を注視して、見様見真似で何とか登る。

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8mの滝を過ぎても、忌山の悪場は、なおも3m以下の滝がゴルジュ帯の中に連続する。倒木が多いため、やや難儀する個所もあるが、清冽な水の流れる沢の遡行を楽しむ。

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そして、忌山の悪場は、ゴルジュ帯の出口近く、最後に6mの滝が現れる。シダや苔の生えた滝の左壁を慎重に直登して越える。

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忌山の悪場を抜けると、倒木の多い谷の遡行となる。倒木・小滝と越えていくと、大釜のある4m滝が現れる。4mの滝は、右側にへつりながら滝の釜左側に取り付き、水の落ち口に沿ってステップを刻みながら登っていく。(写真は、滝の水流をものともせず登っていくつりしCL。)

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4m滝を抜け、左手に小屋跡を見遣りながら、倒木の多いエリアをさらに進むと、6mの滝に到達。流石に直登は難しく、右に取り付き、ややトラバース気味に滝の落ち口を目指して登り、滝を越えていく。

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6m滝を越えると、再び小さな滝がいくつも続く。倒木に悪戦苦闘しながら進むと、倒木に白いキノコが群生、なんと見事なウスヒラタケである。早速、ナイフを取りだし、切り取ってアズが自宅へお土産として持ち帰ることとなった。

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ウスヒラタケのあった小滝から先に進むと、沢筋は穏やかになってきた。私も、多少緊張が解けてきたが、最後に行く手を阻む8mの直滝が現れる。滝は、上部で2丈に分かれて直接滝壺に落ちている。水しぶきがミスト状に舞い上がり、滝壺近くは寒いくらいに涼しい。ホールド、スタンスがある右壁を登っていく。私も登るが、途中で足の置き場を見失って停止、周囲を見回し、いくつもの足の置き場になりそうなところをトライ、やっと見つけて、再び滝上を目指す。(途中残置ハーケン1か所あり)

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8m滝を越え、沢筋を足元に気を付けながら進むと、見事な3連の滝が現れる。丁度、日が差し込み、滝が輝いている。奥多摩にもこんな世界があるのかと、暫し見惚れる。

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綺麗な3連の滝を抜けると、再び小滝をいくつか越えていく。途中、真っ白なキクラゲを発見、野生のキクラゲを見るのは初めてであり、透き通った色合いはとても綺麗だ。

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小滝が連続し、倒木の多いエリアをさらに進むと、左手に見事な10mのすだれ状になった滝が現れる。滝の先は、沢の傾斜は緩むものの倒木が重なるエリア、倒木は滑ったりザックが引っかかったりするので、慎重に越えていく。

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倒木エリアを抜けると小さな広場が現れ、ここで遡行終了。広場から先は、更に倒木が折り重なっている。広場で着替え、軽く休憩し、帰りは、1,200m付近左岸にある山道を示すテープ横から、右岸にあるヤケト尾根の尾根筋を目指す。

その山道は少し歩くとすぐに悪くなるので、今回1,247mの尾根筋に回り込むような感じで登り稜線に出た後下り山道に合流するコースを選択する。(写真は、広場左岸にあった吊橋への山道を示すテープ。)

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尾根筋へは、初め急こう配の足場が悪く所々ザレた斜面を登り、やがて、一転して、緩く広い尾根筋に乗る。広い尾根筋は、踏み跡が無く迷いやすい。現在地確認のためにGPSがあると安心。モミ・ブナの森は、静かで気持ち良い。緩やかで広い尾根を下り、やがて1,247m峰付近で一息入れる。

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1,247m峰から更に下ると、尾根は再び急こう配な斜面になる。途中、急斜面に見事なキノコを発見。ザレた急斜面を下って確かめるも、毒キノコであるツキヨタケ。

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気を取り直して、ザレた急斜面を戻り、トラバース気味に、急斜面に続く作業道を下っていく。滑落事故を起こしそうな急斜面をトラバースし続けるルートは、最後まで気を抜くことができない。滑れば、日原川の谷底まで滑落しかねないトラバースの道は、疲労が蓄積した状態でもあり、最後まで気の抜けない状況が続く。

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やがて、つり橋が現れ、少し登り返せば、八丁橋へと続く林道に到達、あとは、林道を緑の木々を愛でながら、八丁橋に戻り、本日の山行は終了。

巳ノ戸谷は、滝の連続する沢の魅力に溢れる好ルートです。倒木が多く閉口する場面もありましたが、沢は2回目という私にとっては、奥多摩にこんな綺麗な滝があちこちに落ちる世界があるのかと、驚きながらの山行でした。

また、登攀技術、ロープワーク、歩き方等々、何れも大変に勉強になった一日でもありました。

この日は、寝坊の上、ヘルメットを忘れるという状況で、ご迷惑をおかけしてしまい、反省せずにはいられません。

この日は、お陰さまでとても楽しい一日となりました。

どうもありがとうございます。

 Minoto【 ルートGPS記録 (2016年7月3日、巳ノ戸谷) 】

湯檜曽川東黒沢~宝川ウツボギ沢

○期日:2016年7月9日〜10日

○メンバー:コバ(CL)、みどり、トヨタ、ハギ(記)

○行程:

9日…白毛門登山口(8:50)〜白毛門沢出合(9:45)〜1040二俣(11:40)〜丸山乗越(12:55)〜ウツボギ沢出合(14:05)〜幕場(14:30)

10日…幕場(7:00)〜右俣出合(7:55)〜1520二俣(10:25)〜笠ヶ岳下鞍部(11:15)〜白毛門山頂(12:00/12:25)〜白毛門登山口(14:55)

○記録:

【9日】

分かっていた。分かっていたけど、雨だといまいち気分は乗らない。夕方から回復して明日は晴天との天気予報にみんなで気持ちを盛り上げて出発、白毛門登山口右側の道を歩き堰堤上から入渓。

雨だけども、白い岩盤はやっぱり綺麗だ。ああ、晴れてればなぁという言葉を道すがら幾度となく吐き出すことになった。

出発から30分でハナゲの滝。2箇所、明瞭な巻きの入り口があり、今回は上側の入り口から巻いた。少し歩くと白毛門沢出合。

ハナゲノ滝

以降ナメ床とナメ滝の繰り返しになり、晴れてればなぁ、晴れてればなぁと唱えながらも雨の中楽しく遡行。東黒沢は数年前に来たことがあるが、こんなに綺麗な沢だったけか。小滝もでてくるがどれも簡単に登れる。

ワンシーズン分のナメを半日で歩いたんじゃないかと思うほど、ナメにすっかり毒気を抜かれてしまった。やっとこ水がちょろちょろになり、スカイラインが低くなってくる。最後の二俣状から一度踏み跡ぽい所へ入って行くが、あまりはっきりしなかったので、コバLの取った右の沢型を忠実に詰めた後に踏み跡をたどる方が正解だったか。ともあれ薄い薮なので苦労することはない。先行したコバさんの笛を追うとすぐに平らな所に出て(丸山乗越)、北へ方角を定めて緩やかにくだれば、またすぐに小さな小さな窪に出会う。ほどなく小沢になり、ウツボギ沢の枝沢に合流した。何箇所か後ろ向きで降りるところはあったが、問題なし。

1時間ほどでウツボギ沢に出て、幕場を探して30分ほど付近をウロウロする。広河原は4人並んで寝れるサイズのタープをテンションかけて張れるほどしっかりした木がなくて却下。宝川の対岸まで見に行ったが、結局、水面からの高さはあまりないが、快適そうなウツボギ沢の河原に張ることにした。

話に聞くとおり周辺には薪が少ない。宝川まで遠征したり、広河原に残されたものを頂いたりして、なんとか集まった。濡れた薪からの着火にチャレンジしてみたが、やっぱり私には難しく、そしてきっと根気も足りなかった。

雨の中出掛けたコバさんが岩魚をゲット。ミズとフキ、ヒラタケちょっぴり、それらを平らげ、焼鳥、カレーとなるころにはお腹も一杯。ごちそうさまでした。ツエルトを持ってきていたが、全員タープの下で寝た。

夕餉

 

【10日】

昨日の夕方に止むはずの雨は結局、朝までダラダラとしつこく残っていた。

しばらく穏やかな沢歩き。ウツボギ沢の最大15mくの字滝は右から巻く。一段上がり、右から入る枝沢の端を登り、途中から薮に入りトラバースすると、滝上すぐの所にすんなりと導かれる踏み跡がついている。

くの字滝の途中

この滝の上はぐっと空が広くなり気持ちがよい。

このへんでようやく完全に上がったらしい雨に暑苦しい雨具を脱ぎサッパリ、注がれはじめた日差しにさらに気をよくした。

ナメ、ナメ滝、ナメ、小滝、という渓相がこれでもかと続いていく。大分沢幅も狭くなってきたなと思うと、向こうに美しい小滝が現れる(沢幅に対して結構立派)、の繰り返しで、「まだ続くの!」とみんな嬉しい悲鳴。

 

1520の二俣は左、そのあとは沢型を水のある方へと忠実に詰めていく。水はかなりの所までなかなか枯れなかった。

笹が被さったトンネル状の窪のどん詰まりから一段あがり、すぐそこの稜線を目指す。なんとなく跡ができているので軽くかき分けるだけで簡単に前に進み、頭が笹の上に出てからは右手には笠ヶ岳から下ってくる登山道が見えるようになり、方角も間違えようがない薮漕ぎ1級。ふりかえれば皆もにこにこ楽しそう。窪から上がって10分もしないうちに、ちょうど笠ヶ岳から下りきった鞍部に出た。

 

そのままのんびり歩を進め、一の倉沢のビュースポットではあそこが○稜で△稜でというトヨタさんとコバさんの会話についていけず首をかしげ、沢山の人でにぎわう白毛門でのんびり装備を片す(のんびりしすぎて気がついたらみんなパッキング完了していた。ごめんなさい)。白毛門の下山は…やっぱりうんざり。ピストンでハイキングの人が大半のようだったが、こちらは片道でお腹一杯である。みどりさん曰く「午前中の綺麗な沢の記憶が薄れちゃった」、本当に本当にその通りだ。

…でも、思い起こせばやっぱり綺麗な癒し沢でした。

 

〈メモ〉

コバさんはアクアステルスで難なくだったが、全体的にはぬめっている所が多いような感じはしたので、慣れてない人ならフェルト靴使用が無難だと思う。

南八ヶ岳 赤岳

南八ヶ岳 赤岳 山行記録

日程 2016/2/20-21

メンバー コバ(L) セキザワ アベコ(記)

20日 曇り

5時に王子に集合しコバさんの車で赤岳鉱泉に向かう。狙いは赤岳から硫黄岳への縦走だ。中央道から見える八ヶ岳は岩が露出し黒々としている。2月の八ヶ岳とは思えない姿だった。8時には美濃戸につき、北沢コースから赤岳鉱泉を目指す。この間の凍った道にはチェーンスパイクが良い働きをしてくれた。赤岳鉱泉はこの日テントは10張り程度しかなく、多くが山登りよりアイスクライミングを目的に宿泊している人だった。午後から天候は悪化し雪が、夜中は2月の八ヶ岳なのに雨がふった。夕食はすき焼き、山で食べる生卵おいしい。

 

21日 曇り

4時に起床、準備にもたもたして予定の出発時刻より30分遅れの6時に赤岳鉱泉を出発した。小屋はまっくら、テントの人も多くが寝ているようだった。行者小屋へ行く途中に1組のパーティとあったが、彼らは阿弥陀北陵の登攀目的とのこと。

6時40分行者小屋に到着、こちらは新雪が積もっており、夜間は雨じゃなく雪が降ったようであった。文三郎尾根を使い登り始める。中岳への分岐手前で先行していたパーティを追い抜くと予想外の先頭パーティとなる。夜間にふった雪のせいでトレースはなく気持ちのよい登りとなった。しかしガスのせいで視界は不良、夏に歩いた記憶も頼りに山頂直下の岩場に取りつく。岩場ではいやらしいトラバースで吹き溜まりになっているところがあり、強風と硬い雪が飛んできて眼も開けられず、こりゃたまらんとゴーグルをつけるが雪が侵入したちまち凍りつきさらに視界が悪化した。曇り対策のため上部のスポンジを取り払っていたのが裏目にでてしまった。岩場自体は先日に行っていたアイゼントレの効果もあり特に怖いと思うところはなく、9時に赤岳に登頂した。冬の赤岳の山頂立つという目標はここで達成された。

赤岳天望荘への下りも視界不良のため、記憶と地図頼りに降りる。天望荘は営業していた。

天望荘から振り返ると一瞬ガスが途切れ、この日初めて赤岳の姿を見た。雪煙を上げる姿は荒々しく美しかった。この日赤岳に登れてよかったと思った。視界不良と強風のため、硫黄岳への縦走は諦めることとなった。地蔵尾根から降りるがここもトレースはなく、また地図が役にたった。地蔵尾根は人工物が多く、本格的に道迷いしてしまうことはないだろうが人工物がない山でホワイトアウトしたときのことを想像するとぞっとした。

 

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下りはあっという間ですぐに行者小屋に到着、そのときには少しガスも薄れていた。文三郎尾根には蟻の行列のように登山者がおり、阿弥陀北陵にも数組のパーティが取りついているのが見えた。赤岳鉱泉に戻り、テントを撤収。小屋で昼食を食べ、下山する。赤岳鉱泉から見えた横岳は昨日と違い真っ白でとても綺麗だった。

次は硫黄岳への縦走、いつかは赤岳主稜を目指して頑張ろうという気持ちになった。

 

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コバさん、セキザワさん楽しい週末を送らせていただきありがとうございました。

最後に

この日赤岳で滑落事故があり、亡くなられた方がいたことを後日知りました。山での事故は誰にでも起こりうるということを改めて感じました。亡くなられた方のご冥福をお祈りしたいと思います。

 

八久和川

・目的地:八久和川

・日程:2015年9月19日~23日(前夜発4泊5日)

・メンバー:こば、ハギ、つりし、エビ、キム、アズ

 

9月18日(金)

20時都内集合。車に2台に分乗し、東北道から村田JCT経由月山IC付近

9月19日(土)

5:00起床-7:30八久和ダム着-8:00発-12:00フタマツ徒渉点-18:00BP (10h)

林道終点には庄内ナンバーの車が3台くらい既に駐車している。特に駐車スペースと言えるものはなく、沿道に停める。大分藪が濃く、山の深さと先行きの厳しさを感じさせる。準備を整えて出発したのは8時過ぎ。雨が降ったりやんだりの怪しい天気。林道はすぐに踏み跡に変わり、藪をかき分けながら最初の目標地点フタマツ徒渉点を目指す。左岸からいくつもの沢が入り込むが橋などは当然なく、そのたびに谷に降りまた登り返す。踏み跡はしっかりしている。

途中マイタケ採りの地元の方に出会うと、なんとザック一杯のマイタケ。手提げにも3つほどのマイタケが!フタマツまでの間で採ったという。まだ人があまり入っていないようなのでカクネあたりではたくさん採れるだろうとの情報。丁度青空が頭上に広がりこれからの天気の回復をイメージさせ、メンバーの気持ちは高まる。

フタマツ徒渉点に到着したのは12時ごろ。大きなブナの木に「フタマツココ下る」のナタメ。付近にはテープも。谷に降りる踏み跡もあり、注意していれば間違えることは無いだろう。急な斜面を灌木と笹を頼りに比較的浅い流れとなった八久和本流に降りる。水は若干濁って流れの力も強そう。念のためロープを出して渡り、対岸にある小さな流れ込みに沿って右岸の台地上に上がる。

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フタマツ徒渉点以降踏み跡はあいまいになってくる。テープを頼りに先に進むが次第になかなか見当たらなくなる。踏み跡らしきものもなくなる。しばらく行くと横沢出合の先あたりで谷に阻まれ一旦本流におりることにする。雨足も次第に強くなり、増水も心配になってくる。

谷の対岸から小尾根を少し上がると何となく踏み跡があるように見えるので辿るが、すぐ不鮮明になり結局本流を行くことにする。本流はヘツリと徒渉を擦り返しながら先に進むことが出来る。よく見ると所々に先行者の踏み跡が砂浜に残されている。

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基本的にルートとして間違っていないとの自信を得る。左岸側を遡行中、高い岩が両岸に立ちはだかり、白く激しい水流を吐き出しているゴルジュに遭遇し行詰まる。右岸にはカクネ道があるはず。何としても対岸に渡りたいが、チャレンジむなしく流されて戻ってきてしまう。やむなく左岸を樹林帯まで上がり大高巻を決意。時間も16時を過ぎているため比較的安全な場所でビバークすることとした。

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9月20日(日)

3:00起床-7:00BP発-11:00懸垂下降点-12:00長沢出合BP (5h)

雨の中のビバークはツラい。3時ごろから誰ともなく声を掛け合い始める。やはり皆なかなか寝付けなかった様子。雨は夜通し降り続け、まだ時おり強く降る。下を覗くと八久和本流の流れは心なしか昨日よりも強くなっている。メンバーの疲労と安全を考慮し、しっかり明るくなる7時ごろを待って行動開始することと、この日のテン場をカクネ沢先の長沢出合付近に決定。この時点で日程の関係から中俣沢までの完全遡行断念が決定した。

地形図で見るかぎりここを越えれば一旦比較的なだらかな斜面となる。雨も次第に弱くなり回復の兆しがある。灌木を頼りに降りていくとそこには平坦な森が広がっていた。すると先頭から悲鳴に似た歓声が聞こえる。なんとマイタケだ。株の直径30センチ以上。重さにして2キロはありそうな大物だ。その後もナメコやヒラタケを確保。ようやくメンバーのテンションが上がってきた。

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本流を覗くと対岸にカクネ沢らしい大きな沢が滝をかけて出合っているのが見える。地形図ではこの先に広い台地が広がっている。傾斜のきつい斜面をトラバースしながら、比較的深い谷が前方をふさいだところで、下降点を探るために小羽が本流の際まで偵察に降りる。ブナの木につかまって下をのぞきこむと、降りることが出来そうだ。40mロープで懸垂下降し、11時ごろようやく本流に帰ってくることが出来た。

ここから先は広い河原歩き。昼過ぎには長沢出合に到着し、長沢を少し入ったところに良い河原を見つけ今日のテンバとする。天気は回復し次第に青空の面積が大きくなっていく。昨夜のビバークで濡れた衣類や荷物を河原中に広げて乾かしながら、テントとタープを張ってのんびり過ごす。イワナの釣果は無かっが、付近には大きなコブのついたミズがたくさんあり、フキも取れたのでマイタケと合わせて盛大な宴会となった。

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9月21日(月)

4:00起床-6:00BP発-12:00茶畑沢-17:00平七沢出合BP (11h)

朝4時起床。まず全員の体調を確認する。23日の下山をマストとすると岩屋沢から一般の登山道を登って天狗角力取山から大井沢温泉への下山しか選択肢はない。万が一今日中に岩屋沢まで届かなくても22日中に天狗小屋まで上がれれば何とかなるだろう。

食事と準備を整えて6時出発。大分水量が減っている。昨日までとはだいぶ様相が違い、穏やかな八久和川だ。

最初のうちは河原歩きのような状態で徒渉を繰り返しながら歩を進める。時に胸までつかる水は冷たく、早く太陽がさしてくれるのを願うばかりであった。芝倉沢が出会うあたりから少し両岸が立ってくる。まだ7時前。流れの急な場所で僕らが徒渉を躊躇していると後から3人パーティーが追い付いてきた。オツボ沢を目指しているという。僕らが躊躇していたところを何の躊躇も無く飛び込んで渉っていく。「これが沢を専門とする会か」と感心していたが、僕らも何とかしなければならない。地形図を見ると自分たちがいる右岸の上には台地上の地形が小国沢手前600mあたりまで続いている。「この時間飛び込むのはツラいよ。」の一言で巻きを決定。近くの藪から上方に向かうとあっさりと台地上に乗る。比較的歩きやすい。やがて傾斜がきつくなり本流に降りる地点を探す。かなり高さはあるが沢床は浅いようだ。ロープを2本つないで懸垂。

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ここからは岩床の発達した明るい渓相で、時折飛び込みや泳ぎを伴う徒渉もあり、ロープで後続を引いてみたりとなかなか楽しい。太陽も高く上がり、冷たい水を浴びても寒さはあまり感じなかった。小赤沢を過ぎ、左岸から茶畑沢が3mほどの沢を伴って合流すると、その先で両岸が切り立ってくる。同時に沢幅は狭くなり水の勢いも増してくる。ヘツリを繰り返して進むが、その先に一目見て明らかに突破できない急流が現れる。ここは右岸から巻く。明瞭な巻き道があり小さく巻くことが出来た。途中急流を上から覗き、「これが大ハグラ石滝じゃないか」と言うことになるが、高さはなく、大きな岩の急流で、やはりとても滝とは見えない。

これを越えると大きな深い淵に出くわす。右岸側はつるっと磨かれた壁。とても取り付けない。左岸側には谷に向かって倒れこむようにそびえる大きな板状の岩が。当然こちらも水線には近づけない。自然プールってやつ?左岸を高巻くように登ってみるがその先は急に落ち込んでいてとても沢床には降りられない。岩の切れ目に降りられそうなところもあるが、当然その下は深い淵が続き遡行を続けられそうには見えない。仕方がないので一旦引き換えし、手前のルンゼから樹林帯へ入り高巻を試みる。しかしここも八久和。ある程度上がったらトラバースで越えて行こうとするも、どんどん上に追いやられていく。さすがにこれ以上はというところで斜めに下降していくことにする。少し進んだあたりに小さな谷があり、ここも20m以上ありそうなのでロープを2本繋いで懸垂下降。ここですでに16時。

10自然プール?

対岸に渡り少し行くとまたしても大きな淵が現れる。これが自然プール?他のメンバーは「どうせ深いんだろ」と見切りをつけ左岸をさっさと巻いていく。自分は何となく途中までは足が付きそうなので様子を見に行ってみる。しかし少し進むとすぐに足が着かなくなり泳ぎを強いられる。最初のうちは右岸の壁を伝って何とか前に進むが、止まって見える水面も実はなかなかの水流の強さである。もう少しというところで右岸をあきらめ、泳いで左岸に渡ることを決意する。上流を向いて平泳ぎで全力で泳ぐも全く前には進まない。なんとか左岸にたどり着き、手当たり次第にホールドを探り、ようやく上陸することが出来た。精根尽き果てたとはこのことか。

これが最後の淵となり、その先は河原となる。時間は既に5時を回っている。すぐ先が平七沢のはずだ。20分ほど歩くと左岸から流入している沢が見える。その近く、一段上がったところに砂浜状の平地があり、ここを今日のテンバとした。

 

9月22日(火)

5:00起床-14:00天狗小屋

この日は行程が短い予定のため5時起床のんびり出発。岩屋沢までは特に難所もなく1時間足らずで到着。あとは一般道で稜線に上がるだけ。

 

たくさんの記録を何度も読んで乗り込んだ八久和だったが、1日目にして自分たちが試されたような気がした。多くの完全遡行記録の裏には分厚い蓄積があるのだということが行ってみて初めて理解できた。もっともっと経験を積んで、次はもっと八久和を楽しみながら完全遡行してみたい。メンバーの皆様お疲れ様でした。次もまた付き合ってね。(記こば)

八ヶ岳縦走

日程:2015年9月21日~23日

メンバー:いた・つかみ(記)

(一日目)

21日(晴れ)

新宿あずさ7:00→小淵沢8:54(タクシー15分程で到着)→富士見高原登山口9:25~編笠山13:40~青年小屋14:20(幕営)

秋の連休、天気は良好。大先輩イタさんと二人、富士見高原ゴルフ場脇の登山口からスタート。まずは編笠山へ。林道を進みながら、ポイント毎に看板標示があるので確認しながら進む。道迷いなく進める。日差しも柔らかで心地いい。そして終わることのないおしゃべりのせいか、あっという間に到着。

編笠山山頂は石場になっていて、そこから一気に下り青年小屋へ向かう。ゴロゴロした石の下り。雪があったらすーいすい、みたいな感じで下りられるのに。

約5時間の間・・振り返ると、ずーっと、しゃべりっぱなしだった。

青年小屋テン場にテントを設営。雨が降ってきてもよいようにとテントの周りに溝を掘る。作業を終えるころ、ポツポツと雨が降り出してきた。

(あー、ちょうど良かったー。だけど雨?明日はどうなるのー・・・)

明日は早いからとシュラフに潜るが、寝ている態勢でも話が始まった。

まだ、話し足りないのか?二人ともホント、元気であった。

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(二日目)

22日(晴れ)

青年小屋5:00~権現岳6:40~キレット小屋8:15~赤岳10:40~硫黄岳14:00~夏沢峠14:45~箕冠山14:15~中山峠16:30~黒百合ヒュッテ16:40(幕営)

青年小屋から権現岳。昨日に引き続き、快調なトークと共に進む。

権現岳からは越えて来た編笠山が見えた。まんまるでかわいらしい。

行く手には赤岳、脇には阿弥陀岳や中岳。遠くには富士山とくっきり見える。

(さあ、今日はキレットがある。少し黙って歩かないと)

そんな誓いをたてていると、三人のトレランらしきお兄さんが登場。今朝登り始めたとのことだ。話をすると昨日は剱岳を登ってきたらしい。今日はこのまま蓼科へ下山する予定だと言う。なんてタフなんだろう。一人だけ少しやつれた感じにみえたが、大丈夫だろうか。その後、一度も姿をみることがなかったので、きっと完走したのだろう。

キレット開始の標のように、長い鉄はしごがある。混雑もなく待つことなく下りた。そのあと痩せ尾根を進む。さほど危険ではない。キレット小屋を抜けると赤岳の登りになるが、またもやしゃべりが続き、がむしゃらになることなく赤岳到着。連休ともあって山頂付近は混雑している。食事をとっている人が多い。中にはガスを炊いている人、お弁当。軽くパンやお握りなど様々。みなそれぞれの山を楽しんでいる。イタさんがご褒美にとマンゴープリンを持って来てくれた。そのプリンは何度か食べたことがあるにも関わらず、一段と美味しかった。まさにマウンテンマジック。

赤岳から天望荘まで一気に下り、横岳に向かい登り、また下って硫黄岳。一部鎖場などあるが、注意して進めば問題はない。見晴らしもよく、疲れなど吹っ飛んでしまう。止まぬ世間話。ピークに到着するたび感じる、あっという間。イタさんと夏沢峠もあっという間に到着。時間を感じさせない、まさにトークマジック。山ではいろんな不思議が起きるみたいだ。

ここから先、イタさんは本沢温泉~稲子湯へ。私は蓼科へ向かう。互いに無事を祈り抱き合って別れた。それまで地形図はぶら下げていたものの、エアリアマップはザックの中だった。折りたくなかったエアリアを折り曲げポケットへ。ここから先は一人だ。気合が入る。さあ、第二弾出発だ。イタさんが優しく見送ってくれた。

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目指す黒百合ヒュッテまでコースタイム2:35分。このままだと17時過ぎになる。

一人でテントを設営するのは初めてだ。急がないと。それに初のルート。道に迷わないかと不安を隠しきれない。イタさんからのアドバイス、「看板をしっかり確認すれば大丈夫よ」その言葉を何度も繰り返しながら看板とにらみ合い。無我夢中で進む。額から大粒の汗。手の先からも汗が飛び散る。どうやら努力が報われ17時前にはテン場に到着。受付を済ませ準備にかかる。時間が遅いせいもあってほとんどうまっていた。みな、宴会やら食事の準備をしている。場所柄か子供連れの親子とかも何組かいる。そんな家族の隣にテントを張る。以外にスムーズにいった。ビールを買いに行きテントの中へ。ゴクゴクと飲む。あー美味い!体をキュキュと揺らす。大量の汗を出し切ったこともあり、とにかく美味しい。しかし、相変わらず弱いのでその後はちびちび飲んだ。初の一人テント泊。テントの中は散らかし放題。寝ながらするめをかじり、手を伸ばせばなんだって取れる。いつもは自分の持ち物はコンパクトにしまい、足がつってしまうぐらい身動きに制限がつく。だが、一人テントはすごい。筋トレだって出来てしまう。快適。しかし、反省点もある。夕飯にレトルトカレーを温め頂く予定だったが、億劫になり中止。ただつまみを頬張りアルコールを流し込む。それも、横になったり、うつぶせになったりしながら。寒くなってきた。イタさんはどうしているのだろうか。寒いのに、大丈夫だろうか。「ツエルトがあるから大丈夫よ」そう言っていた。この寒さでツエルトだなんて、強い。心も体も強い。いつか私も真似できるだろうか。

 

(三日目)

23日(晴れ)

黒百合ヒュッテ5:00~高見石小屋5:30~丸山7:00~麦草峠7:45~大石峠8:10~茶臼山8:25~縞枯山9:55~雨池峠10:20~雨池山10:50~三ツ岳11:20~北横岳12:35~亀甲池13:30~天祥寺原13:45~蓼科山荘15:10~七合目15:55~蓼科牧場16:30

今日は長丁場である。黒百合ヒュッテから蓼科経由で下山。コースタイム10時間ちょっと。一番手にテン場を出発。分岐はもちろん、看板はことあるごとに確認。地図と照らし合わせ、コンパスを合わせる。入会して3年目でようやく覚えたコンパス使い。楽しい。ちゃんと向かう方向に矢印が向く。

中山峠から高見石小屋までは、穏やかな登りですぐに着いた。何も食べずに出発したのでここでパンを食べた。これから出発するであろう、女子3人組がいる。話が盛り上がっている。そういえば、昨日テン場の受付をしてから誰ともしゃべってない。声をだしてない。イタさんと全行程分のしゃべりを尽くしてしまったかのように、静かだった。ちょっとしんみりしながら出発。

麦草峠。ここは登山口でもあってバスやタクシー、一般車の駐車場がある。苦労して歩いて来た分、がっがりする光景だ。(簡単にこれるんだなー、ここは・・・)そんな現場を通りすぎ、山の中に入って行く。北八ヶ岳地区に突入。大石峠を超え茶臼岳まで樹林帯を進む。展望はほとんどなし。茶臼岳から3-4分の所に見晴らし展望台がある。ザックを置いて行ってみた。行った価値あり。すばらしい展望だ。北アルプス・御岳山・中央アルプス・南アルプスが見えた。確認したく近くにいた人に尋ねた。しかし、あやふやでわからない様子だ。それならチャンスと説明し始めた。初めてだった。今までは逆に人を避けていた。何処から来たか。何処へどうやって行くのか。などきちんと把握出来ていなかった。だから避けていたのだった。だけど今回は違う。ちゃんと理解している。説明していると頷きながら耳を傾けている。得意になる。要らないことまでしゃべりだす。久々に声をだしている。だけど、しまった!20分以上時間を費やしてしまうのである。

茶臼岳から縞枯山までは緩やかな登り。山頂での展望はなく、雨池峠まで一気に下る。雨池峠でも近くの人に話しかけてしまい、ここでもロング休憩となってしまった。楽しさゆえか、はたまた、寂しさゆえか、よくわからない。だけど、この遊びの時間が後で、無念に変わるとは思いもしなかった。

雨池峠から雨池山は急登だ。そして三ツ岳に近づいてくると、ゴロゴロとした石が積み重なっている。隙間に落ちないように、転ばないように慎重に渡る。鎖場も登場してくる。ストックをしまい集中。展望はよかった。岩場を抜けると樹林帯。ぬけるとロープウェイ山頂からの道と合流。そこから北横岳までもうひと頑張り。ここまでくると疲れているのがわかる。足取りが重い。

北横岳山頂は広く大勢の人で賑わっていた。ゆっくりしたい所だが既に12時を回っている。少し焦ってきた。急ぎ足で亀甲池まで一気に下った。長かった。たった一時間ぐらいなのに、長く感じた。静かな亀甲池を楽しむことなく、足早に先に進む。ここからは地図をみながら慎重に、と思い気や、無い!地形図がない!どこかに落としたみたいだ。9枚綴りの地形図。一枚、また一枚と交換しながら7枚目まで来ていた。力強い味方だった。なのに、無い。右ポッケに手を当てる。このエアリアだけが頼り。絶対に無くせない。慎重に看板と地図をあわせながら進む。平坦な道を進み、ようやく最後の難関蓼科山登山口に着いた。

連休最終日、午後とあって人けがなくなっていた。閑散としていて淋しい。不安になってきた。日が暮れる前に下山できるだろうか。疲れてきている。道迷い大丈夫だろうか。弱気のまま樹林帯へ。しばらくすると干し上がった沢に出た。正解は沢を登り詰めるのだが、ここで間違ってしまった。沢を横切り無理やり樹林帯へ。怪しさ抱きながら進んだ。時間にして2-3分だが、長く感じた。やはり違う、直ちに引き返す。沢に出る。辺りを見渡す。何もない、どうしよう、なにもない・・あった!ちゃんと看板があった。すこし進むとピンクのテープも。疲れも忘れるぐらい一気に沢を登り、また樹林帯へ。しばらくすると二人組のパーティーに会う。嬉しくて話しかけてしまう。急き立てるように経緯を話す。悪い癖だ。後先考えずに思いつきで話す。聞いている方は理解しにくいだろう。全く迷惑な話だ。それでも、頷きながら聞いてくれた。寛大な二人に感謝。

ヘトヘトになりながら、蓼科山荘に到着。ザックをデポして登頂する予定だった。1時間はかかる。途中のおしゃべりや、寄り道がなければどうにかなったはず。しかし、時、既に遅し。15時を過ぎている。山荘に宿泊すれば登頂可能だが、麓のホテルを予約してある。温泉、ビール、ふかふかベット・・それに靴やマット洗いたい放題、テント乾かし放題。魅力たっぷりである。

蓼科山頂を断念することにした。どこからか(そうよ、無理しないで。不完全のほうが、格好いいんだから~)と、声が聞こえて来たような、そんな錯角を侵しながら下山。途中、七合目に蓼科牧場まで一気に行けるゴンドラが動いていた。どちらかと言うと利用派だが、今回はパス。最後まで自分の足で。七合目からはゴンドラの脇を下って行く。大草原。ススキが風に揺れている。思わず、写真をカッシャ。秋だ・・。

日が暮れる前に、無事下山。自立山行、なんとか完了!

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イタさん、ありがとうございました。

まだ数日しか経っていせんが、話したいことが山ほど。

また、ご一緒して下さい。

尾瀬 実川赤倉沢

実川赤倉沢

〇日程:2015年9月5~6日
〇メンバ:ハギ(L・記)、つりし、コバ
〇行程:

9/5…矢櫃沢橋付近(8:05)~赤安沢付近(9:05)/入渓(9:40)~実川本流~ゴキタ沢出合(10:15)~硫黄沢出合上部(13:50)
9/6…幕場(6:45)~赤倉沢最大滝10M(7:35)~花沼湿原(10:00)~硫黄沢左俣右岸尾根(10:30)~硫黄沢(12:25)~幕場発(12:55)~硫黄沢鞍部取付点(13:10)~実川本流(13:45)~林道(14:10)~矢櫃沢橋付近(15:30)
〇記録

アプローチ楽ちん、最後は車道からバスで車に戻れるという「硫黄沢」に行くつもりで調べていたら、実川本流の奥に同じ名前の沢があることを知った。その「硫黄沢」のお隣の沢が赤倉沢。記録は少ないし遡行図もないが、面白そうだ。という偶然の出会いで赤倉沢に行ってみることにした。

(9/5)

道の駅湯の香しおばらで前泊、6時前に七入に向け出発。実川の脇に入る林道に車を乗り入れる。すぐに車止めがあるが、施錠されてないチェーン。
矢櫃沢橋を過ぎ、さらに奥へと試みるが、落石でこれ以上入れなさそうなことを確認してバックで戻り待避所的な所に駐車。車三台分程度。

対岸の谷の切れ込みに注意を払いながら黒溶沢、赤安沢を同定して歩く。推定赤安沢の少し先に、下に降りる明瞭な林道の分岐。よいだろうと入るが、ほどなく途切れてしまったのでそこで装備を改めて整え、笹藪に分け入る。真っすぐ降りていったら切れ落ちた所に突き当たり、上流方面に移動しながら傾斜が緩んだ所から笹を掴み沢床に降りたった。

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河原状から遡行開始。
顕著な支流のゴキタ沢を左に見送ると崩壊地を経て、深い淵をもった滝が現れる。つりしさんがかなり粘ったが、逆層&微妙に薄被りで諦める。

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左岸から巻いて越え、その先の廊下状の右をへつる。その上は尾瀬的なナメ床で癒され、

釣り竿を出しながら進む。ちなみにたまーに現れるグリップする尾瀬的岩盤以外は河原の水中の石もぬめっておりゴムよりフェルトが安心な感じ。
深い釜を右岸から巻いた後のナメ滝は左から右へ流心を跨いで直上。
またすぐに釜を持った二条の幅広滝。右岸から上がり四メートルほど懸垂、古い残置あり。

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ここから地形図での顕著なポイント、逆コの字地形手前のゴルジュへ。屈曲して行く手が見えないが、歩いて通れる。まずは奥の幅広滝、ここがネットの記録にある「ザル滝」だろう。コバさんが左端から直登を試みるが見たところ細かい逆層で、真ん中くらいまで登った後ランナーが欲しい感じだと言って戻る。左の窪から上がり、上部の藪沿いに小さく巻き、すんなり深い釜を持った滑滝の側壁へ降りつつ、継続して釜をへつってトラバースしてからの登りは傾斜は立っていないので難無く登る。その上のゴルジュどん詰まりの滝はヌメっているが、ホールドスタンス豊富。

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その上のちょっとした廊下を通過するとぐっと平坦になり、両岸は低くなり硫黄沢が近い。振り返れば綺麗で、遡行も困難ではないものの変化があり大満足な一日目だった。
硫黄沢出合から硫黄沢に少し入り、周り中が整地必要無しの適地だが、渇いた平らな段丘を吟味して決定。テンバとしては最高ランクで設営前からごきげん。

二人がタープを張っている間にツェルトを張ると、そのへろへろは一体なんだと大受け。コバ先生からレクチャーを受けている間につりしさんがそこら中に豊富にある薪をノコギリで切り揃えてさっさと大量に確保してしまった。ここまでの道すがらの釣りでは成果に恵まれなかったつりしさんは本気釣りへ、コバさんはキノコと山菜探しへ、私は道すがら相変わらずダメダメだったルアーのキャスティングを練習しにと、のんびり自由時間。水際の水溜まりに4センチほどのチビ岩魚をみつけた。しばらくしゃがみ込んで観察、興奮を分かち合いたいが皆散っているので一人で地味に悶絶。可愛い。

5時過ぎになんとなく焚火を開始、なかなか安定しなかったが、つりしさんの粘り勝ちで大きな焚火になった。
つりしさんの釣果は二尾、下流より魚影がめっきり少ないとのこと。コバさんはコブを付けたミズをたくさんと蕗。遊んでいただけの私、途中でキクラゲをみつけたからよしとして貰おう。
海藻サラダ/途中で採ったヌメリスギタケ・ナラタケ・キクラゲとベーコンのミルク炒め/キツネノチャブクロの醤油炒め/岩魚のフキの葉包みホイル焼き/岩魚卵の醤油漬け/ミズコブとミョウガのお浸し/鶏肉・玉葱・しめじの塩胡椒炒め/ベーコンあぶり焼き/炊き込みご飯。みんなで料理しながら食べ、飲み、夜が更けていく。豪華な夕餉になった。胃袋の限界を超えると、焚火の周りに全員でごろ寝してウトウト…幸せ至極なり。
(9/6)
朝、5時起床。
コバさんのドリップ珈琲とかけ蕎麦を頂き、タープはそのままに泊まり道具はデポして出発。赤倉沢、すぐに二俣で右に入る。
小滝が連続するが倒木が多く、昨日がとても綺麗だっただけに残念に思う。昨日には及ばないが、倒木さえなければ綺麗だろうな…。

赤倉沢最大の滝10Mくらいか、高さはあるがスタンス大きく立ってないので右から難無く上がる。一旦平地になるが、深い釜+被っているので登れない5M滝、左から巻く。

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穏やかな流れになりこのまま消えていくかと思ったら、右側が大きく開けた緩傾斜地に飛び出し、先には最後の小滝。

本流を忠実に辿ってきたが、1900過ぎで傾斜が変わったので西に斜面に沿って斜め上に歩いていく。しかーし今回の最終目的地の花沼湿原がみつからない。途中の浅い沢型で赤テープ、ここが硫黄沢源頭かしら?

しばらく右往左往していると西へ向かう踏跡ぽいものをみつけた。先ほどは気づかなかったが、先ほどの推定硫黄沢源頭赤テープの先にテープが一つ。もっと先で落ちている赤テープ、枝に結び直す。人臭いのは嫌だといいながらもこういう時は嬉しい、以降なんとなく下地が薄い所を拾いながら進んでいくと森が薄くなり、湿原に飛び出した。深い森の中にぽっかりと、静寂に包まれた広い空間がある不思議さ。時間切れになるかと思ったが、この景色の中の一部にひととき、なれてよかった!

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いつまでもいたいが時間を1時間近くロスしたので、すぐに下降にうつる。湿原の西端の池糖の淵を周り、北に向け森に分け入る。最期は笹を掴んで硫黄沢に合流、そのまま対岸の右岸側の尾根へ。狙い通り1880ポコ手前に上がったことを確認。ここから先、結果としては予定の尾根から一つ隣の平行する尾根を下ったことが後で分かったが、下部で左寄りに修正して緩やかな沢型に入り、水が出てきたらほどなく硫黄沢へ合流することができた。

硫黄沢を下り、テンバへ到着。少し前から雨が降り出していた。急いで荷物をまとめ、硫黄沢を登り返す。ネットの記録を参考に、コの字地形のゴルジュをまるっと巻く心づもりだ。沢がカーブしている所、上はコルぽい地形、ここら辺かなーと見ていると、ここって踏跡ぽくないか、といち早く見つけたコバさんが教えてくれた。笹藪を掴んでコルに上がり、沢型と思しき方向へ下る。ここからはかなりの密藪、私は全く進まずギブアップで後ろに付く。だが沢型に入り水が出てくると下を潜れるので楽になる。実川本流に合わさる所は立っているナメ滝なので、左岸の立木にお助けロープを引っ掛けて握りながら斜めに降りた。上流を見やれば幅広二条滝があった。

近くの対岸に林道に上がる踏跡があるらしいのだが、判然とせずもう少し下降してみることにする。滝の巻き下りに入ろうとして左岸を上がっていたら、コバさんが対岸から合わさる滝、の上方に設けられた直径2メートルはありそうな排水穴を発見!!!言われて見ると樹木の間に白いのが辛うじて見えた、よくぞよくぞ。ということは林道が真上に来てるに違いないよね、ということで、降りて右岸に移動、藪に入る。少し登り、その排水穴の上、滝の傾斜が緩んだ所に出ると奥に下のものより少し小さめな排水穴があり、その脇には石積みの階段状人工物。数段上がればあっけない感じに林道に飛び出た。あのままゴルジュ地形をゴキタ沢付近まで下っていたらば掛かったであろう時間を思うと。ありがたくて言葉もない!!直後の写真はあーよかったと、皆もの凄い笑顔であった。

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興奮冷めやらぬまま、止んでいた雨が再度降り出し雨足が強まる中を、足早に車へ向けて下った。